第39話 新たな力
攻略の糸口―――それは空から今も降り注ぐこの雷だ。
我は雷神。雷の中を移動するなど造作もないことよ!
建御雷は降ってきた雷に突っ込むと、雷から雷をつたい、地面に足をつけづに高速移動を始めた。
「なに!?最初の雷がここできいてくるか!」
「だが、まだお前の血は残っている!」
ハルナードは建御雷の血でつくった弓矢を空へ向け放つ。
自動追尾する矢は建御雷を追って、空を漂う。
矢は雷間を移動する一瞬の隙をついて、建御雷に向かった。
しかし、当たったはずの矢は露と消えてしまった。
「なぜだ!?今確かに当たった感触があったぞ!」
ハルナードは自身の血で作ったものの感覚を知ることができる。
彼に当たった感触があるなら、その矢は確かに当たっているのだ。
だが、当たったはずの矢は刺さることなく、消えている。
そのことは彼からしたらとても異常なのだ。
「まさか、雷を移動するとき”実体”で移動していないのか?」
ハルナードの推理は完璧であった。
建御雷は雷の中を移動し、雷から雷に移るまでのすべての過程を実体ではなく、自身も電気になり動いていたのだ。
「このままではまずい…………まずはあの雲を晴らさねば」
「血の雨垂れ!」
ハルナードは大量の血を球体に変え、空を覆う雲よりも高く打ち上げる。
そして、雲を散らすように血の雨が降り注ぐ。
「雲は晴れた!これで―――」
「もう遅い」
ハルナードが雲に気を取られている間に、すでに建御雷は地上へと降り立っていたのだ。
「我はただお前の攻撃を避けるために雷を移動していたのではない。雷の電力を自身に蓄えるのと、このような大技をつかい、血を大量に消費するのを待っていたのだ」
「そして今時は来た。先ほどの血の雨により地面もお前自身も血で濡れいている。ゆえに電気がよく通る」
「!!!」
「雷獄天衝!!!」
建御雷は今まで蓄えた電気をすべて放出し、地面の血だまりに大量の電気が流れる。
ハルナードにも流れ、感電する。
「ぐああああ!!!!」
断末魔と共に微かに肉の焼けるような異様なにおいが漂う。
この電圧は相当なものだ。
立っていられるはずが―――
それでも彼は倒れることなく立っていた。
彼の意思が彼を地面に伏せさせなかった。
「なぜ立って!?だがもう動けまい!これでしまいよ!」
建御雷はすぐにとどめを刺そうと、斬りかかろうとする
「がはっ…………げほっ…………げほっ…………」
向かおうとしたところで、血を吐いて膝をついた。
「ははっ…………ははは…………」
「やっと回ったか、毒が」
「毒だと…………!食らった攻撃は我では影響が出ない程度だったはず」
「確かに攻撃”自体”は食らっていない。雷で血が蒸発したからな」
「なら、何故……!」
「雷に血の水分なんかは蒸発できても、毒は分解できないよな?」
「!!」
「血の矢や雨は一度お前の体を通っている。その時に水分は蒸発され、分解できない毒は残り続ける。
そして、毒を含んだ雷を大量に蓄え、実体に戻った。致死量の10倍以上の毒を蓄えてな」
雷では水分なんかは蒸発できても、毒は分解したり蒸発することができない。
その毒入りの雷を蓄え、地上に戻って来たときにはすでに致死量以上の毒を建御雷は抱え込んでいたのだ。
そして、その毒が今体に巡り、苦しんでいるのだ。
さらに運の悪いことに刻一刻と建御雷でいることのできるタイムリミットが迫っているのだった。
時間にして、あと30秒。
「まずい…………今八雲に戻ったら…………!」
「加護だけは付けて変わらねば」
建御雷は何とか手を体に当て、全身を自身の加護で包んだ。
「どうやら、建御雷でいられる時間は終わったようだな」
「ぐっ……………………!!」
痛い。
体が焼けるように痛い。
加護があるから何とかなっているものの加護が切れたら死ぬ。
「八雲。降参しろ。もはやお前では何もできまい。加護が切れるまでこのまま苦しみ続けたいのか?」
「降参は…………しない…………!!」
策はある!
あれを使うんだ。
「ならいい。これでとどめだ」
地面に倒れる八雲に対し、ハルナードは槍を刺してとどめを刺そうとする。
「鬼化の石!!」
八雲は懐から一つの石を取り出し、それを砕いた。
会場はまばゆい光に包まれる。
「なに!?」
ハルナードも予想外の行動に驚きを隠せないようだ。
光が晴れると一人の人物が立っていた。
身長は190㎝近くあり、筋肉質。
年齢は20代ぐらいに見える人物。
頭には二本の角が生えている。
鬼となった八雲だった。
「すげぇ、身体が軽い。身長も伸びて、少し年も取ったか?」
「鬼……なのか?俺もうわさでしか聞いたことがない伝承だけの存在だと思っていた。だが、今俺の目の前にいるのは紛れもない鬼だ。八雲、お前は何者だ!」
「俺はただの人間だ。今鬼でいるのも、あの石の力だ」
「そうか、それはいい。毒はどうした?なぜ平気で立っていられる!」
「”吸血鬼”って漢字に”鬼”が入ってるからさ、似たようなもんだし、同じ妖の類だろ?だから、身体が適応して、分解できたんじゃない?」
「そんなバカな………!」
「ここからは俺のターンだな!」
八雲はハルナードのみぞおちにパンチを一撃入れると、ハルナードは軽々吹っ飛び、壁に激突した。
「はは………!これが鬼の……力か!」




