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『普通になれなかった僕は、社会の中で静かに壊れていった』  作者: こうた
第二章「高校生活:ズレが形になる」

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第48話 「変わり始める毎日」

新学期が始まって二週間。



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二年生の生活にも少しずつ慣れてきた。



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新しい担任。



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新しいクラスメイト。



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新しい時間割。



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最初は緊張していた直人も、 少しずつ笑顔を見せるようになっていた。



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だが。



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一つだけ変わったことがあった。



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昼休み。



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以前なら、 教室を出ると真っすぐ図書室へ向かっていた。



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今も向かう。



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けれど。



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毎日は会えなくなった。



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美月も二年生になり、 新しいクラスで友人が増えていた。



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図書委員の仕事をしている日もあれば、 クラスメイトと昼食をとる日もある。



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図書室に来ない日も増えた。



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「今日はいないか……」



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直人は窓際の席を見て、 少しだけ寂しくなる。



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本を開く。



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文字を追う。



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それでも。



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ページをめくるたび、 扉の開く音が気になってしまう。



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ある日。



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「ごめん、お待たせ」



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聞き慣れた声。



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顔を上げる。



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美月だった。



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「今日は委員会があって」



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少し息を切らしている。



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「大丈夫」



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直人は自然に答える。



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二人は並んで本を読む。



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少し話す。



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以前と同じような時間。



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でも。



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以前とは違うこともあった。



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話の途中で。



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「このあとクラスのみんなと帰る約束してるんだ」



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美月が笑顔で言う。



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「そっか」



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直人も笑う。



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ちゃんと笑えた。



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でも。



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胸の奥が少しだけ痛んだ。



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美月の世界は広がっている。



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友達が増えている。



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それは良いことだ。



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そう思う。



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それなのに。



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自分だけが、 取り残されるような気持ちになる。



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帰り道。



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翔が言う。



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「最近また考え込みすぎじゃないか?」



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「そうかな」



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「直人ってさ」



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翔は少し笑う。



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「一人で答え出そうとする癖あるよな」



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その言葉が胸に残る。



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夜。



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部屋。



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ノートを開く。



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そこに書く。



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『会えない日が増えた。』



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『でも嫌われたわけじゃない。』



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『ただ生活が変わっただけ。』



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書いているうちに、 少しだけ落ち着いてきた。



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頭の中だけで考えると、 不安ばかり大きくなる。



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文字にすると、 少し整理できる。



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布団へ入る。



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直人は思う。



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人との関係は。



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ずっと同じ形ではいられない。



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近づいたり。



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少し離れたり。



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また近づいたり。



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そういうものなのかもしれない。



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まだこの頃の直人は知らない。



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この小さな寂しさが、


「相手の世界が広がることを受け入れる」


という大人への一歩になることを。



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そして。



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美月との関係もまた、


新しい形へと少しずつ変わり始めていることを。



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春の風は柔らかく吹き抜ける。



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直人はその風の中で、


少しだけ成長した自分に気づき始めていた。

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