第9話 「頑張る方向が違うと言われる」
直人は、 頑張っていなかったわけではない。
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むしろ、 人より頑張っているつもりだった。
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忘れないようにする。
間違えないようにする。
迷惑をかけないようにする。
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毎日、そればかり考えていた。
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ある日の提出物。
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直人は何度も確認した。
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名前。
日付。
ページ。
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全部見た。
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「今回は大丈夫」
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そう思った。
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翌日。
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先生が返す。
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「ここ抜けてるよ」
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直人は紙を見る。
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本当に抜けている。
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でも、 自分では確認した記憶がある。
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“見たはずなのに”
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その感覚が怖かった。
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放課後。
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友達が言う。
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「直人って、もっと適当にやればいいのに」
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その言葉に戸惑う。
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適当に?
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それができないから、 何度も確認している。
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でも結果は同じ。
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夜。
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母が言う。
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「もっと効率よくやったら?」
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直人は考える。
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効率。
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それも分からない。
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丁寧にやると遅い。
急ぐとミスする。
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じゃあどうすればいいのか。
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答えが見つからない。
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布団の中。
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直人は思う。
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“努力の量じゃないのかもしれない”
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でも、 それ以上考えると怖くなる。
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もし努力では変えられないなら。
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もし自分のやり方そのものが違うなら。
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その先を考えたくなかった。
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まだこの頃の直人は知らない。
努力は、 量だけではなく方法との相性も大きいことを。
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そして、 合わない方法で頑張り続けると、 自信そのものが削られていくことを。
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ただこの夜は、
「もっと頑張らなきゃ」
そう思いながら、 すでに限界に近い自分に気づかないまま眠った。




