第27話 「みんなの文化祭と、僕の文化祭」
文化祭が終わった翌週。
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学校にはまだ余韻が残っていた。
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教室では文化祭の話題が続いている。
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「あの時めっちゃ笑ったよな」
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「写真送って」
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「来年もやりたいな」
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みんな楽しそうだった。
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直人も同じ文化祭に参加したはずだった。
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同じ教室にいた。
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同じ準備をした。
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同じ時間を過ごした。
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それなのに。
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まるで違う文化祭だった気がする。
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昼休み。
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実行委員たちが集まっている。
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委員長が言う。
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「お疲れ会やろうぜ」
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みんな賛成する。
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直人もそこにいる。
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だが、 少し遠い。
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心だけが遠い。
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話を聞きながら、 思い出しているのは備品の件だった。
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足りなかった備品。
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固まった自分。
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何も言えなかった時間。
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あの場面だけが、 何度も再生される。
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その時。
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女子委員が言った。
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「直人も結構頑張ってたよね」
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直人は顔を上げる。
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「え?」
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思わず声が出る。
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「資料とかいっぱい作ってたじゃん」
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別の委員も言う。
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「助かったよな」
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「真面目だったし」
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何気ない会話。
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でも直人は混乱した。
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自分の記憶と違う。
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文化祭での自分は。
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失敗した人。
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迷惑をかけた人。
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そう思っていた。
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なのに。
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周りは別の景色を見ている。
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帰り道。
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翔と歩く。
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直人は話す。
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「みんな、あのミス覚えてなかった」
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翔は笑う。
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「だから言っただろ」
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「でも俺は忘れられない」
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「それも分かる」
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しばらく沈黙。
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そして翔が言う。
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「人ってさ」
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「うん」
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「自分の失敗は100倍くらい大きく見えるんだと思う」
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直人は考える。
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確かに。
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もし他人が同じミスをしたら。
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そこまで気にしない気がする。
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でも自分のことになると違う。
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許せない。
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夜。
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部屋。
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机の引き出しを開ける。
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文化祭の資料が入っている。
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本当なら捨ててもいい。
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もう終わったことだから。
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でも捨てられない。
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失敗の証拠に見える。
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そして同時に。
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頑張った証拠でもある。
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その二つが混ざっている。
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布団の中。
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直人は考える。
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文化祭は失敗だったのだろうか。
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成功だったのだろうか。
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答えは出ない。
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ただ一つだけ分かる。
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自分が思っている自分と。
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周りが見ている自分は。
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どうやら同じではないらしい。
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まだこの頃の直人は知らない。
人生を苦しめるものの一つは、
現実の失敗ではなく、
「自分の中で作り上げた失敗像」
であることを。
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そして、
その思い込みを少しずつ手放していくことが、
未来の直人に必要な課題になることを。
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文化祭は終わった。
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だが。
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直人の中の戦いは、 まだ始まったばかりだった。




