学校生活は楽じゃない2
階段をおり、玄関で靴を履く。
「行ってきまーす」
玄関から声を出すとリビングにいる母から、行ってらっしゃい。と返って来た。
「さて、行きますか…」
気の入らない言葉を出し、扉を開く。
「おはよう、剣士くん♪」
扉を閉めた。
目の前に悩みの種が立っていた。なんで扉の前で待ってんだよ、こえーよ。普通家の前とかでしょ。
「ちょっと、なんで閉めるんですか~、開けてくださいよ~剣士く~~~ん」
「やめろ騒ぐな静かにしてくれ」
扉の向こうで波島波瑠が騒ぎ始めた。閉めたばかりの扉を開き落ち着かせる。どーどー
「家の前で騒ぐな、そして俺の名前を大きい声で叫ぶな。奴らに俺の居場所がばれてしまうだろう。」
落ち着かせるどころか俺の落ち着きがない。朝イチであった幼なじみに中2病の攻撃。
「はいはい、そんな人たちはいませんよ。しっかりしてくださいね?それより、おはようございます、剣士くん♪」
効果はいまいちのようだ。
「お、おう…。お……はよう…。」
「はい!おはようございます♪」
なぜこの子はそんなに中2病に対応できるんだ、普通キモすぎてはなれていくはずだぞ?もしかして俺のこと好きなの?自意識過剰過ぎてキモいな。中2病と相まって二重にキモい。
「それじゃあ、行きましょう!」
そういうと波島波瑠は180度くるっと回り、歩き始めた。置いてかれないように続いて歩き始める。置いてかれてもいいんじゃね?
「剣士くん出てこないかと思ったよ~」
歩き始めてすぐ波島波瑠はそんなことを口にした。俺がどれだけ葛藤したかも露知らず、のんきなやつめが!俺も出たくなかったわ!でも、家族の目が気になるからな!!何て言えるわけもなく、
「一度交わした契りは死んでも守る、それが俺の流儀だ。」
自分で言ってて悲しくなる。なに言ってんだ俺
「そんなに重く考えないでよ~、一緒に学校行くだけでしょ?」
「……」
それが俺にとっては死活問題だ。
俺は中2病でコミュ障なんだ、ましてや女の子に耐性なんかあるわけない。そこんとこ考慮してほしい。
しかしいったいなぜ俺を登校になんて誘ったんだろうか。全然想像つかん。仕方ない。聞くしかないか。
落ち着いて、深呼吸するんだ。すーーはーー、すーーはーー、ちゃんと言うことを考えてから聞こう。えっと、
なんで一緒に登校するなんて誘ったんだ?
これでよし、いける。がんばれ俺
「な、なぁ、波島」
よ、よしいい感じ…だ?
「ジトーーーー」
波島波瑠がジト目でこっちを見ている、なぜだ、俺の言葉は普通だったはず。どこ間違ったというのだ。わからん。
「ジトーーーー」
まだこっちを見ている。だからなんでだ。ジト目を向けられているからには俺に理由があるはずだ。思い出せ、記憶をたどれ、必ずそこに答えがある。
昨日は波島波瑠とどんな話をした。
学校で居眠りしていた後にそれじゃ変わらないよと釘を刺され、1人で帰ると子連れの親子に変態扱いされ、雨にあい家まで急いだ。家に帰ると妹にバカにされ、部屋を漁られた。ろくな日じゃないな。
そのあと夜ご飯を食べ、母に使われて肉じゃがを届けた。届けた先の波島波瑠の家で中2病を炸裂させ、波島母に大笑いされた。デザート?として出されたあんころもちを食べ、帰り際に明日一緒に学校に行こうと誘われ…
そうだ、あの時、
「その波島ってのも禁止!波瑠ってよんでください!!」
って言われたんだ。確かそのはずだ。
つまり、今ここで、俺に、波瑠と呼べというのか?なぜだ、そこになんの意味がある。俺にメリットはない、なら波島波瑠はなぜ呼ばせたがる。理由はなんだ。俺の事が好きだから呼んで貰いたいなんて気持ち悪い発想は捨てておいて、波島波瑠と俺との関係性を考えろ。俺たちの繋がりには何があった。
ただ家が近くて、小中高同じで、隣の席で、ご飯届けたりする幼なじみなだけだ。十分すぎるなこれは。
名前で呼ばせたい理由は分かったが呼ぶのにはすごい抵抗がある。だって恥ずかしいから。なんで今になってなんだ、まったくわからんぞ。
だが呼ばなければこの気まずい空気のまま学校まで行かなければならない。
いやまてよ、このまましゃべらない方向で学校までいけるんじゃないか?
「そのまましゃべらないなんてダメですからね」
0,1秒でばれた。どうして俺の考えてることがわかるんだ、エスパーなのか。今日から君はエスパー波島だ。
俺の考えがばれて退路は絶たれた。これはもう波瑠と呼ぶしかないのか?くそっ、俺はどうすりゃいいんだ。
横目で波島波瑠を確認すると、分かりやすいぐらいほっぺを膨らませぷんぷん怒っていた。なんだそれかわいいな。
「そんなに怒るなって波瑠、可愛い顔が台無しだぞ?」
何て歯の浮くような台詞は言えるわけがない。そんな事言えるのは※イケメンに限る※である。俺はそんな事は言わない、俺はそういう人間だ。言えないの間違いでした。
仕方あるまい、言うしかないのか。意を決して俺は口を開く
「は、………波瑠」
「はい!なんですか!」
眩しすぎる笑顔で返事が返ってきた。なんだその笑顔は!その笑顔は反則過ぎる…!!
「い、いいいいや、なん、なんでもない!!!!!!」
そんな状態で会話を続けられるか!眩しすぎるその笑顔に俺は再び口を閉じる。
やばい、恥ずかしすぎるぞこれは。女の子の名前呼ぶってとんでもなく恥ずかしいな。お前らも覚えといた方がいいぞ。
俺が名前を呼んだおかげか波島波瑠はとても機嫌がいい。鼻歌なんか歌っちゃってるし、足取りも軽くなってるようで
「歩くペース速いよ…」
ついていくのが大変だ、もっとのんびり行きたいです。
結局鼻歌歌いっぱなしの波島波瑠についていくだけで学校についた。今日も長い長い学校での1日が始まる。




