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『普通になれなかった僕は、社会の中で静かに壊れていった』  作者: こうた
第二章「高校生活:ズレが形になる」

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第5話 「“気づかれないまま置いていかれる”」

直人は、 置いていかれることに気づくのが遅かった。



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気づいた時には、 もう少し離れている。



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その繰り返しだった。



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ある日の昼休み。



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いつものように教室の中は賑やかだった。



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直人は席に座ったまま、 周りの会話を聞いている。



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ゲームの話。


誰かの噂。


次の授業の話。



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内容は分かる。



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でも、 どのタイミングで入ればいいかは分からない。



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少しだけ動こうとする。



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その瞬間、 別の話題に切り替わる。



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また入れない。



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それが何度か続く。



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やがて、 “入ろうとする動き”自体が減っていく。



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放課後。



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グループが自然にできている。



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その中で笑い声が続いている。



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直人は少し離れた場所で片付けをしている。



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誰かがふとこちらを見る。



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でもすぐに会話に戻る。



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その一瞬だけが残る。



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“見られたのに入れなかった”



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家へ帰る。



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母が聞く。



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「最近どう?友達できた?」



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直人は少し考える。



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「……話す人はいる」



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でもそれは、 “友達”とは少し違う気がする。



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夜。



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布団の中。



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今日の教室を思い返す。



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気づかれなかったわけではない。



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でも、 強く関わることもなかった。



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ただ少しずつ距離が開いていく。



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まだこの頃の直人は知らない。


人間関係は、 関わらない時間が長くなるほど自然に遠ざかることを。



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そしてその変化は、 誰かが悪いわけではなく、 静かに進んでいくことを。



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ただこの夜は、


教室のざわめきの中で“自分だけ薄くなっていく感覚”を抱えながら、 静かに目を閉じていた。

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