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『普通になれなかった僕は、社会の中で静かに壊れていった』  作者: こうた
第二章「高校生活:ズレが形になる」

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第3話 「グループという壁」

高校の教室には、すでに“形”ができ始めていた。



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仲のいいグループ。


よく話す人たち。


いつも一緒にいる人たち。



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それは明確なルールではない。


でも、見えない線のように存在していた。



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直人は、その外側にいた。



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完全な孤立ではない。



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でも、どこにも属していない。



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中途半端な位置。



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それが一番曖昧で、一番居心地が悪い。



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ある日の昼休み。



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数人のグループが机をくっつけて弁当を食べている。



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笑い声が混ざる。



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直人は自分の席で弁当を開く。



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その距離は数メートルしかない。



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でも、その数メートルが遠い。



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ふと、視線が合いそうになる。



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一瞬だけ目をそらす。



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“今入れば間に合うのか”



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そんな考えが浮かぶ。



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でも、 足が動かない。



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その間に、 話題は別の方向へ流れていく。



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もう入り口はなくなっている。



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放課後。



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廊下で誰かが言う。



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「今からカラオケ行くけど来る?」



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別の誰かに向けた言葉。



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直人は聞いている。



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でも、自分は対象ではないと分かる。



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もし誘われたとしても、 どう返せばいいか分からない。



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だから最初から動かない。



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家へ帰る。



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母が言う。



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「高校ってもっと友達増えると思ってた?」



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直人は少し考える。



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「……うん」



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でも現実は違う。



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増える人は増え、 固まる人は固まる。



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その中で止まる人もいる。



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夜。



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部屋の中。



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グループの中に自然に入れる人と、 そうでない人の違いが分からない。



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努力の差なのか。


性格なのか。


それとも別の何かなのか。



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直人には判断できない。



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ただ一つだけ分かる。



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自分は“入る前提で動けない側”だということ。



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まだこの頃の直人は知らない。


人間関係の初期形成には、 速度とタイミングが強く影響することを。



---


一度遅れると、 その後の入り口が減っていくことを。



---


ただこの夜は、


教室のざわめきを思い出しながら、 静かに眠れない時間を過ごしていた。

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