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『普通になれなかった僕は、社会の中で静かに壊れていった』  作者: こうた
第二章「高校生活:ズレが形になる」

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第10話 「できないことより、理由が分からないこと」

直人は、 失敗することよりも苦しかったことがあった。



---


それは、


“なぜ失敗したのか分からないこと”


だった。



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テストで間違える。



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勉強不足なら分かる。



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練習が足りないなら分かる。



---


でも、 直前まで確認したことを忘れる。



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何度も見た場所を間違える。



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その理由が、自分でも説明できない。



---


ある日の数学。



---


先生が黒板に問題を書く。



---


周りが解き始める。



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直人も解く。



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途中までは合っている。



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でも、 最後の小さな計算で間違える。



---


先生が言う。



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「途中までできてるのに、もったいない」



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その言葉。



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普通なら励まし。



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でも直人には違って聞こえた。



---


“また最後で失敗した”



---


そこだけが残る。



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昼休み。



---


友達が言う。



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「直人って頭悪くないのに不思議だよな」



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悪意はない。



---


むしろ褒めている。



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でも、 その“不思議”という言葉が引っかかる。



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自分でも不思議だから。



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どうしてこうなるのか、 自分が一番知りたい。



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放課後。



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帰り道。



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直人は考える。



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もっと注意すればいい?


もっと確認すればいい?


もっと集中すればいい?



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でも、 全部もうやっている。



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それなのに起きる。



---


家へ帰る。



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部屋に入り、 ノートを見る。



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自分なりに努力した跡がある。



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書き込み。


チェック。


付箋。



---


ちゃんとやろうとした証拠。



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なのに結果だけ見ると、 “できない人”になる。



---


夜。



---


布団の中。



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直人は初めて思う。



---


「自分の努力って、方向が違うのかな」



---


でも、 その答えをくれる人はいない。



---


まだこの頃の直人は知らない。


人にはそれぞれ得意な処理方法や苦手な処理方法があることを。



---


そして、 見えない部分の困難は、 本人の努力だけでは解決できない場合があることを。



---


ただこの夜は、


答えのない疑問だけを抱えながら、 静かに朝を待っていた。

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