第24話 「助けてと言えない」
文化祭まで二週間。
---
直人の生活は、 少しずつ限界に近づいていた。
---
朝。
---
目覚ましが鳴る。
---
起きる。
---
学校へ行く。
---
授業を受ける。
---
放課後。
---
文化祭準備。
---
帰宅。
---
課題。
---
睡眠。
---
同じ毎日。
---
普通に見える。
---
誰が見ても、 問題なく過ごしているように見えた。
---
でも。
---
直人の中では、 余裕が少しずつ削れていた。
---
ある日。
---
実行委員の作業中。
---
資料の確認をしていると、 委員長が言った。
---
「直人、この部分お願い」
---
机の上に追加の資料。
---
直人は見る。
---
今抱えている仕事。
---
まだ終わっていない。
---
頭の中で計算する。
---
終わる時間。
---
家に帰る時間。
---
睡眠時間。
---
全部考える。
---
そして。
---
「分かった」
---
また言っていた。
---
言った後で後悔する。
---
どうして断れないのか。
---
自分でも分からない。
---
帰り道。
---
翔と歩く。
---
「最近、寝てる?」
---
突然聞かれる。
---
直人は少し黙る。
---
「寝てるよ」
---
嘘だった。
---
正確には、 寝る時間はある。
---
でも眠れていない。
---
頭が止まらない。
---
翔は直人を見る。
---
「本当に?」
---
その一言で、 少しだけ揺らぐ。
---
「……ちょっと疲れてるかも」
---
初めて言えた。
---
ほんの少しだけ。
---
翔は笑わない。
---
「だと思った」
---
「え?」
---
「最近、ずっと無理してる顔してる」
---
直人は驚く。
---
自分では隠しているつもりだった。
---
「でも大丈夫」
---
また言う。
---
翔は少し困った顔をする。
---
「直人」
---
「うん」
---
「大丈夫って言う前に、本当に大丈夫か考えた方がいい」
---
その言葉。
---
胸に刺さった。
---
今まで何度も言ってきた。
---
大丈夫。
---
平気。
---
問題ない。
---
でも、 それは本当に自分の気持ちだったのか。
---
夜。
---
部屋。
---
机の上には、 まだ終わっていない作業。
---
いつもなら始める。
---
でも今日は、 手が止まった。
---
疲れた。
---
その感覚を、 初めて認めた。
---
自分は疲れている。
---
頑張りが足りないからではない。
---
ただ疲れている。
---
それだけだった。
---
まだこの頃の直人は知らない。
限界を認めることは、 諦めることではないということを。
---
そして、 本当に助けを求めるためには、
まず自分自身が 「助けが必要な状態だ」 と認める必要があることを。
---
その夜。
---
直人は初めて、
「もう少し頑張ろう」
ではなく、
「少し休みたい」
と思った。
---
それは小さな変化だった。
---
しかし、 直人にとっては大きな一歩だった。




