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『普通になれなかった僕は、社会の中で静かに壊れていった』  作者: こうた
第二章「高校生活:ズレが形になる」

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第15話 「普通になりたい」

高校へ入学して数か月。



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直人の中には、 ずっと消えない願いがあった。



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それはシンプルだった。



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「普通になりたい」



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ただそれだけだった。



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特別になりたいわけじゃない。



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人気者になりたいわけでもない。



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勉強で一番になりたいわけでもない。



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ただ、 みんなと同じように生きたい。



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みんなと同じように笑いたい。



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みんなと同じように話したい。



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みんなと同じように疲れずに学校へ行きたい。



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それだけだった。



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昼休み。



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教室では笑い声が響いている。



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誰かが恋愛の話をしている。



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別の誰かがゲームの話をしている。



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自然に会話が流れていく。



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直人はその様子を見る。



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羨ましい。



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ただ羨ましい。



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彼らに悪意はない。



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自分を仲間外れにしているわけでもない。



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でも、 同じ場所にいても違う世界に見える。



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翔が言う。



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「どうした?」



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直人は少し考える。



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そして言う。



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「普通になりたいなって」



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翔は黙る。



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しばらく何も言わない。



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直人は少し後悔する。



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変なことを言ったかもしれない。



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そう思った時だった。



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翔が言う。



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「普通って何?」



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直人は答えられない。



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考えたことがなかった。



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ただ、 周りの人みたいになりたかった。



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でも、 その“周り”が何なのかは説明できない。



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翔は続ける。



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「俺も普通じゃないと思うぞ」



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「え?」



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「みんな何かしら変なところあるだろ」



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笑いながら言う。



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直人には信じられなかった。



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自分だけが違うと思っていた。



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でも、 翔は違う景色を見ているようだった。



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帰り道。



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その言葉が頭から離れない。



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普通って何だろう。



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本当に存在するのだろうか。



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それとも、 自分が勝手に作った理想なのだろうか。



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夜。



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布団の中。



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天井を見つめる。



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今までずっと、


普通になれない自分を責めていた。



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でも今日初めて、


“普通そのもの”を疑った。



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もちろん、 答えは出ない。



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明日になれば、 また同じように悩むかもしれない。



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それでも。



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少しだけ。



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ほんの少しだけ。



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自分を責める力が弱くなっていた。



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まだこの頃の直人は知らない。


この問いが、 やがて人生を変えるほど大きなテーマになることを。



---


そして、 「普通になれなかった」のではなく、


「自分に合わない普通を追い続けていた」


と気づく日が来ることを。



---


ただこの夜は、


答えのない問いを抱えながらも、 少しだけ穏やかな気持ちで眠りについた。

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