第47話 「助けを求めるタイミングが分からない」
直人は、 「助けて」と言う場面が分からなかった。
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どこまでが自分で頑張る範囲で、 どこからが助けを求めるべきなのか。
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その境界が曖昧だった。
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ある日の授業中。
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課題が出る。
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問題は理解できる。
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でも途中で止まる。
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考えが散らばって、 一度戻れなくなる。
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時間だけが進んでいく。
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周りは進んでいる。
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直人は遅れている。
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“聞いたほうがいいのか”
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そう思う。
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でも、 聞くタイミングが分からない。
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今は忙しそう。 今は静かすぎる。 今は変な空気かもしれない。
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考えているうちに、 時間が過ぎる。
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結局、聞けない。
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そのまま提出時間になる。
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できた部分だけ出す。
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「ここまででいいの?」
先生に言われる。
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直人はうなずく。
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本当は違う。
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できなかっただけ。
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昼休み。
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少し頭が疲れている。
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でも休み方が分からない。
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誰かに相談することもない。
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“こんなことで助けを求めていいのか”
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その疑問が先に来る。
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放課後。
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友達が言う。
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「分かんないとこあったら聞けばいいじゃん」
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簡単な言葉。
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でも直人には難しい。
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“聞く”という行為そのものが、 一つの判断になってしまう。
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家へ帰る。
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母が言う。
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「分からないなら聞きなさい」
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直人は黙る。
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それができない理由を、 うまく説明できない。
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夜。
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布団の中。
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今日のことを思い返す。
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助けを求めなかった場面。
助けを求められなかった場面。
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どちらも同じように残る。
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まだこの頃の直人は知らない。
「助けを求める判断」は、 認知の負荷や過去経験に強く影響されることを。
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そして、 “迷っている間に機会が過ぎる”ことが、 繰り返しのパターンになっていくことを。
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ただこの夜は、
言えなかった「聞けばよかった」という後悔だけを抱えながら、 静かに眠りへ落ちていった。




