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神の愛した桃源郷  作者: 魚精神
第三章 異界見聞旅編 第一節 リブラ王国編
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第43話 六人の鬼の将軍

 「急に呼び止めてあんたら、俺に何の用だ?」


 「急に呼び止めた非礼を詫びよう。しかし、話は聞いてもらいたい」


 「先の武闘大会の試合をすべて見させてもらった。もちろん貴方がこの世界の王であることも知っている」


 「ゆえに、我らは貴方の下で仕えたいのです」


 「仕えたい?俺に?」


 「はい。貴方は強く、我々と同じ力を持っている。我々が仕えるにふさわしい人物だからです」


 「まぁ、それはいいんだが俺はあんたたちについて何も知らないから今の所何とも言えないんだよな」


 「失礼。名乗るのを忘れておりました」


 「でわ、俺が代表して紹介いたします」


 そういって、赤髪の鬼が少し前に出てくる。


 「まず、俺の名前は(ごう)。そして、少し小柄なのが(しゅん)、白衣を着ているのが(ばく)、燃えているのが(えん)、銃をぶら下げているのが(きょう)、黒髪の長髪が(やみ)です」


 「なるほど、名前はわかったがあんたら何もんだ?」


 「俺達は鬼の世界からやってきた、六将鬼(ろくしょうき)という鬼の将軍です」


 「お、鬼の将軍!?そんなのが俺如きに仕えてていいのか?」


 「ええ。俺達は自分達の意思で貴方に仕えたいのです。それとも、実力に不安があるのでしたら誰か一人と手合わせでもしてみますか?」


 豪から意外な提案が飛び出してきた。

 確かに仕えることを決める前に実力を知っておくのもいいかもしれない。

 

 「わかった。じゃあ一人代表者が俺と手合わせするってことで」


 そういうと、六将鬼たちは集まって話し始めた。

 俺は神の力じゃなく、鬼の力の方を使おうか。

 そのほうが、力の練習にもなるしフェアだと思う。

 

 「こちら代表が決まりました」


 そんなことを考えていると、豪から声をかけられた。


 「誰が戦うんだ?」


 「俺です」


 そういって、瞬が俺の前に立つ。


 「瞬だったよな」


 「はい。今回は俺が代表として戦います」


 「よし、じゃあ始めるか」


 両者少し距離をとる。

 審判役は豪がやるみたいだ。

 

 「それでは、始め!」


 豪が開始の号令をかける。

 それと同時に俺は鬼の力を使い、鬼へと変身する。


 「さて、どう仕掛けるかって……あれ?」


 先ほどまで目の前にいたはずの瞬がいつの間にか姿を消している。

 俺が変身している一瞬の間にどこに消えた?

 俺には相手の能力に関する情報が一切ない。

 種がわからない以上、うかつに動くのは危険だ。


 「いてっ」


 動かないでいると、一瞬何かが頬をかすめた。

 その部分を見てみると、少し血が出ている。

 もうすでに、攻撃は始まっているみたいだ。


 「クソっ……!」


 とりあえず、円状に自分の周りを斬ってみる。

 しかし、何も手ごたえはない。


 「もう後ろにいますよ」


 「!?」


 後ろから声がして、咄嗟に斬るも既に誰もいなかった。

 そして、その隙が仇となった。


 「ぐあっ……!!」


 がら空きの背中を何かで斬りつけられた感覚がした。

 そこそこ深く入っている。


 「まずいな…………相手の能力がまるでつかめない」


 ここまで戦っていて、相手の能力が全く分からないのは初めての経験だった。

 少し、集中して見てみたら何か見えるかもしれない。

 そんな淡い考えのもと、注意深く観察してみた。

 意外にもそれが正解だった。


 目を凝らして見てみると、数ミリほどの大きさの瞬が超高速で動いているのが見えた。

 そこから推測するに、自分のサイズを小さくするとその分加速するってとこかな。

 種がわかれば対策はしやすい。


 俺は背中から流れる血を手のひらにべったりつけると、攻撃しようと突撃してくる瞬にそれを飛ばした。

 が、動きは止まらずそのまま攻撃を食らってしまった。


 「くっ…………!だが、ここまでは想定内」


 「鬼火!」


 流れ出た血や手のひらについた血が一斉に燃え盛る。

 それは瞬についた血も例外でなく燃え盛る。


 「ぐああ………!!」


 たまらず、サイズを元に戻した。

 これで攻撃しやすくなったな。


 「だが、まだ貴方より早く動ける」


 瞬は元のサイズのままにげようとするが


 「もう遅い」


 俺の方が一歩早く、瞬を斬っていた。

 倒れる瞬にすかさず、喉元に刀を突きたてる。


 「そこまで!」


 豪から止めの合図がかかった。

 俺はすかさず、瞬のもとに駆け寄る。


 「瞬、大丈夫か?」


 「ええ、心配に及ばず」


 そういう彼の方に目をやると、もう傷口がふさがりかけていた。


 「鬼の治癒能力はすごいな」


 「そういう貴方も傷口がふさがってきていますよ」


 「あれ、本当だ。前はこんなことなかったのに」


 「身体が多分、鬼に適応したからですね」


 「だからなのか」


 「ま、これで俺達が実力十分ってのはわかったでしょう?」


 「うん。それはもう十分に」


 「それでは正式に仕えさせてもらえるってことでいいんですね?」


 「ああ。それで問題ないが、後日俺と一緒にハルナードの所に来てもらいたい」


 一応このことはハルナードにも共有しておかないといけないからな。


 「ええ。全く問題ありません」


 「話も済んだことだし、俺はこれで帰るよ」


 「わかりました。おきをつけて」


 俺は豪達に別れを告げ、神社へと帰り着いた。

 なんとも濃厚な一日だった。

 新たに俺に仕えたいというやつが6人も増えるなんて。 

 とりあえず、あとは旅の日までゆっくり過ごすかな。


――――――


 そこからいろいろなことがあった。

 まず、ハルナードに六将鬼のことを報告して、紹介したり。

 六将鬼一人一人の能力を把握していたりしていたら、ゆっくりする時間もそんなになく見聞旅の日がやってきた。

 それで俺は今、バートリー家の屋敷まで来ている。

 門をたたくと、ダリアが迎えてくれた。


 「八雲様、お待ちしておりました。こちらで皆様おまちです」


 そういって、応接室の方に案内された。

 中に入ると、ハルナードとアリエルそれにベルゼブブが座っていた。


 「来たか。まぁ座れ、説明を始める」


 促される通り空いてる席に腰掛ける。


 「今回行ってもらう世界はアストレアという名前の世界で、その中のリブラ王国だ」


 「代々交流を図っており、すでに先方からの了承も得ている」


 「ま、実際に自分の目で見て色々なことを体験してきてくれ」


 「わかった。しっかり見て、見聞を広めてくるよ」


 「よし、それではそろそろ出発の時間だ」


 応接室を出て、地下の方へと案内される。

 地下の一室に入ると、大きな門があった。


 「この先がリブラ王国へと繋がっている。3人とも準備はいいな」


 「俺は大丈夫だ。2人は?」


 2人に声をかけると、無言でうなずいてくれた。

 とっくに覚悟できているようだ。


 「それでは門を開く。開門!」


 ギギギと音を立てて門が開く。

 この先には未知の世界が広がっている。


 「ハルナード、俺が留守の間桃源郷のこと任せたぞ」


 「ああ。心配せず行ってこい」


 「じゃあ、行ってきます!」


 そういって門をくぐる。

 門をくぐるとまばゆい光に包まれる。

 やがて目を開けると、桃源郷とは全く違う光景が広がっていた。


 「ここが、リブラ王国か…………!」


 大量に人が往来していて、建物の造りもレンガ造り。

 屋台もたくさん並んでいて、とても繁盛している。

 来て数秒で、俺はもうこの世界に圧倒されていた。




 

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