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『普通になれなかった僕は、社会の中で静かに壊れていった』  作者: こうた
第二章「高校生活:ズレが形になる」

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第27話 「みんなの文化祭と、僕の文化祭」

文化祭が終わった翌週。



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学校にはまだ余韻が残っていた。



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教室では文化祭の話題が続いている。



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「あの時めっちゃ笑ったよな」



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「写真送って」



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「来年もやりたいな」



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みんな楽しそうだった。



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直人も同じ文化祭に参加したはずだった。



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同じ教室にいた。



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同じ準備をした。



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同じ時間を過ごした。



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それなのに。



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まるで違う文化祭だった気がする。



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昼休み。



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実行委員たちが集まっている。



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委員長が言う。



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「お疲れ会やろうぜ」



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みんな賛成する。



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直人もそこにいる。



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だが、 少し遠い。



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心だけが遠い。



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話を聞きながら、 思い出しているのは備品の件だった。



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足りなかった備品。



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固まった自分。



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何も言えなかった時間。



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あの場面だけが、 何度も再生される。



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その時。



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女子委員が言った。



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「直人も結構頑張ってたよね」



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直人は顔を上げる。



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「え?」



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思わず声が出る。



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「資料とかいっぱい作ってたじゃん」



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別の委員も言う。



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「助かったよな」



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「真面目だったし」



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何気ない会話。



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でも直人は混乱した。



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自分の記憶と違う。



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文化祭での自分は。



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失敗した人。



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迷惑をかけた人。



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そう思っていた。



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なのに。



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周りは別の景色を見ている。



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帰り道。



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翔と歩く。



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直人は話す。



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「みんな、あのミス覚えてなかった」



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翔は笑う。



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「だから言っただろ」



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「でも俺は忘れられない」



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「それも分かる」



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しばらく沈黙。



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そして翔が言う。



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「人ってさ」



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「うん」



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「自分の失敗は100倍くらい大きく見えるんだと思う」



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直人は考える。



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確かに。



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もし他人が同じミスをしたら。



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そこまで気にしない気がする。



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でも自分のことになると違う。



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許せない。



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夜。



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部屋。



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机の引き出しを開ける。



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文化祭の資料が入っている。



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本当なら捨ててもいい。



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もう終わったことだから。



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でも捨てられない。



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失敗の証拠に見える。



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そして同時に。



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頑張った証拠でもある。



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その二つが混ざっている。



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布団の中。



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直人は考える。



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文化祭は失敗だったのだろうか。



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成功だったのだろうか。



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答えは出ない。



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ただ一つだけ分かる。



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自分が思っている自分と。



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周りが見ている自分は。



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どうやら同じではないらしい。



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まだこの頃の直人は知らない。


人生を苦しめるものの一つは、


現実の失敗ではなく、


「自分の中で作り上げた失敗像」


であることを。



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そして、


その思い込みを少しずつ手放していくことが、


未来の直人に必要な課題になることを。



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文化祭は終わった。



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だが。



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直人の中の戦いは、 まだ始まったばかりだった。

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