第49話 「積み上がる“違和感の正体”がわからない」
直人は、 最近になって一つの感覚を持つようになっていた。
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「何かがずっとズレている」
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でもそれが何なのかは分からない。
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ある日の教室。
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授業は普通に進んでいる。
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会話もある。
笑いもある。
注意もない。
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表面上は何も問題がない。
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でも直人の中では、 ずっと小さな違和感が続いている。
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“ここで笑うのが遅い” “ここで黙るのが変かもしれない” “さっきの返事は合ってたのか”
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一つ一つは小さい。
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でも消えない。
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昼休み。
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友達の会話に入ろうとする。
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でも、 タイミングが分からない。
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入れないまま、 話題が変わる。
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また外側に戻る。
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放課後。
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誰かが言う。
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「最近ちょっと元気ない?」
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直人は止まる。
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自分では普通にしているつもりだった。
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でも“普通”の基準が分からない。
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家へ帰る。
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母が言う。
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「なんか考えすぎじゃない?」
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直人は黙る。
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その通りかもしれない。
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でも、 止め方が分からない。
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夜。
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布団の中。
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今日一日を振り返る。
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何が正しくて、 何が間違っていたのか分からない。
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ただ、 ずっと違和感だけが残っている。
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まだこの頃の直人は知らない。
この「正体の分からない違和感」が、 実は複数の小さなズレの集合体であることを。
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一つ一つは些細でも、 積み重なると“世界そのものの違和感”として感じられることを。
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ただこの夜は、
説明できない違和感だけを抱えながら、 静かに眠れない時間が続いていた。




