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神の愛した桃源郷  作者: 魚精神
第二章 王位争奪武闘会編
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第41話 動き出す運命

 幾つもの意思を背負って戦い抜き、ついに勝つことができた。

 春彦、アイク、レイチェル、みんなに恥じない戦いができたと俺は思っている。


 「それでは暫くののちこの場で、戴冠の儀を行う。それの終了をもって、全日程の終了とする」


 先ほどの審判から、会場全体へアナウンスがかかった。

 しばらく時間が空くなら、部屋に戻って休むとするか。


――――――


 俺が部屋に戻る道中で、みんな待っていた。

 

 「おめでとう!八雲!」

 

 真っ先に声をかけてきたのは穂波だった。


 「ありがとう。穂波。ずっと見ててくれたんだ」


 「うん。九朗さんと斎藤さんと一緒に」


 「おめでとうございます。八雲」


 「今日のご飯はごちそうだからね!」


 「ホントですか!ありがとうございます!」


 次は九朗さんと斎藤さんから。

 どうやら、今日の晩御飯は豪華らしい。


 「すごいな、八雲!あそこから勝つなんて」


 「自分でも良く勝ったと思うよ。マリーン」


 次にマリーンが来てくれた。


 「やったな。八雲」


 「春彦…!ありがとう……!夏目も秋吉も冬瀬もみんな見てくれてたんだ」


 「うん!八雲すごいかっこよかった!」


 「あたりまえじゃないか。八雲は僕たちの仲間なんだから」


 「八雲君。お疲れさまでした。ゆっくりやすんでくださいね」


 そして、春夏秋冬の4人から。

 

 「…………よかったわよ、八雲」


 「ありがとうございます。八雲さん。私たちの意思を背負って戦ってくれて」


 「いいんだ。俺がそうしたかっただけだから。別に感謝されることじゃないし」


 次に来たのはレイチェルとレイナの二人。

 

 「おめでとう…ございます……八雲さん。やっぱりとってもお強いんですね…………」


 「おめでとうございます。八雲。まさかお兄様に勝つとは思っておりませんでした」


 「ありがとう、二人とも」


 最後に来たのはラーニャとアリエル。

 アリエルは実の兄を倒した張本人である俺にわざわざ、会いに来てくれたのだ。

 思うこともあったはずだ。そのことを考えると少し申し訳ない。


 「みんな、ほんとにありがとう!じゃあまたあとで」


 ここに長居するわけにもいかないので、みんなに手を振って別れた。

 部屋に帰って少しでも休まないとな。戴冠の儀の最中に倒れるかもしれないからな。


 「フフフ、少しよろしいかな」


 「その声は…………ベルゼブブ!?」


 「一体何の用だ!」


 振り返るとそこにはかつての強敵ベルゼブブが立っていた。

 前も街であったが、ここまで来ていたのか。

 俺を呼び止めて何の用だろうか。


 「前に街であったとき話したこと、覚えていませんかねぇ」


 「…………覚えてないな」


 「そんなに警戒しないでください。…………まぁいいです」


 「それで、前に話したことというのは貴方やあの吸血鬼みたいな骨のある人物になら使えてもいいという話です」


 「今思えばそんなことも言っていたな…………」


 「そして、貴方は今この世界の王になった。だから、私を雇用してほしいのです」


 「すぐにうなずける話ではないな」


 「別に何かしようってわけではありません。私はただ平穏に暮らせればそれでいいのです。すべて忘れて暮らせれば…………それで」


 「ま、考えといてください。詳しい雇用の話は王宮にて行いましょう」


 「それではごきげんよう。フフフ」


 そう言い残すとベルゼブブは去っていった。

 ぱっと見と、話している感じは微塵も悪意を感じなかった。

 けど、何かを隠している。そんな気はした。

 ま、要相談ってとこだな。


――――――


 部屋で、15分、20分横になったところでアナウンスがかかった。

 どうやら、戴冠の儀の準備が整ったらしい。

 準備をして部屋を出る。



 俺が会場に入ると、中央には儀式の準備が整っていて、観客席は満杯。

 先ほどまで戦いをしていた場とは思えないほど、厳粛な雰囲気に様変わりしていた。


 「神代八雲、前へ」


 審判役をずっとやっていた人から前へ呼ばれる。

 レッドカーペットを歩いて、中央の儀式台まで行く。

 

 「これより戴冠の儀を始める」


 「7代目桃源郷国王ハルナード・バートリーから8代目桃源郷国王神代八雲へ王冠を授与する」


 「両者前へ」


 王冠を持ったハルナードが俺の前へと立つ。

 

 「八雲、この世界のことお前に任せるぞ」


 「ああ、王としての責務をしっかり果たす」


 ハルナードから俺の頭に王冠がかぶせられた。

 意外と王冠というものは軽い。

 だが、物理的な重さよりも精神的な重さはしっかりある。


 「王冠は授けられた。ここに、8代目桃源郷国王神代八雲の誕生を宣言する!!」


 会場全体から大きな歓声が沸き上がる。

 今まで聞いてきた歓声より、今回のが一番すごかった。


 「これにて、戴冠の儀を終了する。速やかに退場を」


 この一声により、会場からぞろぞろと人がいなくなっていく。

 

 「王よ、王冠を一度とって、ここにおいてくだされ」


 審判役の人にそう言われたので、王冠を外して、台座の上に置く。


 「王宮の地図を渡しておきます。3日後にきてくだされ」


 そういうと、王宮への地図を手渡された。

 ちらっと見てみると、蓬莱山の近くにあるようだった。

 3日後にここに行けばいいのか。

 色々としないといけないことがあるのだろうな。


 俺は地図をもらって、会場を後にした。

 帰ろう。久しぶりに神社に帰る気がする。

 と、言っても1日ぐらいしかたっていないけど。

 まぁ、早く帰るに越したことはない。

 晩御飯のごちそうが俺をまっているのだから。


――――――



 神社に帰ると、食卓には豪勢な料理が並んでいた。

 俺はその料理をたらふく食べた後、風呂に入り、今布団に入ったところだ。

 今布団に入って、今までの疲れが一気に押し寄せてきた。

 今夜はぐっすり眠れそうだ。




 眠りについて、どれぐらいたっただろうか?

 少し違和感がしたので目を開けてみると、俺は真っ白い空間にいて、椅子に座っていた。

 対面にだれか座っている。


 「よお、目が覚めたようだな」

 

 「お前は誰だ?」


 「ああ、そうかお前は人づてにしか俺のことを知らないんだったな。俺は紫怨だ」

 

 「お前がレイチェルとレイナを怪我させたって奴か」

 

 「そして、俺の別人格……なのか?」


 「ハハ、別人格ねぇ。正解ではないな」


 「じゃあ、お前は俺のなんなんだ」


 「今のお前に真実を話したとて、理解できるはずもないし、混乱するだけだぞ」


 「はいそうですかって引き下がるわけにはいかない。俺はお前について知らなければならない」


 「ま、お前にとっちゃ知る必要があるか、自身の中にいつ暴走するかわからない人格が潜んでるんだもんな」


 「だが、それに関してだがお前の許可を得た時以外で俺は表の人格として出ることは今後ないと約束しよう」


 「なんだと」


 紫苑の方から予想外の提案がされた。

 この提案はかなり俺に利のある提案だった。

 だからこそ怪しい。


 「いいか、これは契約だ。俺がこれを破れば俺は自身でペナルティを課さないとならない。そういうルールだ。最悪死ぬ」


 「そうか。ならその契約は成立だ」


 「契約成立。じゃ、もう用はないから帰っていいぞ」


 「ま、まて。俺はまだお前のことについて何も知らない!このまま帰れるか!」


 「そう焦るな。今じゃなくてもいずれ知ることになる」


 どうにか聞き出そうと粘ろうとしたが、これ以上俺と会話をする気はないみたいだ。

 

 「帰る方法は簡単だ。その場で目を閉じろ、そしたら向こうで目が覚める」


 八雲は言われた通り、目を閉じると、この白い空間から消えてしまった。

 白い空間には今だ紫苑だけが残っている。


 「ククク、運命というのは実に残酷だ」


 「一度逃れたと思っても簡単には逃してくれない。本人の知らないところでかみ合い、回りだすのだからな」


 「それにあいつは今まで出会った人物から嘘を色々言われている」


 「例えば、そうだなぁ。八意のじじいの占いとかか」


 「得るもの4つって言われてたが、得るものは2つってところか。そして残り2つは”取り返したもの”に分類されるってとこかな」


 「たとえ話で簡単に言えるのはこいつぐらい。あと二人に関しては難しくてな」


 「意外なことに俺はあいつに対して噓を言っていない」


 「全く、あのじじいはほんとに親切じゃねぇな。あいつが死ぬかもしれないことも言ってないなんてよ」


 「俺の計画が頓挫したらどうしてくれるつもりだろうか」


 「ククク、まぁいい」


 「今日、あいつや”俺達”の運命は止まっていたはずが大きくかみ合い、軌道修正され動き始めた」


 「もう運命からは決して逃れられない」


 紫苑は不敵な笑みを浮かべ、この空間から消えていった。

 

 




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