第18話 「会議で消える声」
文化祭実行委員になって二週間。
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直人は毎日のように放課後の会議へ参加していた。
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最初の頃よりは流れが分かってきた。
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誰が中心人物なのか。
誰が意見をまとめるのか。
誰が場を盛り上げるのか。
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少しずつ見えてくる。
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だが、 見えるようになったからといって、 参加できるようになったわけではなかった。
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会議室。
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長机が並ぶ。
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十数人の実行委員。
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議題は文化祭当日の企画だった。
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「射的やろうぜ」
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「いや予算足りない」
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「じゃあ別の案」
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意見が飛び交う。
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直人にも考えがあった。
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前日に調べた案。
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予算も計算した。
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必要な材料もまとめた。
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ちゃんと準備してきた。
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発言しようとする。
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だが。
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誰かが話し始める。
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直人は止まる。
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話が終わくのを待つ。
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別の誰かが話し始める。
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また止まる。
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気づけば十分経っている。
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手元のメモだけが残る。
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そして会議終盤。
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司会役が言う。
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「他に意見ある?」
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静かになる。
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今だ。
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直人は口を開く。
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「あの――」
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その瞬間。
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別の男子が言った。
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「あ、俺ある」
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会議の視線が一斉にそちらへ向く。
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直人の声は消える。
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誰も悪くない。
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割り込まれたわけでもない。
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ただ、 少しだけ遅かった。
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会議終了。
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メモは使われなかった。
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直人はノートを閉じる。
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帰り道。
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足取りが重い。
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準備した意味があったのだろうか。
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考えた意味があったのだろうか。
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家へ帰る。
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部屋に入る。
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机の上には、 昨日遅くまで作った資料がある。
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予算表。
必要備品。
実施案。
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全部そのまま残っている。
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誰にも見せていない。
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夜。
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布団の中。
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直人は思う。
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自分の考えは間違っていたのか。
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いや。
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言う前に終わった。
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それが苦しい。
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失敗したなら納得できる。
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否定されたなら諦められる。
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でも今回は違う。
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存在しなかったことになった。
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それが一番つらかった。
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まだこの頃の直人は知らない。
声の大きさや発言速度が評価されやすい環境では、
「考えている人」より、
「先に言える人」が有利になることを。
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そして、
その現実に直面した時、 自分の価値そのものを否定されたように感じてしまうことを。
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ただこの夜は、
誰にも届かなかったメモを握りしめながら、
静かに天井を見つめ続けていた。




