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竜の飼育員、竜に襲われる  作者: 朝吹小雨
11/22

竜の解放団ふたたび

【1】


エルマをさらおうとした不審人物の顔を見て、

俺は非常に驚いた。


「捕まえたぞ……! って、お前は!」


見覚えのある顔だった。

先日、「竜の解放団」という市民団体のデモに遭遇したときに見かけた顔だ。


「お前は……竜の解放団の!」


竜の解放団に所属していると思わしき、銀髪の少女だった。

先日のことだし、結構目立つ子だったから、よく憶えている。

この少女は、たしか、

俺に、竜の解放団の主張ポスターを貼るように要求していた。

そこらへんのことも俺は憶えている。


なんでこんなところに?

デモが終わったら、島から出て行ったものと思ったが……。


「ユート君? その子は知っている人なの?」


「はい。竜の解放団に所属している子です。

 俺に竜の解放団のポスターを貼るように要求してきたので

 よく憶えています」


「はなせ、バカ」


銀髪の少女は、無表情で暴言を放った。

俺はもちろん言うことを聞くつもりはない。

絶対はなさないぞ。


「どうしてここにいるんだ?

 それを説明してもらおうか」


「なぜ説明する必要がある。

 私を解放することが先。

 はなせ、と要求している」


こんな敵に囲まれまくってる状況で

よくもそういうセリフが吐けるものだ。

俺はある意味感心してしまった。

こういう性格だからこそ、「竜の解放団」みたいな

エキセントリックな活動ができるのだろう。


それにしても、この少女は、

自分のことをなかなか話してくれない。

頑固な少女だ。質問を変えてみるか。


「アリサのことを知っているだろう?

 危害はくわえたりしないから、

 話してほしい」


「……アリサ?

 あなたはアリサのことを知っているのか?」


「同僚だからな」


「アリサは、この奥にいる。

 数々の竜とともに。

 彼女は理想的な人間だ。

 竜と共生ができる。

 制御魔法なんかに頼らずともな」


「会わせてくれないか?」


「そんなことはできない。

 あなたたちは、アリサを取り返しにきた。

 雰囲気でわかる。そうはさせない」


「そこをなんとか……」


「無理」


「この島に安全を取り戻したいんだ。

 いま、この島は、竜が自由に動き回っている。

 君たち竜の解放団にとってはいいことかもしれないが、

 それ以外の人間から見ると、危険な状態なんだ。

 この島の人たちを救うためにも、

 アリサにはぜひ手を貸してほしい。

 竜の解放団を壊滅させるとか、アリサを奪うとか

 そういうことは考えていない。

 頼む、協力してくれ」


「この島に起きている状況は、私も知っている。

 制御室が奪われ、制御不能になっていると聞いた。

 痛ましいことだ。

 われわれ竜の解放団にとっては、竜の自由こそ正義であるから、

 竜が自由であるこの状況については、素晴らしいことだと思っている。

 竜が自由になったことにより、

 われわれに命の危機がもたらされているが、

 それはそれ、これはこれだ」


「制御室が奪われたことについてはどう思う?

 制御室を支配すれば、竜を操ることができる。

 今回制御室を占拠した武装集団は、今も、竜を制御しきれていない。

 制御の準備に手間取っているのか、理由はわからないけれど……。

 でも、いつの日か、武装集団どもが、竜を制御する日が来るかもしれない。

 そうなったら、竜の解放団的には困ることになるんじゃないのか?」


「それはそうだ。

 だが、武装集団に対抗する力などない」


「いや、対抗する力ならある。

 アリサが従えている竜たちを、制御室の武装集団と戦わせるんだ」


「……ユート。

 それは私たちも少し考えた。

 が、それは竜を操って戦わせる行為に等しい。

 よくないことだ」


うーん。

「竜の解放団」の主張内容から察するに、

言わんとすることはわかるが。

ちょっと頭がかたすぎるんじゃないか。


でもこのままじゃ、アリサの竜の協力を得られず、

武装集団相手に、別の方法を考えないといけなくなる。

しかしこれ以上の有効な手段はないに等しい。

軍隊は頼りにならない。

事実上詰みだ。困った話だ。


やがて見かねたシオン先輩が口をはさんでくる。


「でも、このまま武装集団が制御室をコントロールできるようになったら、

 竜が制御魔法にかかった状態が再開されるわ。

 そうなると竜が自由を失うことになるし、

 それはもう時間の問題かもしれない」


「ジレンマだ。

 それについては、頭を痛めているところだ。

 でもあなたたちに協力したところで、

 最終的には、あなたがた職員が、竜の制御権を得ることになる。

 どの道を歩んでも、竜の自由は失われる」


「竜の自由をどうするかについては、あとで考えましょう。

 まずは、この状況を生きのびることが大事よ。

 竜の解放団の主張を今後もずっと続けたいなら、

 まずは命のほうが重要と思わないかしら?

 武装集団が制御する竜なんて、ろくなことが起きないわよ、絶対。

 そうなる前に、武装集団を壊滅させて、制御室を取り戻したいの。

 そのあとのことについては、

 あなたたち竜の解放団と交渉することを約束するわ」


「武装集団が危険であるということについては同意する。

 だが、アリサの竜を、あなたたちに自由に使わせたくはない。

 アリサの竜の指揮権は我々が行使する」


「それはいいわよ。

 竜の指揮権は、あなたたちにあげるわ」


シオン先輩は、あっさり同意した。

いいのだろうか?

竜の解放団なんかに、竜の指揮権を渡してしまって……。


「よし。交渉成立だ。

 われわれ竜の解放団と、

 あなたがた職員とで同盟を組む。

 アリサの竜を指揮し、

 武装集団を壊滅することが第一目的だ」


「ええ。それはいいけど、

 アリサの竜を使うのだから、

 本人の同意をとったほうがいいわよ。

 ええっと……。ところで、

 あなたの名前を聞いていいかしら」


「……まだ名前を名乗っていなかった。

 私は、カノン。

 竜の解放団の支部副リーダーをつとめる。

 たしかに、アリサの同意は必要だな。

 一緒にアリサに会いにいこう。

 アリサは、この奥の小屋にいる」


銀髪の少女カノンは、

俺たちに、森の奥にある小屋に来るよう言いつけるのだった。


ようやくアリサに会える。

2~3日ぶりとはいえ、アリサと久々に会うことになる。

アリサはいま、どういう気持ちで、どういうたたずまいをしているのだろうか?

俺は少し気になり、緊張した。

まるで、数年も会っていない、学校のクラスメイトと対面するかのような気分だ。

おかしな話だ。2~3日しか会っていないだけなのに…。


アリサは優しい子だ。

特に、飼育竜に対する愛情は半端ないものがある。

俺たちにその愛しい飼育竜を預けて、

武装集団と戦わせることを容認してくれるのだろうか?

我が子を、戦場に行かせるようなものだ。


アリサの同意が得られなかったどうなるのだろう?

強引にでも、従わせるのだろうか?

それは少し嫌だな……。

どっちにしても、まずアリサに会わないとわからない。


俺たちは、小屋に足を踏み入れた。


つづく

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