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竜の飼育員、竜に襲われる  作者: 朝吹小雨
14/22

作戦会議

【1】



「私の竜を使ってもいいけど、

 そのかわり、エルマちゃんをちょうだい」


アリサの要求は、エルマをもらうこと。

意外過ぎる要求だ。

たしかにさっき、エルマに抱き着いていたけど、そこまでとは思わなかった。


「ちょうだいってさ……どれくらいなの?」


ちょうだい。

どれくらいのレベルの「ちょうだい」なのだろうか。


ちょっと借りたい。

いや、永遠に自分のものにしたい。


どっちなのだろうか。


「しばらく」


「しばらくって……」


しばらくか。あいまいな期間だ。


「エルマは俺の従妹だ。

 しばらく借りるってならいいけど、もらうなよな」


「わかってるよ~」


アリサは、うれしそうな視線を、エルマに向ける。

エルマは「やだ!」と言って、俺のうしろに隠れた。


いやー、アリサさん。

これはエルマに嫌われてますよ。


「えー。そんなこと言わないで。

 ねぇ、エルマちゃん、こっち来て遊ぼうよ……えへへ」


アリサの顔は、にこやかだけども、チラチラと変態っぽい視線が見え隠れする。


「なんかエルマちゃん、私の飼育する竜みたいな匂いがするから、

 すごい親しみを持ってるの。

 ね、いいでしょ。

 優しくするし痛いことはしないから!」


やばい。いろいろな意味でやばい。


エルマが竜であることもバレそうだし、

「優しくするし痛いことはしない」って何をするつもりだ。


アリサに変態的な趣味はないはずだ。

一応注意しておくか…。


「アリサ! エルマを竜扱いするな!

 ……エルマと遊んでもいいけど、変なことはしないでくれよ。

 とにかく。

 まず、制御室の武装集団を一掃することが先だ。

 竜を使うことについては、カノンからも了解は得ている」


俺は言葉を続ける。


「アリサ。制御室に一緒に来てほしい。

 武装集団もいるし危険なことかもしれないけど……。

 アリサの竜は、アリサの言うことしか聞かないから」


「わかっているよ。

 ……竜の制御を取り戻したいんだね」


「竜の制御を取り戻す、というより、

 武装集団を一掃すると言ったほうが正しいけどね」


「?」


「カノンと約束したんだ。

 竜の解放団は、竜の制御を望んでいないからね。

 武装集団を倒したあと、

 そのあと竜の制御を再開するかどうかは、

 今後の交渉次第になるんだ」


「そうなんだ……。

 カノンちゃんの……竜の解放団の意見だもんね」


とはいえ、

竜の制御が再開されなければ、

いつまでたっても、

島から出ることもできないし、

竜におびえて生活しなければならない。

竜の解放団も、そこまで考えられないほど

おろかではないと思う。

早期の制御再開が必要だと俺は思っていた。


ひとつだけ気がかりとすれば、エルマの存在だ。

竜の制御を再開すれば、エルマは竜に戻ったままになるだろう。

俺はそれを許容できるだろうか……。


多少の不安を抱えたまま、

俺たちは、制御室を取り戻す作戦を着々と進めることにした。



【2】


アリサの許可はとれた。

あとは、準備を進め、竜を駆使して制御室奪還作戦を決行するのみだ。


竜の指揮権は、カノンとアリサにある。

カノンをリーダーとし、アリサは実際の竜の操縦を任された。


まだ幼さの残るカノンをリーダーとすることに、シオン先輩は不安をおぼえた。


カノンは、見た目の幼さのわりにはしっかりしているが、

年齢的に責任をとれるかあやしいものがあった為、

結果、シオン先輩は、カノンの助言役という立場になった。


が、シオン先輩が苦手なのか、カノンは渋る。


「竜の指揮権は私とアリサにある。あまり口出ししないでくれ。

 特にそこの女」


「『そこの女』呼ばわりはやめてね。

 私にはシオンという名前があるのだから。

 あなたはずいぶん年下のように見えるし、

 それにアリサは私の後輩なのだし、

 そのままだといろいろ危ないじゃないの」


「危なくなんかない。

 アリサさえいれば安泰」


「安泰?

 相手は武装集団とはいえ、人間を竜に襲わせるのよ。

 アリサの性格じゃきっとうまくはできないわよ。

 ためらっている間に、撃たれるかもね」


シオン先輩はあきれたように言う。

たしかにそのとおりだと思う。

でもあまりカノンを怒らせても無益な気がするので

俺が止めに入る。


「今は言い争いはやめときましょう。

 それより、竜をどう編成するか、考えないと…」


話題を変える。


俺は、アリサの飼育竜をどう編成するか気になっていた。


アリサの飼育竜は数十体いると言われている。


もしその全員が味方で使えるとしても、

数十体の竜を、制御室の前まで移動させるのは、至難の業だ。

飼育場を清掃するため、竜を移動させることがあるけど、

竜を1体どかすだけでも、相当な労働だ。


制御室はここ(森林エリア)からだいぶ遠いし、

竜の歩行ペースだと1日以上かかる恐れがある。

おそらく一度に数十体も竜を動かすのは不可能と思われる。

となると、編成は、多くても数体に絞られてくる。


しかし、数体の竜だけで武装集団を鎮圧できるのか?

という問題が出てくる。

武装集団の質や量にもよるが、小型竜数体では、さすがに無理かもしれない。


「ならば大型竜を連れて行けばいい!」

……という単純な話でもない。


大型竜は歩行が遅い。

餌の問題もある。

竜の食欲は一般的に言えば旺盛だ。

大型竜は特にすごい。


だが、餌となる食べ物が、移動中に補給できるだろうか?

それはできない。

大型竜を移動させるときは、普通、トラックに餌を積んで運ぶのである。

そこらへんに落ちているものでは、とてもお腹を満たすことはできない。


大型竜は比較的温厚だが、食べ物が切れると、さすがに機嫌が悪くなってくる。

道中、餌がないせいで、俺たちが襲われたら、とても太刀打ちできない。


というわけで、意外と、竜を頼るのも大変なのである。


俺が上記のような話を、会議で話すと、議場は沈黙に包まれた。


「うん。まあ、知ってた」と白けるシオン先輩。

「そうだよねぇ」と苦笑いするアリサ。

「竜は自然の動物。人間が動かすべきではないな」と誇らしそうなカノン。


もしかして、竜を武装集団と戦わせる作戦は暗礁に乗り上げているのだろうか?

最初から無理だったのだろうか?

だったら、何のために、アリサに会いに来たのか……。

がっくりだ。


多数の竜を動かすことは、思いのほか難しいことだった。

そして、このまま作戦は中断になってしまうものと思われた。


「私に、いい考えがあります」


アヤノさんが声をあげた。



つづく

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