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『普通になれなかった僕は、社会の中で静かに壊れていった』  作者: こうた
第二章「高校生活:ズレが形になる」

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第1話 「環境が変わっても、自分は変わらない」

中学が終わり、高校に入った。



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制服が変わる。

通学路が変わる。

知らない人が増える。



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でも直人の中身は変わっていなかった。



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最初の教室。



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誰も知らない。


誰も自分を知らない。



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一瞬だけ、 「リセットされたかもしれない」と思う。



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でもすぐに気づく。



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“自分の中身はそのまま残っている”



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朝のホームルーム。



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自己紹介。



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順番が回ってくる。



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名前を言う。



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趣味を少し言う。



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それだけのはずなのに、 頭が一瞬止まる。



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「よろしくお願いします」



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それで終わる。



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周りは普通に笑う。


普通に流れる。



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でも直人の中では、 すでに少し遅れている感覚がある。



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昼休み。



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グループが自然にできていく。



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高校は中学より速い。



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誰と誰がつながるかが、 一瞬で決まっていく。



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直人はその外側にいる。



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無理に入ろうとはしない。



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入れないというより、 “入り方が分からない”に近い。



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放課後。



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廊下を歩く。



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知らない声が多い。



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知っている人はいないわけじゃない。



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でも、 まだ「関係」ができていない。



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その曖昧さが落ち着かない。



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家へ帰る。



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母が聞く。



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「高校どうだった?」



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直人は少し考える。



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「……普通」



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またこの言葉になる。



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でも本当は違う。



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“普通に見えるだけで、普通ではない”



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夜。



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部屋の中。



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中学と同じように、 また新しい場所で同じ感覚が始まっている。



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環境は変わったのに、 自分のズレはそのままだった。



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まだこの頃の直人は知らない。


環境を変えても、 特性そのものは消えないことを。



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そして、 「リセットされたように見える環境」ほど、 内側のズレが際立つことを。



---


ただこの夜は、


新しい場所の静けさの中で、 変わらない自分を感じながら眠りについた。

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