第5話 「“気づかれないまま置いていかれる”」
直人は、 置いていかれることに気づくのが遅かった。
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気づいた時には、 もう少し離れている。
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その繰り返しだった。
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ある日の昼休み。
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いつものように教室の中は賑やかだった。
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直人は席に座ったまま、 周りの会話を聞いている。
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ゲームの話。
誰かの噂。
次の授業の話。
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内容は分かる。
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でも、 どのタイミングで入ればいいかは分からない。
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少しだけ動こうとする。
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その瞬間、 別の話題に切り替わる。
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また入れない。
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それが何度か続く。
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やがて、 “入ろうとする動き”自体が減っていく。
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放課後。
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グループが自然にできている。
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その中で笑い声が続いている。
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直人は少し離れた場所で片付けをしている。
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誰かがふとこちらを見る。
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でもすぐに会話に戻る。
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その一瞬だけが残る。
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“見られたのに入れなかった”
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家へ帰る。
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母が聞く。
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「最近どう?友達できた?」
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直人は少し考える。
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「……話す人はいる」
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でもそれは、 “友達”とは少し違う気がする。
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夜。
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布団の中。
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今日の教室を思い返す。
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気づかれなかったわけではない。
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でも、 強く関わることもなかった。
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ただ少しずつ距離が開いていく。
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まだこの頃の直人は知らない。
人間関係は、 関わらない時間が長くなるほど自然に遠ざかることを。
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そしてその変化は、 誰かが悪いわけではなく、 静かに進んでいくことを。
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ただこの夜は、
教室のざわめきの中で“自分だけ薄くなっていく感覚”を抱えながら、 静かに目を閉じていた。




