第3話 「グループという壁」
高校の教室には、すでに“形”ができ始めていた。
---
仲のいいグループ。
よく話す人たち。
いつも一緒にいる人たち。
---
それは明確なルールではない。
でも、見えない線のように存在していた。
---
直人は、その外側にいた。
---
完全な孤立ではない。
---
でも、どこにも属していない。
---
中途半端な位置。
---
それが一番曖昧で、一番居心地が悪い。
---
ある日の昼休み。
---
数人のグループが机をくっつけて弁当を食べている。
---
笑い声が混ざる。
---
直人は自分の席で弁当を開く。
---
その距離は数メートルしかない。
---
でも、その数メートルが遠い。
---
ふと、視線が合いそうになる。
---
一瞬だけ目をそらす。
---
“今入れば間に合うのか”
---
そんな考えが浮かぶ。
---
でも、 足が動かない。
---
その間に、 話題は別の方向へ流れていく。
---
もう入り口はなくなっている。
---
放課後。
---
廊下で誰かが言う。
---
「今からカラオケ行くけど来る?」
---
別の誰かに向けた言葉。
---
直人は聞いている。
---
でも、自分は対象ではないと分かる。
---
もし誘われたとしても、 どう返せばいいか分からない。
---
だから最初から動かない。
---
家へ帰る。
---
母が言う。
---
「高校ってもっと友達増えると思ってた?」
---
直人は少し考える。
---
「……うん」
---
でも現実は違う。
---
増える人は増え、 固まる人は固まる。
---
その中で止まる人もいる。
---
夜。
---
部屋の中。
---
グループの中に自然に入れる人と、 そうでない人の違いが分からない。
---
努力の差なのか。
性格なのか。
それとも別の何かなのか。
---
直人には判断できない。
---
ただ一つだけ分かる。
---
自分は“入る前提で動けない側”だということ。
---
まだこの頃の直人は知らない。
人間関係の初期形成には、 速度とタイミングが強く影響することを。
---
一度遅れると、 その後の入り口が減っていくことを。
---
ただこの夜は、
教室のざわめきを思い出しながら、 静かに眠れない時間を過ごしていた。




