第10話 「できないことより、理由が分からないこと」
直人は、 失敗することよりも苦しかったことがあった。
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それは、
“なぜ失敗したのか分からないこと”
だった。
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テストで間違える。
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勉強不足なら分かる。
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練習が足りないなら分かる。
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でも、 直前まで確認したことを忘れる。
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何度も見た場所を間違える。
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その理由が、自分でも説明できない。
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ある日の数学。
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先生が黒板に問題を書く。
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周りが解き始める。
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直人も解く。
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途中までは合っている。
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でも、 最後の小さな計算で間違える。
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先生が言う。
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「途中までできてるのに、もったいない」
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その言葉。
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普通なら励まし。
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でも直人には違って聞こえた。
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“また最後で失敗した”
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そこだけが残る。
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昼休み。
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友達が言う。
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「直人って頭悪くないのに不思議だよな」
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悪意はない。
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むしろ褒めている。
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でも、 その“不思議”という言葉が引っかかる。
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自分でも不思議だから。
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どうしてこうなるのか、 自分が一番知りたい。
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放課後。
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帰り道。
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直人は考える。
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もっと注意すればいい?
もっと確認すればいい?
もっと集中すればいい?
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でも、 全部もうやっている。
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それなのに起きる。
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家へ帰る。
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部屋に入り、 ノートを見る。
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自分なりに努力した跡がある。
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書き込み。
チェック。
付箋。
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ちゃんとやろうとした証拠。
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なのに結果だけ見ると、 “できない人”になる。
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夜。
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布団の中。
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直人は初めて思う。
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「自分の努力って、方向が違うのかな」
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でも、 その答えをくれる人はいない。
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まだこの頃の直人は知らない。
人にはそれぞれ得意な処理方法や苦手な処理方法があることを。
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そして、 見えない部分の困難は、 本人の努力だけでは解決できない場合があることを。
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ただこの夜は、
答えのない疑問だけを抱えながら、 静かに朝を待っていた。




