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第1話「鏡の中の自分を見た日、俺の人生は終わった

第1話:鏡の中の自分を見た日、俺の人生は終わった

俺の人生が地獄の底へ落ちたのは、高校に入学したまさにその日のことだった。

今は従姉妹と二人で暮らしている。あいつは家の中をいつもめちゃくちゃにする大バカ者だけど……まあ、あいつのおかげで、退屈だけはしない賑やかな毎日を送れている。

今日という日は、俺の高校生活における、最も重要な始まりになるはずだった。15歳の高校一年生として、ごく普通の生活を送るための第一歩。

だけど、あの日の朝、部屋の鏡に映った自分の姿がすべてを変えてしまった。そしてその瞬間から、俺はあまりにも多くの、本当に多くの厄介事に巻き込まれることになったんだ。

あーーふっ!

あくびをしながら目が覚めたが、今日の体は何かがおかしかった。完全に、おかしかった。

寝相が悪かっただけかもしれないが、体にものすごい違和感がある。いくら何でも、一日の始まりからこんなに幸先が悪いなんてあり得ない。

カチャッ!

俺は壁に手を突いた。何だこれ……足取りが妙に軽いというか、変な感じがする。一体何が起きているんだ? 俺は必死に足を引きずりながら、部屋にある鏡を覗き込もうとした。

「……え?」

一回、二回、三回と瞬きをした。

鏡の中にいるこの女の子は誰だ? 家に誰か不法侵入でもしたのか? 長い茶髪で、ものすごく整った顔立ちをしているが……。

パラ。なんで俺の動きと完全にシンクロして動いてるんだ?

何だこれ、この反射は。自分のパジャマに目を落とすと、着心地が猛烈に奇妙だった。サイズが少し大きく感じられるし、何より、胸のあたりに明らかな二つの膨らみがあった。

「寝ぼけてるんだな、俺。よし、もう一回寝よう」

ぎゅーーっ!

俺は自分の腕を思いっきりつねった。

「いったーーいっ!」

夢じゃなかった。おい、嘘だろ? 鏡の中の女の子……これ、俺なのか?

一体全体、何が起きているんだよ!? パニックになって自分の胸を掴もうとした瞬間、何か神秘的な衝撃が走った。妙な感覚が突き抜けて、一瞬で顔がカッと熱くなる。

焦って下の方にも手を伸ばした。……ない。何もなかった。

すべてが狂っている。わけが分からないままあちこちを触って確かめていると、さらに状況を悪化させるように、一緒に暮らしているあのバカがドアをドンドンと叩き始めた。

「おい、いとこ! 遅刻するわよ。今日は高校の入学式なんだから、もう準備してなきゃおかしいでしょ。中で一体何をしてるの――」

ガチャリ、とドアが開いた。

(わあ、ノックもなしに開けやがって!)と心の中で叫びながら、俺はその場にカチコチに凍りついた。

「え……俺も……何が何だか……」

言葉を発しようとした瞬間、自分の口から出たのは、信じられないほど高くて綺麗な、鈴を転がすような細い声だった。俺の声、どうなっちまったんだよ!?

従姉妹は俺をじっと凝視した。なぜ急にそんな冷ややかな視線に変わったんだ? なんだ、その真剣な顔は? なんでそんな猛スピードでスマホを操作し始めたんだ?

「……もしもし。ここに重大なサンプルが確保できました。はい、私自身が責任を持って連れて行きます」

あいつがそんな話し方をするのも、そんな態度を取るのも見たことがなかった。本気で恐怖が込み上げてくる。

「こ、これは説明できるっていうか、とりあえず座って話そう――」

俺は最後まで言葉を紡ぐことができなかった。次に感じたのは、突如として態度を豹変させた従姉妹への恐怖と、そして――俺の首筋に正確に叩き込まれた、確実な一撃だった。

そして、視界は完全に真っ暗になった。

……ザー……ザー……

意識が戻り始めた……。

(なーんだ、やっぱり全部夢だったんだろ?)と、俺は思った。

だけど、さっきから胸のあたりにある、あの妙な軽さは消えていない。何であいつは俺を殴ったんだ!? あの視線は一体何だったんだよ!? 俺が一体何をしたって言うんだ!?

完全に目を覚ました俺は、目の前の光景がまったく理解できなかった。

そこは俺の部屋ではなかった。見たこともない巨大な空間で、そこら中で人間たちが、何に使うのかも分からない精密機械を操作している。壁には巨大なモニターが並び、どこを見渡しても高度なテクノロジーで溢れかえっていた。

なるほどな……エイリアンに拉致されたわけか。最悪な状況のさらに上を行きやがった。

「おい、聞こえてる?……あなたがなぜここにいるのか、説明させて」

ああ、やっぱりな。俺の従姉妹だ。あいつは高官のようなオーラを放ち、特異な制服を身にまとっていた。

あいつは、もう一度苛立った声で繰り返した。

「あんた、迷子なの? ぼーっとしてないで、プレッシャーを感じて、聞いてるの?」

あいつは真剣な表情を崩さなかった。まるで高位の将校のようなオーラだ。それだけでなく、あいつの完璧な制服姿は、どこかの部隊の指揮官のように見えた。コスプレ大会か何かか?

従姉妹はもう一度、今度はかなり苛立った口調で繰り返した。

「余計なことを考えるのはやめて、私の話をききなさい! あなたは能力に目覚めたの。でも、これは極めて異例なケース。通常、エネルギーを発現させるのは女の子だけだから。あなたは完全な隔離症例。あなたのエネルギーは微弱すぎて、私でもほとんど感知できないレベルだけど、この変身現象そのものが異常よ。これからあなたには、この『組織』の一員になってもらうわ」

腕を組んで、タブレットを眺めながらあいつは言った。

「私たちの任務は、こうした能力を持つ女の子たちを見つけ出し、保護して、私たちの仲間に引き入れること。それに――」

あいつは説明を続けていたが、正直に言って、俺は完全に置いてけぼりだった。今日という日は、完全に歯車が狂ってしまった。

ここは妙な場所だし、従姉妹は特殊な制服を着ているし、俺にはさっぱり分からないことを説明されていて、すべてが狂気じみている。きっとこれは、俺をからかうためのドッキリか何かなんだろう。

「もういい、こういうのは終わりにしよう」俺はベッドから立ち上がり、あいつの言葉を遮った。「どんなトリックを使ったのかは知らないけど、俺はこんなの参加しないからな。第一……今日は高校の入学式なんだぞ。俺はここで何をしてるんだ?」

別人のように冷酷な従姉妹が、冷たく言い放った。

「そんなことが気になるの? あんた、ちゃんと聞いたの? 安心しなさい、高校の件なら手は打ってあるわ。ここのエージェントの一人が『擬態』の能力を使って、部下をあなたの姿に変身させた。そいつが身代わりとしてそっちを処理しているわ」

モニターには、男の体をした俺が教室に入っていく姿が映し出されていた。なんてパラノイアだ。

「何かの間違いだろ、これ。能力って何なんだ? なんで画面の中で俺が学校に通ってるんだよ? あと……お前、なんでそんな格好してるんだ?」

あいつは、俺の言葉を冷たく一蹴した。

「何の間違いでもないわ。画面の件はもう説明したでしょ? あんた、そんなに簡単に解決できるような話だったら、私がこんなところでわざわざ時間を割いて説明していると思う?」

なるほど……やっぱりな。もう何をやってもダメだ。見知らぬ場所で命令を受けて、まるで俺が悪いことをしたかのような扱いを受けている。

「隊長、解析結果が出ました。対象のデータはすべて詳細に記録されています」

スーツ姿の女性が近づいてきて、隊長である従姉妹にタブレットを渡した。あいつは画面を確認しながら、低く呟いた。

「なるほど……つまりこれは……」

この狂った状況に集中するあまり、俺は自分の体の状態を確認するのを忘れていた。

視線を落として、息が止まりそうになった。なんで俺はこんな女子の制服を着せられているんだ? 太ももまでしかないスカートに、膝下までの黒いニーハイソックス。

「おい! なんで俺がこんな格好をしてるんだよ!? 必要か!? まだこの体に慣れてないのに、こんなの着せるなんて!」

従姉妹はタブレットを脇に置き、当たり前のような顔で言い放った。

「決まっているでしょ? 明日から学校に行ってもらうわよ」

あ……。

要するに、すべてはそういうことだった。俺は女の子になり、最先端テクノロジーを搭載した飛行艇へと従姉妹に拉致され、そこで一から説明を受けた。

俺はエネルギーを隠す方法を教わり(幸いにもすぐにコツを掴めた)、歩く時のバランスの取り方も練習した。どうやら変身がそれを調整してくれたらしく、簡単な講習を受けた。

従姉妹はこの飛行艇の隊長で、このプロジェクトの責任者だった。彼女たちは能力に目覚めた女の子を探し出し、組織に連れて行って保護し、仲間に引き入れることを目的としている。こうした素質を持つ彼女たちは「魔女」と呼ばれている。もちろん、ほうきに乗ったりはしない。

どうやら、こうした能力は女の子にしか発現しないらしく、俺のケースは絶対的な例外らしい。また、彼女たちを殺したり、実験材料にしたりする敵組織「魔女狩り集団」の存在も聞かされた。彼らも高度な技術を持ち、人工的な能力と狩猟用の装備を使っている。彼らのエージェントも、実験や暴露に適しているという理由で、ほとんどが女の子だった。

あと、従姉妹がとんでもないジョークを飛ばした。魔女のパワーレベル格付け表に、俺のための新しいランクを作ることを提案したと言ったんだ。俺のエネルギーの現れ方が、史上類を見ないほど低すぎるからだって。応援してくれてありがとうよ。

そんなこんなで、一日が過ぎた。

俺は教室の真ん中に立っていた……新入生として。そう、俺は全く別の学校に放り込まれ、抗議する権利もなく、組織によって女子高生として振る舞うことを強要されたんだ。偽名を与えられ、事務手続きもすべて彼らが済ませていた。

「よし、みんな。新しいクラスメイトを紹介するぞ」先生が親しげにアナウンスした。「入ってきなさい」

(誰か、俺をここに生き埋めにしてくれ……)俺は心臓が口から飛び出しそうなほど高鳴る中、祈った。

ガラガラッ!

教室の引き戸を開けた。

「クラスのみんなに自己紹介をしてくれるかい?」先生が優しく促す。

俺は名前を書くためにチョークを手に取った。俺が今、義務として名乗らなければならない名前だ。手元が震えて文字が歪む。背後から生徒全員に見られているような気がしてならない。

カリカリ……カリカリ……!

(俺の字、ちゃんと女の子っぽく見えてるか……?)俺はパニックになりながら、書き終えた。

コツン!

黒板の縁にチョークを置いた。黒板にはこう書かれていた。――三浦灯華。

運悪く、俺は人生で一度も女の子らしい文字を書く練習なんてしたことがなかった。当然ながら、俺の字は俺の本性を少し露呈させている気がする。俺は自己紹介の体勢を取ったが、男の時の癖で足を大きく開いていたため、慌てて揃えた。その衝撃で、危うくバランスを崩しそうになった。目立ちすぎただろうか?

「初、初めまして! 私の名前は三浦……はい、三浦灯華です!」声を無理やり絞り出した。

(声、高すぎたかな? みんな見てるよ。練習したことを思い出せ、頑張れ……)

「北桜中学校から来ました……みんなと友達になれたら嬉しいです! どうぞよろしくお願いします!」

俺はかなり深くお辞儀をした。先生の教卓にぶつかりそうになった。頼む、もう座らせてくれ……みんなまだ見てるんだ。

ザワザワ……ザワザワ……

教室中に一斉に私語が広がった。

「なるほどな。じゃあ一番後ろの空いてる席に座りなさい、三浦さん。これで紹介は終わりだ」

タッタッタッ!

俺は神経をすり減らしながら後ろの席へ歩き出した。みんなのひそひそ話が聞こえてくる。

女子サイド:

「可哀想に、すごく緊張してるみたい」

「制服のセーター姿、すごく似合ってる。茶髪も可愛い」

「字がちょっと変わってるね……緊張してたのかな?」

男子サイド:

「おお、小柄だな。服がちょっと大きく見える」

「見たか? 足をバッと閉じてたぞ、怖がってるみたいだった」

「超可愛いな」

俺はただ自分の席にたどり着き、座りたかった。だけど、焦るあまり距離感を完全に見誤り、隣の席の男子のシャープペンシルに体をぶつけて床に落としてしまった。

カランッ!

「あ……ごめん。前を向いてなくて……」俺はすぐに膝をついて拾い上げ、女子らしく振る舞わなければいけない不本意な状況に悪態をついた。なんてついてないんだ。

「あ……ごめん。はい、前を見てなくて……」俺はそう言って手渡した。

俺はひどく怯えた様子で、不自然な笑みを浮かべた。

「ああ、気にしないで」と彼は超冷静に答えた。「俺が悪かったんだ、机の端に置きすぎたから」

彼はさらっと言って、自分の作業に戻った。でも、ぶつかったのは俺なのに……。

さらに追い打ちをかけるように、俺の席はその男子の真後ろだった。座って荷物を整理しようとすると……なんだこれ? なんで俺の筆箱、猫の柄なんだよ? 本気で全部徹底してやがるな。女子グッズの祭典だ。

荷物を整理していると、クラスの女子が一人近づいてきた。

「ねえ、三浦さん。芯を貸してくれないかな? 切らしちゃってて、補充するの忘れてたの」

筆箱を開けた。もう何が何だか分からない、芯の祭典状態だ。予備を見つけて渡したが、声でバレないように最小限の会話で切り抜ける。

「……はい」

「ありがとう、三浦さん! 可愛い筆箱だね」

彼女はそう笑って、お辞儀をして去っていった。

(正直、もし去年、別の状況で女の子に話しかけられていたら、俺の返答は違っていただろうな……)俺は絶望的な気持ちで服を整えた。(でも、今のこの状況……スカートが全然ガードになってない気がして……)

俺は不安で、とっさに手でスカートを押さえたが、余計に羞恥心が増しただけだった。こうして授業が始まった。

キーンコーンカーンコーン……

ようやく……ランチタイム。お腹が空いた。上着に金が入ってるはずだ。基地では弁当をもらわなかったから、食堂で何か買うしかない。出ようとした時、先ほどの女子が友達を連れて近寄ってきた。

(頼むから、息をさせてくれ!)

「ねえ、三浦さん。さっきはありがとう。私は石川ユイ」彼女は親しげに笑って、隣の活発そうな子を小突いた。「で、こっちが森田メイちゃん。小学校からの友達なの」

隣の女子はエネルギーに溢れているように見えた。

「初めまして、三浦さん! よろしくね!」

俺は必死に笑顔を作って頷き、恥ずかしさで死にそうになりながら応えた。

「あ……うん……。ねえ、食堂に行こうと思ってたんだけど……だから……」

「えっ、そうなんだ! 一緒に行ってもいいかな、三浦さん?」石川が甘い声で聞いた。

なぜそんなに笑顔で……。パニックに襲われた俺は、急に席を立ってしまい、椅子を後ろに倒しそうになった。

「い、いや! 一人で行けるから、ほんとに!」

「本当にいいの、三浦さん?」

俺は挙動不審な動きで彼女たちを避け、悲鳴を上げながら廊下を駆け抜けた。とにかく食堂に行きたかった。幸い、他の生徒の噂話を避けながらたどり着けた。

ザワザワ……ザワザワ……

かなり緊張していた。券売機に金を入れ、カツカレーのチケットを受け取って列に並ぶ。受け取った後、盆を持って、誰にも見られないように全神経を集中させて真っ直ぐ歩き、空いている席に座った。

ふううううっ!

座った途端、長い溜息が出た。緊張のあまりカレーをぶちまけるかと思った……ようやく食べられる。

シュッ!

長いテーブルの数席離れたところに、誰かが座った。慌てて顔を上げる。クラスの男子? シャープペンの奴だ。

なぜここに? このテーブルに座るなんて……正直、一人でいたかったんだ。

(淑女のようにゆっくり食べなきゃいけないんだろ? 本当に面倒くさいな)俺は心の中で毒づきながらスプーンを握った。

モグ……モグ……

その男子が俺に話しかけてきた。驚いたことに、彼は俺との距離を尊重して少し離れた場所に座っていたが、彼がそこにいた理由はこうだった。

「邪魔してごめん、三浦さん」彼は後頭部をかきながら言った。「どこに座ればいいか迷ってて、一人でいる三浦さんが見えたから。いいかな?」

(「はい」って答えるだけでいいよな? ミスしたくない)と思いながら、俺は笑顔で頷いた。

「うん……」

「そんなに肩肘張らなくてもいいよ」と彼は突然言った。「そんなに無理して演じなくていいんだ。授業中、すごく緊張してるみたいだったし、無理に合わせようとしてたから」

ゴクッ!

カレーが喉に詰まりそうになった。まさか……そんなに分かりやすかったのか!? いや、そんなはずはない。俺の秘密を知るはずがない……。なぜそんなことを考えるんだ? 何て答えればいいんだ!?

「え……何のこと?」俺は視線を逸らしてごまかした。

「ただ見たままを言っただけだよ」彼は自分の皿を見ながら笑った。「誰かに似てたから、つい言いたくなっちゃって。お節介だったらごめんね。無理しなくていいよ。君はすごく優しい人だから、三浦さん」

モグ……モグ……

(優しい? 俺がどんな状況にいるか知ったらそんなこと言えないくせに!)俺は心の中で悪態をついた。(好きでやってるわけじゃないんだよ……)

それでも、彼をよく見ると、彼は少し心配そうだった。何か重いものを背負っているような表情だった。二人は黙々と完食したが、彼の言葉は俺の胸に突き刺さった。

「あの、ごめん」盆を持って立つ前に声をかけた。「名前、教えてくれる?」

「俺は黒沢蓮。よろしく」

(何て呼べばいいんだ? 信頼しても大丈夫な相手なのか……? なんで名前を聞いたんだよ!)と後悔した。

「黒沢くん……よろしく。アドバイス、ありがとう」

彼は笑った。

(なんでこんな状況に……。それに、アドバイスをくれたこの「イケメン」は何なんだよ。なんて皮肉なジョークなんだ)と思いながら俺は立ち去った。

俺は盆を返し、周囲の視線に怯えながら、ストレスで胃を痛くしそうになっていた。その時、耳元で電子音が鳴った。

ピッ!

「応答しなさい、トモシビ」俺の首輪の中の、冷徹で高圧的な隊長の声が響く。「今の状況を忘れないで。あんたは目的のためにそこにいるの。地区の『魔女』は見つけたの?」

あ……完全に忘れていた。シャープペンの芯やら何やらで頭がいっぱいだった。なんで俺が魔女探しなんてしなきゃならないんだ。

でも、組織の命令には逆らえない。それに悪いことに、俺の服にはカメラが、首にはマイクが、耳には小さなイヤホンが埋め込まれている。

「いや……まだ、見てない」俺はごまかすように呟いた。

「なら時間を無駄にしないで。休み時間が終わる前に見つけなさい。キャンパスのどこにいるか把握しないといけないの」

通信が切れる。本当に最悪だ。

本当は何も知りたくなかったが、建物内を歩き回るしかなかった。場所もよく分からず彷徨っていると、演劇部の部室が目に入った。

タッタッ……タッタッ……

そっちへ歩いた。裏口が開いていて、中が暗く見える。あの中にいるのか?

キーンコーンカーンコーン……

休み時間の終了を告げるベルが校内に響き渡った。

「クソッ……」俺は小さく毒づいた。

時間だ。初日から変なやつだと思われたくない。急いで教室に戻って、放課後にまた戻ってこよう。

踵を返して走り出そうとした、その瞬間……演劇部の内部から、微かな「何か」が擦れる音が聞こえた気がした。


作者のヒオリヴスです。

ずっと温めていたアイデアを、今回「読み切り(パイロット版)」の形勢で短くまとめて投稿してみました。

ドタバタしつつもちょっと影のある世界観を楽しんでもらえたら嬉しいです!感想やコメントも気軽に残していってくださいね。

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