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第3話:休日

少しずつ視界が戻ってきた。横たわっている感覚はあるが、正確にどこにいるのかは分からない。夢でも見ていたのだろうか?

(ピッ……ピッ……ピッ……)——心電図モニターの規則正しい音が背景に響いていた。

視界がはっきりすると、いとこの姿と、その傍らに立つ看護師が見えた。どうやらあの船の施設内らしく、私はストレッチャーの上で目を覚ましたようだ。消毒液に似た、しかしきつく不快ではない匂いが鼻をかすめた。

起き上がろうとしたが、わずかなめまいがした。病院用のガウンを着ており、体には包帯がいくつか巻かれている。気を失う直前の出来事を思い出すと、背筋が凍るような冷たさが走った。

いとこの隣にいた若い看護師が、計器類を確認しながら落ち着いた声で話しかけた。周囲には見慣れない器具があふれていた。普通なら、一般の病院では絶対にお目にかからないような代物ばかりだ。

「あまり心配しすぎないでください。でも、無理も禁物ですよ。怪我の大半は大きな問題なく処置できましたが、当分はゆっくり休むのが一番です」

看護師はもう一度様子を確認し、手帳に何かを書き込むと、いとこに軽く一礼して去っていった。

――……。

いとこは何も言わず、私はただうつむいたまま、どう切り出すべきか分からなかった。

「お前が戦ったあの娘が、ずっと側に残っていたんだ。謝罪したいと言っていてね、向こうとはもう話しをつけてある」

――……本当は、こんな結末にしたかったわけじゃない。

「よくあんな風に、お前をボコボコにした相手に一番心配されるような状況を作れたものだね。何かしらの誤解があったんだろうけどさ……」

「でも……」

ふいに出した視線の先で、いとこの顔つきが変わった。あの表情の見覚えはありすぎるほどある。

「――まったく、どうして通信を切るなんてまねをしたんだ! 残りの後始末はこちらで引き受けるはずだったんだぞ。どれほど危険だったか分かっているのか!? そもそも、あんな喧嘩に首を突っ込む予定じゃなかったのに……!」

「……しくじったのは私だ。あんな風にボロボロになったのも私の責任だよ」

彼女は私に歩み寄ると、そのまま数秒間、何も言わずに強く抱きしめてくれた。

「心配したんだから……お前まで失いたくない」

「……やっぱりアンタは俺のいとこだな、ははは」

「ちょっと、何がおかしいわけ?」

「何でもないよ」

その温かい仕草にいとこがいることを実感し、少しだけ胸が軽くなった。正直、まだ頭の中はぐるぐると混乱していたが、これでようやく休めそうだ。

しばらくして、軽い食事をとった後に退院となった。もっとも、いとこが学校への欠席理由をそれとなく「体調不良」でうまくごまかしてくれていたが。正直、溜まった課題やノートのほうもどうにかしてほしかったところだ。

その一件があってから、御那瀬さんとは顔を合わせた。最初は恐怖心もあったし、状況の飲み込めなさに動揺もしたが、不思議と恨みはなかった。いとこの計らいで、翌日にみんなで出かけることになっており、御那瀬さんも同席するという。何でも、お互いのわだかまりを解いて、少しでもリフレッシュするための「お出かけ」なのだとか。

――「女の子同士のお出かけ」だってさ。一体どんな罰ゲームを受けたらこんなことになるんだか。

そして、その日がやってきた。自分の部屋で、いまだに現実感の湧かないまま過ごしていた。いとこが気利かせて髪を整えてくれると言い出し、私の希望通り肩にかかるくらいのセミショートにしてもらった。仕上げに、星型のヘアピンまで髪に留められたのだ。

鏡に映る自分の姿を眺めながら、この現実をいまだに脳が処理しきれずにいた。おまけに、お出かけ用に渡された服はノースリーブのシャツだった(せめて下は長ズボンだったのが救いだが)。

すべてが現実だという事実から目を背けたくなる。ため息をつきながら、恐る恐る自分の胸元に触れてみたその時――。

「おい、もう出かけるぞ! いつまでモタモタしてるんだ。って……おや、何か見ちゃいけないものを見てしまったか?」

「っ……! 入ってくるならノックくらいしなよ!」

私は真っ赤になって慌てて両手で胸元を隠した。

いとこの強引すぎる乱入のせいで、選択肢なんて残されていなかった。もう出発の時間だし、御那瀬さんが外で待っているからと急かされ、仕方なくその後をついていくことになった。

外に出ると、そこには綺麗めな格好をした御那瀬さんが立っており、私たちの姿を見るなり深々とお辞儀をした。

「こんにちは、如月さん、三浦さん」

そうだった、いとこはすでに彼女に自己紹介を済ませていたんだっけ。どう反応していいか分からず、私はただいとこが主導権を握るのを待った。

「やあ、二人とも。今日は楽しい一日にしようね。それに、トウカは私にとって妹みたいなものだし、この街に来たばかりだからさ」

いとこはまったく悪びれる様子もなくそう言った。

こうして、私たちの休日が始まった。商店街の通りを歩き始めたが、まだ空気はどこかぎこちなく、私は相変わらず自分の不慣れな足取りに気を取られていた。そんな空気を察してか、いとこは道中どうでもいい冗談を飛ばし、御那瀬さんとの距離を縮めようと努めてくれた。

やがて、いとうのお気に入りだというカフェにたどり着いた。席に着くなり、顔なじみらしい店員さんが気さくに声をかけてきた。

「いらっしゃい! ユヅルちゃん、元気だった? で、そちらのお二人さんは?」

「うん、元気だよ。こちらは私の大事な従妹の三浦さん。最近この街に越してきたばかりだから、見慣れないのも無理はないよ。で、もう一人は友達を誘ったの」

……あの嘘を平然とつく神経には驚かされる。御那瀬さんは店員さんに上品な笑顔で会釈し、私もどう振る舞うべきか分からず軽く頭を下げた。

店員さんと世間話を交わし、いくつかの他愛のない冗談で笑い合った後、注文を済ませて料理を待つことになった。

私は黙り込んでいた。正直、御那瀬さんにどんな言葉をかければいいのか分からなかったのだ。彼女もまた口を開かず、いとこはどこか楽しそうにそれを眺めている。ほどなくして、注文したシェイクと軽食がテーブルに並べられ、店員さんは奥へと引っ込んでいった。

目の前に置かれた料理を見つめながら、これからどんな上品な食べ方を心がけるべきか考えていた……まったく、面倒くさいことだ。と、そのタイミングで、いとこが「素晴らしい」思い付きを口にした。

「二人とも、ちょっと急な用事を思い出しちゃった。少し待ってて、すぐ戻るから」

本気かよ!? それ絶対わざとだろ! 一体何の用事があるっていうんだ? いとこの見え透いた芝居に呆れつつ、私たちは完全に二人きりにされてしまった。

(ズズッ……)——シェイクを啜る音。

(モグモグ……)——何かを食べる音。

――……。

「三浦さん……」

御那瀬さんが沈黙を破った。

「え、なに、御那瀬さん」

「あの……私たち、こんな風にここにいて、居心地が悪くないですか?」

「ううん、そんなことないよ。ただ……何て言ったらいいか分からなくてさ」

「そういう意味じゃなくて……あの日のことや、これまでの諸々を考えると……どう謝罪していいのか分からないんです。最初は、私を力ずくで連れ戻そうとする敵だと思い込んでいたし、あんな風に近づいてくるのは全部偽りの目的だと思っていました……」

「御那瀬さん、分かってるよ。あの場所では、お互いに恐怖しかなかったんだから、君の反応も無理はないさ」

「三浦さん……」

「それに、もう心配しなくていいよ。君をどうこうするつもりなんて一切ないから。というか、見ての通り私はすごくか弱いし、そのことでよくからかわれてるくらいだしさ」

「三浦さん……ありがとうございます」

そのタイミングを見計らったかのように、いとこが何食わぬ顔で席に戻ってきて、何事もなかったかのように食事に加わった。

「ちょっと失礼、お手洗いに行ってきます……」

御那瀬さんはそう言って立ち上がった。

今度は御那瀬さんが離席か? まあ、彼女の戸惑いは演技なんかじゃない、あのいとこと違ってな……。

「ちゃんと話せたかい?」

いとこがすかさず聞いてきた。

「……ああ、何とかね。二人きりにしてくれてありがとうよ」

「いい冷却期間になったみたいで何よりだ」

「皮肉が通じてないぞ……まあ、結果オーライだけどさ」

(ズズッ……)——飲み物をすする音。

目の前の皿を眺めながら、この怒涛のような日々に思いを馳せていると、いとこがまた茶々を入れてきた。

「それにしても、さっきからずっと上の空で静かじゃないか」

「こんな状況でどうやって落ち着いていられるっていうんだよ」と、私はこれまでの理不尽な展開を思い返しながら小さくため息をついた。

「ユヅル……」

「ん、どうした?」

「この状況……その、全部についてなんだけどさ」

「ここではあまり大きな声でそういう話はできないよ」

「そっか……」

「……」

「最初は、あなたのことも全然知らなかった……まあ、怖かったしね。でも、あんなことがなければ、気付けなかったこともたくさんあったと思うんだ……」

「……」

「トウカ」

「なんだよ……」

「このお店のストロベリーシェイク、私のお気に入りなんだ。もし何かがあって、この味が変わってしまったとしたら……すごくショックだし、何が何でも元の味に戻すためにできる限りのことをすると思うんだ」

「……もしそんなことになったら、絶対にやり遂げてくれよ」

「できる限りのことはするさ」

「……」

「お待たせしました、戻りました」

御那瀬さんが自分の席へと戻ってきた。

食事が終わり、いとこの思いつきで次の目的地へ向かうことになった――ショッピングである。

連れられたのは大きなおしゃれなブティックで、店員に明るく迎えられながら店内を見て回ることになった。正直、私にとっては恥ずかしさの塊のような場所だったが、御那瀬さんは真剣な表情でいくつかの服を物色していた。

「おやおや、お嬢さん、何か考え事ですか? よかったらお探しのお手伝いをしましょうか?」

若い女性の店員さんが親しげに声をかけてきた。

「え、あ、いえ、大丈夫です……!」

「そんな遠慮しないで、お似合いのものを選んであげますよ」

二人とも楽しそうだし、自分だけ何もしないのも気まずい。だが、この状況は精神的にキツすぎる……結局、押し切られる形で試着室へと連れて行かれた。

店員さんに付き添われ、差し出されたのは華やかな装飾がついたワンピースだった。まるでこれから格式高いパーティにでも出かけるような代物だ。そんなドレスを手に、女性用の試着室へと押し込まれた私は、自分の置かれた状況に絶望した。服を脱ぎ捨て、意を決してドレスに袖を通そうとしたものの、人生で一度も着たことのない服なんて着方が分かるわけがない……。

「えっと……すみません、着るのを手伝ってもらえませんか……?」

恥ずかしさのあまり消え入りそうな声で頼んだ。あの時、意地でも断っておけばよかったと心の底から後悔した。

顔から火が出るような思いをしながら店員さんに手伝ってもらい、何とか着付けを済ませて外に出た。

「お似合いですよ、お嬢さん!」

「……ありがとうございます」

周りの客が自分の買い物に夢中で、誰もこちらを見 ていないことだけが救いだった……。

(カシャッ!)——スマートフォンのシャッター音。

「すごく似合ってるよ、トウカ。まさかそんな格好が似合うなんてね」

いとこがニヤニヤとした笑みを浮かべながら言った。

「ちょっと、いま写真撮ったでしょ!?」

「いやあ、あまりにも似合ってたから記念に残しておこうと思ってさ」

「何言ってるんだよ……!」

「三浦さん、そのドレスとっても可愛いですよ」

御那瀬さんが純粋な瞳でそう褒めてくれた。

御那瀬さん、そんなに純粋な目を向けないでくれ……と思いながら、その横で私の不幸を面白がるいとこを心底呪った。

死ぬほど恥ずかしい思いをしながらワンピースを脱ぐことになったが――言うまでもなく、脱ぐのすら自力では無理でまた手伝ってもらうはめになった。おまけに、いとこが「すごく似合っていたから」という理由でそのドレスをごり押しし、結局そのまま買わされてしまった。

幸いにも下着売り場には足を運ばずに済んだが、いとこが何やら悪だくみでもしていそうな笑みを浮かべて近づいてきたのを見て、肝が冷えた。

「本当は別のコーナーも見てみたかったんだけど、まあ今日のところはドレスだけで勘弁してあげるよ」

……それって慈悲のつもりか? もしかして、あのままランジェリーコーナーに引きずり回される予定だったのか!?

そんな恐ろしい想像を頭から振り払うように視線を動かすと、少し離れた場所に目を引くデザインの帽子が目に入った。あれなら御那瀬さんに似合うかもしれないと思い、試しに被ってみるよう勧めてみた。彼女は目を輝かせ、嬉しそうにそれを手に取った。

「三浦さん、この帽子、どうですか……?」

改めて間近で見た御那瀬さんは――帽子のせいなのか、それとも元々なのか――これまでにないくらい可愛らしく見え、心から楽しそうに微笑んでいた。その無防備な笑顔に当てられ、私は反射的に顔を赤らめ、慌てて視線を逸らした。

「……うん、すごく似合ってるよ、御那瀬さん」

「トウカが選んだならなおさらだね。じゃあ、これも一緒に買っていこうか」

いとこがそう言って即決した。

洋服店を後にした私たちが向かったのは、きらびやかな宝石店だった。いとこがここで何を買うつもりなのか気になったが、隣を見ると、御那瀬さんがショーケースの前に立ち、どこか切なそうな表情で一点を見つめていた。

「御那瀬さん、どうかしたの?」

「ううん、何でもないの……ただ、おばあちゃんに何かプレゼントできたらなって思って」

「ねえ、御那瀬さん、このネックレスなんてどうかな?」

指し示した先には、上品に輝く繊細なデザインのネックレスがあった。御那瀬さんもそれに気づき、目を奪われたように見入った。

「すごく綺麗……だけど、きっとすごく高いよね……」

私たちの様子をいつの間にか観察していたいとこが、スッと割り込んできた。

「御那瀬さん、それが欲しかったのかい? なら買っていきなよ、私が出してあげるから」

「そ、そんな高価なもの買ってもらうわけにはいきません! 他のを探しますから!」

「遠慮しなくていいって。誰か大切な人への贈り物なんだろう?」

「おばあちゃんに……」

「それならなおさらだ。おばあちゃんもきっと喜ぶさ」

いとこは躊躇うことなくそのネックレスを購入し、丁寧に小箱に包んでもらった。店を出た後も、御那瀬さんはどこか感慨深そうな面持ちでその箱を大切そうに抱えていた。

その次は、携帯ショップへと足を運んだ。これまで使っていた端末をそのまま持ち続けるつもりだったが、組織の目を盗むためには同じ端末を使い続けるのは危険で、足がつく原因になるといとこから事前に釘を刺されていた――とはいえ、前のスマホに保存していた思い出のデータや連絡先が消えてしまうのは、やっぱり痛かった。

店を出て帰り道を歩いていると、賑やかなゲームセンター(アーケード)の前を通りかかった。懐かしさと楽しそうな雰囲気に思わず足が止まり、いとこの提案で少しだけ中を覗いていくことになった。

吸い込まれるように向かったのは格闘ゲームのコーナーだった。御那瀬さんは格ゲーのルールがあまり分からないらしく、少し離れた場所から物珍しそうに私たちを見守っていた。いとこは「ちょっと手本を見せてあげるよ」と自信満々だ。

ゲームが始まった。最初は私が優勢だったが、熱くなってコントローラーを激しく連打している拍子に、すぐ近くに立っていた御那瀬さんに肘が当たってしまった。

「あ、ごめん、御那瀬さん! 試合に夢中になりすぎて……」

慌てて謝罪する。

「ううん、大丈夫だよ、三浦さん……」

「よっしゃ、私の勝ちだ!」

いとこが勝ち誇ったように大声で叫んだ。――って、今の絶対あいつが汚い手を使ったからだろ!

「ちょっと、今の妨害でしょ! アンタ、めちゃくちゃ汚い手使ったじゃん!」

私は思わず声を荒げた。

「年上の相手にその口の聞き方はなんだい? 勝負の世界は非情なものさ、負けた言い訳はなしだよ」

「もう一回だ! 今度こそギャフンと言わせてやるからな!」

「望むところさ」

再びゲームがスタートした。いとこの手元を警戒しつつ、華麗なコンボを決めていくと、後ろから御那瀬さんが感心したような声を上げているのが聞こえた。そして、とどめの一撃を叩き込み、見事に勝利を収めた。

「嘘だろ!? なんだよそのえげつない立ち回りは! ずるい、ずるすぎるぞ!」

「ふっ、ユヅル、勝負の世界じゃ非情な敗北なんて日常茶飯事さね」

「……」

「私の圧倒的なテクニックの前にひれ伏すがいい、ははは! まだまだ修行が足りないね!」

「三浦さん、なんだかゲームのラスボスみたいなセリフになってますよ……っ!」

御那瀬さんはお腹を抱えて楽しそうに笑った。

はぁ……すっかり熱くなってしまった。いとこのセコい妨害にイラついたのは事実だが、ゲームの腕がまだ錆びついていないことが証明できただけでも良しとしよう。

すっかり日が暮れ、帰り道の街並みには人工の明かりが灯り始めていた。御那瀬さんは次の曲がり角で自宅の方向へ別れることになっていた。別れ際、私たちに頭を下げようとした彼女が、ふと足を止めた。

「あの……」

「どうしたの?」と私は尋ねた。

「今日は……本当にありがとうございました」

御那瀬さんは、おばあちゃんへのプレゼントが入った小さな箱をいとおしそうに両手で抱きしめていた。

「こんな風に誰かと出かけるなんて久しぶりで……それに、あんなことがあったのに、どうしてここまで良くしてくれるんですか……?」

いとこが優しく彼女の言葉を遮り、偽りのない本音を告げた。

「正直に言うとね、トウカが怪我をして戻ってきた時は、君に対して腹が立ったし、気が気じゃなかったよ。でも、事情を聞いて理解できたからね……もっとも、もしトウカに何か取り返しのつかないことが起きていたら、絶対に許さなかったけどさ」

「御那瀬さん、私も今日一日、すごく楽しかったよ」私は柔らかな笑みを浮かべて付け加えた。「最初はめちゃくちゃビビったけど、君に悪気がなかったって分かったからさ。そういえば……その帽子、すごく似合ってるよ!」

「っ……ありがとうございます。本当に、本当に……ありがとうございました」

御那瀬さんは深く頭を下げると、足早に家路へと駆けていった。その背中はどこか嬉しそうで、心から大切なおばあちゃんにプレゼントを渡すのが待ちきれない様子だった。

「さてと、トウカ。今日一日はなかなかに充実したんじゃないかい?」

いとこが腕を組みながら満足げに言った。

「……ああ、特にアンタがボロ負けした瞬間とかね」

「あのプレイスタイルは反則スレスレだったからね!」

「はいはい、負け惜しみはそこまでだ。そもそも、私が御那瀬さんと話してる隙にちょっかい出してきたのはそっちだろ」

「さあ、おうちへ帰ろうか」

こうして、私たちの長い休日が終わった。家に戻ってからもいとことの他愛のない小競り合いは続き、夕食を済ませ、新しいスマホの設定を終えた頃には、すっかり夜が更けていた。

(ピピピピ……)——耳障りなアラームの音。

「ん……っ」

気だるげに手を伸ばし、アラームを止めた。

また新しい一日が始まる。私は再び鏡の前に立ち――。

私はまだ、少女のままだ。


こんばんは! 第二章の戦いの後、どう話を展開させようかずっと考えていました。やっぱり緊迫した展開のあとは、少し落ち着いた日常を描くべきですし、その中で事件の後の後始末や、キャラクター同士の関係性をもう少し深掘りしたかったんです。うまく描けたかどうか、何か見落としがないか少しドキドキしていますが……!


今回は、主人公に新しいスマホを用意するという要素もこっそり追加してみました(実は、私自身も新しいスマホがすごく欲しいんです!笑)。


ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。楽しんでいただけたなら幸いです! ご意見やご感想、修正点などがあれば、ぜひ気軽にコメントで教えてくださいね。


それでは、また次回の更新でお会いしましょう!

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