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第2話:劇場の少女

第2話:劇場の少女

チャイムが鳴り響き、私は教室へと戻った。授業中は特に何事もなかったが……正直、やけに視線を感じる気がする。気のせいならいいんだが。

――キーンコーンカーンコーン。

さて、これからどうしたものか? ……そうだ、あの女の子だ。なんで俺がこんな面倒なことをしなきゃならないんだよ?

コツ、コツ、コツ……と乾いた足音が廊下に響く。

先ほどの女の子が、友だちを連れてまた近づってきた。もう解放されて自分のやるべきことに向かえると思っていたのに……。どうやら逃げられないらしい。私は少し引きつった笑みを浮かべた。

「あの、三浦さん! さっきは急に走り出しちゃってびっくりさせちゃったみたいだし、その……謝ろうと思って」

もう一人の女の子も、いかにも明るいといった調子で言葉を続けた。

「そうだよ、三浦さん! 怖がらせるつもりなんてなかったんだからね!」

まさか、あんなドタバタの後にわざわざ謝りに来てくれるとは。めんどくさいなあ……これじゃあこっちまで変に罪悪感を覚えちまいじゃないか。

「ううん、何でもないの。ちょっと……緊張してただけだから、気にしないで」

私は両手を軽く振って見せ、無理やり笑ってみせた。頼むから、もう問題ないなら通り過ぎてくれ……。

「ねえ、三浦さん。何か入りたい部活とかってもう決めてる? よかったら、私たちと一緒に文芸部に入ってみない?」

部活、か……。正直、今はそんなものに割く余裕なんて一切ない。うまく断るべきか? 私が少し考え込んでいると、彼女たちはすぐに察したようだった。

「あ、ごめんね無茶を言って……文芸部じゃなくてもいいから、そんなに困った顔しないでね!」

彼女はそう言うと、友だちと一緒にペコリと頭を下げた。なんだか少し申し訳なさそうな顔をさせてしまったな。本当に、世の中はめんどくさいことばかりだ。

ふう、と小さく息をつく。

結局私は席を立ったが、まるで運命の悪戯か、急に尿意をもよおしてしまった。

慌ててトイレに向かったが、危うく男子トイレに入りかけちまった。女子トイレの空気は当然男のそれとは違っていて、変な間違いを起こさないようにするので必死だったし、何よりものすごく居心地が悪い。俺は一体、どれだけの尊厳をここで失えば気が済んだんだ……?

タッタッ、と廊下を急ぎ足で進む。

俺は演劇部の方へと向かっていた。事前に連絡があり、この子と接触する時は細心の注意を払うようにと言われていた。何が起きるのか正確には分からないけれど、まさか襲ってくるなんてことはない……よね?

演劇部の裏口がなぜか開いていたのでそこに入った。薄暗い空間に、窓からわずかな光が差し込んでいた。演劇部のピアノの近くに彼女が座っていた。だが、すぐにこちらを向いた。物音が聞こえたか……?

「あの、えっと、音が聞こえたからちょっと気になって、邪魔しちゃったならごめんね」

彼女はショートカットで、入る前は何か集中しているように見えたが、特に不機嫌になったり変に疑ったりはせず、むしろ近くに来るよう合図してくれた。少し真面目そうだったので、少し距離を置いて座った。

「さっきの自己紹介の子だよね?誰もいないこんな場所に入るべきじゃないよ」

……君もここにいるだろ、そう言わずに会話を試みた。

「ちょっと気になってさ…」

「私はここから離れたかっただけ」

なるほど、それなら意味が通じる。劇場の裏に隠れる理由は他になさそうだが、彼女は確かにとても孤独な雰囲気をまとっていた。

「私のこと変だと思ってるでしょ…?」

「…ここで落ち着けるなら悪くないと思う。時々避難場所が必要になることもあるしね、違う?」

何を言っているんだ…

でも、さっきまで真面目そうだった彼女に小さな笑みが浮かんだ。

「三浦さん、だっけ?」

「…うん?」

「私の名前は水瀬しずく、よろしく」

彼女は何かを我堪しているようだった、あるいは何かを言いたそうにしていた…聞くべきか?

「水瀬さん、何か話したいことある?ちょっと…」

「なんでもないよ、三浦さん、気にしないで」

…彼女はそう言って目をそらし、nervous(神経質に)笑った。

「水瀬さん、もし何か――」

彼女は言いたいことを急に遮った。

「もう言ったでしょ、何でもないって…」

彼女は隣の席に置いていたリュックを掴み、立ち上がって近くのピアノに向かった。

「…嘘つきも、薄っぺらい人間も大っ嫌い、最低のクズよ…」

私は黙って彼女の背中を見つめた。ピアノに近づいたが、鍵盤には触れなかった。

「…子供の頃、ピアノを弾くのが本当に好きだった。いつも母のために弾いて、母の笑顔を見るのが一番の幸せだった…『ママ、大きくなったら私のコンサートに来てね、絶対にだよ?』」

彼女の声は震え始め、口に手を当てて言葉を喉に押し戻そうとしているようだった。

「ママは行くよって言ったのに…ある日突然いなくなった。私のコンサートに来るはずじゃなかったの…?これから誰のためにピアノを弾けばいいの…?父は二人で幸せな家族を作ろうって言ったのに、ママが死んだら私を避けるようになって、あまり関わりたくないみたいで…その後知ったの、他の女を作って別の家庭を作ってたって…はは…結局私が邪魔だったってこと…?」

「最後は祖母に引き取られた、たった一人の家族で本当に感謝してる…だけど、時々思う、私はやっぱり重荷なんじゃないかって…」

胸が締め付けられるような気がした。彼女の頬に涙が落ちるのを見た。座ったまま、セーターのボタンに手を伸ばし、通信を切ろうとした。耳元で従姉妹の声が聞こえた。

「おい何してる!彼女の調査を続けろ、言葉に惑わされるな!聞いてるのか!?」

――プツッ、と冷たく通信が途切れた。

分かってる…心の中でそう答えた。

でも危険だなんて言うな、私はただ苦しんでいる少女を見ているだけで…そして彼女を騙している。彼女の気持ちがこんな風に扱われるのを許すわけにはいかない、だから切ったのだ…

しかし周囲の静寂が世界を飲み込むようだった。

私は黙っていた。こんな時に悪いことは言いたくないし言えない。彼女が続けた。

「…なんでこんなこと話したんだろ、誰にも話したことないのに。ごめんね、三浦さん…こんな姿見せるつもりじゃなかった」

私は立ち上がり、少し近づいた。

「水瀬さん…」

「…きっと気まずいよね、ここにいなくていいよ、三浦さん、帰りたかったら帰って…ねえ、あなたにも信じられない人がいるの?」

ピリッとした緊張感がその場の空気を凍らせる。

…最後の一言はバケツ一杯の冷水を浴びせられたようだった…空気はさらに重くなり…劇場の明かりがなぜか私を照らしているようだった。

「私は…信頼していた誰かと色々あったよ…」

唾を飲み込みながら、絞り出すように言った。

「…もしあの時がなければ、その人は本当に真実を教えてくれたんだろうか?多分気づかなかっただろう。考えないようにしようとしたけど、何食わぬ顔で日常を送るほど器用じゃないな」

彼女は私をしばらく見てから、少し奇妙なことを言った。

「…どうして何も読めないの…?」

彼女は腕のポーズをとって私の頭に近づこうとしたが、どこかフラストレーションを感じていた。何かおかしいと思った。

「は…私を読めないってこと?」

「ははは、なるほどね、あなたもあっち側の人間ってわけね…?」

少し怖くなって後ずさった、これは良くない。

「何言ってるか分からないよ、話そう」

「嘘つき…話し方ですぐ分かるよ…」

そして彼女は何か構えをとったが、見えたものは私を衝撃させた。

彼女が光り出した。どうすればいいんだ?!私には力なんてないのに、戦うつもり?私は攻撃していないのに!

「待って待って、本当に誤解だから!」

「そう言うけどどうして信じられるの、最初から私を狙ってきたんでしょ!」

対話を試みたが無視された。さらに悪いことに、変身していた。形が変わったわけではなく、着ていた服が妙なデザインのものに変わっていた。

しかしそんなことより彼女の手元が気になった。

ジェスチャーとともに短い剣が出現し、私の首元に向けられた。

「もう遊びは終わり、誰に送られたのか正直に言いなさい」

背筋が凍るような冷たさを感じ、首の近くにある剣先が非常に近く、少しでも押されたらどうなるか考えたくもなかった。

「私は…」

「言えない?それとも言うつもりないわけ?」

私は後ずさって転び、座席の隙間を利用して隠れようと走り出した。彼女に見つからないように必死に息を殺した。

「ほお…面白いかくれんぼね、本当にそんなところで隠れられると本気で思ってるの?」

パタパタと、冷徹な靴音が近づいてくる。

遠くから靴音が聞こえた。そこにいると思っているのか?

「じゃあこれでどう?」

次の瞬間恐ろしいことが起きた。彼女は剣をその方向に振り、距離のある座席を風の力だけで切り裂いて破壊した!

「ねえ、なんで隠れるの、戦う気がないの、それとも演技?」

戦えるわけないだろ、どうすればいいんだ!集中すると、座席の向こう側の彼女のエネルギーの輪郭が見えた。

こんな能力が何の役に立つんだ、彼女のシルエットが私を狙っているのが見えてさらに怖くなっただけじゃないか!

彼女が足音を立てて確実に近づいてくる。この透視能力なんて何の役にも立たない、ただ絶望を早めるだけだ、逃げ場なんてない……。

その時、ずっと無視していた疑問が浮かんだ…

彼女は本当に私を殺すつもりなのか?最初から消すつもりなら、裏口で出会った時にすぐ攻撃したはずだ、なぜあの時逃がした…?

「…降参だ!あなたと戦うつもりなんて最初からない!」

思い切って物陰から飛び出した。

彼女はすごい速さで目の前に詰め寄り、服を掴んだ。

(…っ)

次の瞬間、少し宙を舞うような感覚があり、ステージの中央に投げ出された。足や全身に痛みが走り、擦り傷もあったが、生きていることだけが救いだった。

「私は…戦わない、もう決めたんだ、絶対に手出しはしない」

(…っ)

「本当に私を殺したいなら…どうしてまだやってないの?」

わずかな光の中、ステージの中央でよろめきながら立ち上がり、両手を広げた。もう逃げる足もなく、戦う手段もない。

「やれるならやってみろ!ここに立って動かないから!…私はあなたを信じる、だからもう何もしない!」

……っつ! と、彼女が歯噛みする音が聞こえた。

彼女の顔が怒りと戸惑いで歪んだ。

彼女が攻撃を放ち、私は反射的に目を硬く閉じ、その場から動かなかった。頬をかすめる風が皮膚を切り、小さな血の珠が飛び散り、転倒のダメージのせいで足の力が抜けていくのが分かった。

――でも分かっていた、この子は私を殺さない。

だから一歩も動かなかった。

目を開けると、彼女は直前で刃の軌道を逸らしていた。

視界がぼやける中、彼女の表情が恐怖、後悔、そして計り知れない焦燥に染まっているのが見えた。崩れ落ちる私に向かって、彼女が必死に自分の名前を叫びながら駆け寄ってくるのが聞こえた――。

作者のヒオリヴスです。

ずっと早く続きをお届けしたくて、すごく楽しみにしていました第2話です!

日常のドタバタから、劇場での少しシリアスで重たい空気感へと変わる展開でしたが、楽しんでいただけたでしょうか?

もし「ここはちょっと引っかかったな」という部分や、逆に「ここが良かった!」という感想があれば、ぜひ気軽にコメントで教えてください。皆さんの意見をもっと良いお話を作る参考にさせていただきます!

それでは、次の更新も楽しみにしていてくださいね!

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