表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の飼育員、竜に襲われる  作者: 朝吹小雨
16/22

制御室

【1】


壁の向こうにいる「それ」の正体をとらえた。


小型竜だ。1体でうろついている。

食糧を探しているのだろうか。


だが、機械的で無機質な通路に、何かエサがあるわけでもない。

エサがあるとしたら、あまり想像したくないが、俺たちくらいなものだろう。


どうやって制御施設に侵入したのだろうか?

武装集団の侵入を許したとはいえ、

制御施設のセキュリティは厳重だったはずだ。

どこか壁に穴でも開いてしまったのだろうか。


まあそんなことはどうでもいい。

まずは小型竜を対処しないと、通路を通ることができない。

さて、どう対処するか。


アヤノさんは「1体だけなら制御魔法で操れます」と言った。


「それに、護衛として小型竜が1体いたほうが安全かもしれませんね」


アヤノさんは、目の前の小型竜1体を、制御して動かす気まんまんだった。


なるほど。

もしかしたら、目の前にいる小型竜1体を操るだけで、

武装集団相手に有利に立ち回れるかもしれないな。

竜のウロコは非常に硬く、人間相手に使う銃程度では打ち抜けない。


アヤノさんは細心の注意を払いながら、

小型竜に近づき、制御魔法をかけた。

その小型竜は、あっさりと制御魔法の術にかかり、

おとなしくなり、

アヤノさんの意のままに操れるようになった。


「先頭を歩いてください」


小型竜は、アヤノさんの言いつけのままに、

俺たちの先頭を歩きだした。


この小型竜は今、完全に弾除け扱いであり、

俺としてもなんだかモヤモヤした気分になるが、

命のかかっているこの状況下では、

竜をこうやって使う以外の方法はとれなかった。


このあと何体か竜と遭遇するが、

うまく迂回したり、

小型竜を使って追い払ったりして、

なんとか事なきを得た。

アヤノさんが制御施設内のことを熟知していることもあり、

制御室までの道のりを、すいすいと進めることができた。


しかし、制御施設内にこんなに竜が入り込んでいるなんて……。

俺は嫌な予感がしていた。


「ここが制御室です」


重厚なドアが見える。

まるで地獄の門のような雰囲気だ。


ドアに耳をあてる。

ドアの向こうからは、まったく音が聞こえてこない。

人の声も、雑音も、機械音すら聞こえてこない。

何もかも完全に停止しているのか?

と思わせるほどに。


「鍵は今かかってないですね。

 ……開けますよ」


アヤノさんは、ゆっくりとドアを開いていく。


【2】


制御室には誰もいなかった。


いや、正確には「生きている者は誰もいなかった」

と言ったほうが正しいだろうか?


遺体はなかったが、大変なものを見つけてしまった。


「うわっ」


思わず声をあげてしまった。


人体の一部が落ちている……!

偽物ではない。本物だろう。

誰のものだろうか?

本人には悪いが、気持ち悪い……。

竜にやられたのだろうか。

人間が人間をバラバラにするはずがない。


それに、ところどころ、血痕のようなものが床や壁に見える。

おそらく戦闘があったときのものだろう。

血痕以外にも、なんらかの液?らしきものもちらばっている。

何の液体なのか、あまり想像したくなかった。


銃弾の跡もところどころ散見される。

武装集団と警備員たちとの戦闘のあとなのだろうか。


アヤノさんは、制御室のまがまがしい様子に、すっかり滅入っているようだった。

口を手でおさえ、青い顔をしている。


「誰もいないし、変な匂いもしますし、ひどい状況ですね……」


「とにかく、武装集団はもういないということがわかった。

 これじゃ戦う必要性がない。

 あとは、制御室を綺麗に掃除して、

 制御を取り戻すことに専念しよう」


「……そうですね。

 まずはこの制御室を綺麗にしたほうがいいですね。

 ……あと、制御システムに使っている設備が壊れていないか

 チェックする必要があります」


「制御システム?」


「はい。

 私の使う制御魔法を、何倍にも増幅させてくれるシステムです。

 個人の制御魔法と、制御室の制御システムを組み合わせることで、

 この島全体の竜の制御が可能なのです」


「なるほど……それが壊れてると、制御も再開できないんだな」


「はい。

 あと、制御再開はすぐにできない理由がもうひとつありますよ。

 カノンさんたち竜の解放団と交渉しないといけませんからね。

 制御を再開する前に……」


そうだった。

武装集団を追い払ったあとは、

「竜の解放団」をなんとかしないといけない。

竜の自由をうたい、竜の制御を嫌う。

そんな団体と交渉して、制御の早期再開を目指さないといけない。


少々憂鬱な気分ではあったが、

まずは、制御室から武装集団がいなくなっただけでも大きな進歩だ。

よし、早くシオン先輩たちにこれを連絡しよう。



【3】


「わかったわ。私たちもそっちへ向かう」


シオン先輩に連絡を入れる。

制御施設のほうへ向かってくれるとのことだ。


やれやれ。

これで、制御施設は奪還できたか。

なんともあっさりとした終わり方だったな。


しかし安堵もつかの間、もうひとつの問題が発生してしまった。


「ユートさん。

 制御システム用の機械が壊れています。

 起動しないですね……。

 おそらく武装集団と警備員との戦闘中に、

 なんらかのショックで壊れたのかも……」


「マジか。制御システム用の機械が壊れていると、どうなるんだ?」


「竜の制御ができなくなります。

 私の制御魔法を増幅させる装置が、この機械なんです。

 機械を修理する人を連れてこないといけません……」


「あ、そうだ。

 予備用の機械なら動いているかもしれません。

 ……動いていますね。

 でも、そのままじゃダメです。

 予備機械に切り替える操作をしないと……。

 操作手順を探さないといけませんね」


「操作手順ってどこかに置いてあるのか?」


「この制御室内にあるはずですが、

 お恥ずかしながら、私もどこに置いてあるのか、

 見当がつかないんですよ。

 だって、予備の制御システムに切り替えることなんて

 ここに赴任して一度もなかったので……」


アヤノさんは恥ずかしそうに顔を伏せた。


「そういうことか。

 わかった。ふたりで手分けして探そう。

 どこかには必ずあるはずだし」


こうして、俺とアヤノさんは、

予備システムの切替操作手順書を見つけるまで、

制御室内を捜索することになった。




つづく


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ