常に頭を使え5
更新回数が少ないなら一回の量で勝負!
今回はかなりながったらしくなってしまいました(笑)
初めての方も、今まで読んで下さっていた人も目に止まったら読んでください。
既に1年は通っている学校だが改めてよく見てみると色々新鮮に見えてるくる、…
何て事はない。
新しく見える、発見があるならば常日頃から周囲を観察していないということである。つまり頭を使えていない証拠だ。
いつ終わりがくるかもしれぬ人生の、有限の時間を無為に浪費しているわけである。それほど勿体無いことはない。
俺ならそうはしない。
人生において出会う人、物、全ての情報は自分にとって意味がある。一見全く意味が無いように見えるものも、もしかしたら今後人生のどこかにおいて役に立つかもしれない。
この「かも」というのが大事であると俺は考えている。
その情報が役に立つ、立たないというのは結果論に過ぎないで、自分の目で、その情報の確固たる否定材料を確認することがない限り、情報の可能性に0はない。極論を言えば意味がないと分かったことも意味があるとも言える。全てが終わった後にやっと、情報の価値は決まってくるわけだ。どんな情報も役に立つ「かも」しれないなら集めておいて損はない、むしろ集めるべきである。森羅万象あらゆる物は良くも悪くも何かで繋がっている。
だから俺はその1つ1つを取りこぼさない。常に周囲に気を配り、観察し、それが自分にどのような影響を及ぼすか、メリットデメリットはなんなのか。情報を集め、精査し、必要なものを選択する。どんな時でも最善で最良の一手を打てるように俺は生きている。この世界で勝ち残るために…!! どうもお騒がせしました。
それにしても、新しく見えるどころか所々劣化しているところが目につく。塗装が剥がれてたり、床に何故か緩やかな凹凸があったり、壁に細いひび割れが入ってたり、ちょっとこの学校耐震性とか大丈夫なの?不安になってきたよこの学校。僕らの街に地震が来たらどうすんだよ。
そんな事を考えながらふらふら歩いて既に3階も降りて、2階にたどり着いている。
立ち止まり、窓の外を見ればまだ日は沈んでおらず、煌々と輝いている。耳を澄ませばグラウンドの方から部活動をする生徒達の声が聞こえる。
生徒達が去っていった学校の中は静けさが広がっていた。その静けさも全くの無音ではなく、少しばかりの雑音がある。完全な無音だと逆に落ち着かないものだ。でもまぁ俺は無音ところにいると物凄い耳鳴りで結局無音ではなくなるのだが。
しかし放課後の人のいない学校というのも存外悪くない。いつも光の速さ(適当)で学校から帰っていたせいで知ることもなかった。
たまにはこういう時間に図書室で読書に耽るのもいいかもしれない。いつも静かな図書室がより静かに、だけど無音ではなく心地よい静けさが広がっているに違いない。そんなところにいるとその内永劫図書館に接続しちゃいそう。それはないですね!
そろそろ帰っても大丈夫な頃合いだろうと、止めていた足を一歩踏み出そうとした時、
ドクン
と心臓が跳ねた。
言い表すことの出来ない猛烈な不安感が襲ってくる。ここはだめだ、居てはいけないと本能が告げる。
(落ち着け、まず落ち着け…俺は何に恐れている?)
何をしている?
決まってる、家に帰るんだ。
何故すぐに帰らなかった?
俺を追いかける奴を撒くためだ。
誰が追いかけてきた?
桐崎美千留だ、生徒会……の……
自問自答をしている内に自分の言葉に違和感を覚えた。
桐崎美千留を差し向けたのは生徒会長の西京鈴花だ。西京鈴花も俺のことを探している可能性を考慮し、ルートを選びここまで来た。何も問題はないはずだ。あとは玄関に向かい、家に帰ればいい。
それでいいはずなのに不安が消えない。何かが引っ掛かっている。
生徒会の面々はどこにいる?
そんなもの生徒会室にいるだろう。
なら、今自分が立っているところはどこだ?
はっとして周りを見渡す。
ここは普段ほとんど来ない場所。なのに既視感がある。俺は最近ここに来た……。例えば…昨日…とか…
俺は昨日の出来事を思い出し、そうであると分かっているが上を見上げ確認をする。教室のドアの上に掛けてある、その教室がなんなのかを指し示すプレートには
『生徒会室』
「……………」
自分の浅慮を嘆くしかない。
だが慌てることはない。ここから静かに離れればいいだけ。それにそこに居るとも限らない。すぐに立ち去ってしまーー
「おやおや、遅いと思ったら来てるじゃないか。美千留はいないのか?自分だけで来るとは殊勝な心がけだね、剣士」
立ち去ろうとした時、ガラガラガラとドアが開かれ生徒会長こと西京鈴花が姿を表した。
「……………………」
(最悪のタイミングだな…)
ここはなんて言えばいいのだろうか。どうすればここを切り抜けられるんだ。
西京鈴花はどうしたんだ?と言わんばかりの顔でこっちを見ている。
「入り口で止まってどうしたんですか会長さん?」
生徒会室の中からひょっこり波島波瑠が顔を出す。お前もおったんかい。
「いや、剣士が自分からきてくれたんだ。しかし何も言ってくれなくてねぇ、会長は悲しいよ」
そう言った西京鈴花は両手で顔を覆い、仰々しく泣き真似を始めた。しかも指の隙間からこっちを見る目が笑ってる。殴りたい、この笑顔。
「泣かないで下さい会長さん!もう!女の子を泣かせるなんて酷いです剣士くん!!」
「い、いやいや………」
プンスカと怒ってきたが、どう見ても泣いてないだろ?嘘泣きって気付けよ波島波瑠。隣にいる西京鈴花なんかもう笑いすぎてプルプルしてるじゃんか。ちくしょう笑ってんじゃねぇよこの野郎。
でもそんな事を言ってても状況は変わらない。今考えるのはこの状況を打開する策だけだ。
しかしどうする?ここから逃げ切れるのか?
目の前3メートルに西京鈴花がいる。その隣に波島波瑠。波島波瑠のことはこの際気にしなくてもいい。問題は西京鈴花だ。こいつがどの程度動けるのかが未知数だということ。俺が完全に逃げ切って玄関から出ることが出来ないと、玄関を封鎖されて学校の中で鬼ごっこが再開される可能性が高い。そうなればじり貧だ。
(一か八か、やるしかない…)
意識を現実に引き戻し、周囲を確認する。目の前の2人は、
「ちょっと!?聞いてるんですか剣士くん!!」
波島波瑠がまだなにか言っていた。
悪い、全然聞いてなかったわ。
その横でプルプル震えながら笑っていた西京鈴花が不意に顔をあげ、こちらの方を見て何か納得したような笑みを浮かべる。恐らく俺の思惑を読んでいるのだろう。バレバレだからすぐわかるとおもうけどね。
そこで俺も目をそらさず口角をあげ、笑みを返す。
(上等だ、やってやるよ…)
俺はこの状況に不思議と胸が高鳴っていた。
それはきっと、普段は絶対に起きないマンガや小説のような展開を望んでいたからかもしれない。
何の変哲もない平凡な日常ではなく、毎日が刺激のある非日常を謳歌したい願望。実際に今までだとありえなかった事が起きている。俺は今、リアルが充実している。リア充だ!それはちがうか。
ていうか非日常を望んでたらだめじゃない?ここにきて中2病悪化してるな。
お馬鹿な話は置いておいて、勝負の時間だ。
フーッと息を吐き呼吸を整え、1歩目からフルスロットルでスタートの準備をする。
(さぁ!行こーー
「逃げられちゃった…どうしよ会長に怒られる…」
行こうと目的の方向の視線の先に桐崎美千留が肩を落としとぼとぼ歩いてくるのが目に見えた。桐崎美千留ははぁ、とため息をついて顔を上げたら俺のことを見つけたようで、はっとした後しめしめとした顔になり、しかし俺の目の前にいる会長見つけて再びしゅんとした。忙しいヤツだなぁ。
いやそんな場合ではない。
(なんで今出てくるんだ…!!)
いよいよどうにもならない状況に俺は歯噛みする。
どうする?どうする!?
あんなところに居られては玄関までたどり着くことは100パーセント不可能だ。流石の俺でもかわしきれない。まさに、万事…
「万事休す、とでも思っているんだろう?剣士」
「………はっ、それはどうかな…」
心を読まれたことに対する動揺を必死に取り繕う。
「その通りなんだよ、だって剣士お前は……」
そう言った西京鈴花を刹那、見失った。
確かに目の前にいた西京鈴花を、見失った。
(え…?)
そして
「私から、逃げられないんだからな…」
「~~~~~~~ッッッ!?!?」
見失った西京鈴花の声は俺の耳元で囁かれた。
呼吸が浅くなる。息がつまる。状況が理解出来ない。嫌な汗が全身から吹き出す。
なんで、どうして、なんで。
気付けば床に座り込んでいた。
いや座らされた、と言うべきだろうか。俺の右肩には西京鈴花の手が添えられていた。押さえ込まれた訳ではない。ただそっと手を置かれた、それだけで。
ゆっくりと顔を上げて西京鈴花を見る。西京鈴花もこちらをみてにこやかに微笑んでいる。その微笑みはとても慈愛に満ちた表情で美しく、
「わかったか、剣士」
かけられた言葉は、背筋が凍るほど冷たかった。
「ははっ…ははは…」
口からは乾いた笑いが漏れるだけ。
「よし、生徒会を始めようか!それと美千留、桜華を探してきてくれ」
「分かりました」
いつの間にかこっちにまで来ていた桐崎美千留に指示をだし、1人颯爽と生徒会室に戻っていった西京鈴花の声音にさっきの冷たさはもうなかった。
「どうしたんですか剣士くん?すわりこんで?」
「いや、なんでもない…」
「そうですか?ならいいんですけど…」
何故か納得できてしまった波島波瑠も生徒会室に入っていった。突然座り込んでるヤツをみて、なんでもないで納得出来るのは凄い。
それに見てないなら説明してもわからないだろうし、たぶん見てても今起きたことが理解出来ないだろう、馬鹿だから。
流石にいつまでも座りっぱなしにもいかないから俺も立ち上がる。すると隣に桐崎美千留がやってきて、
「会長には逆らわない方がいいですよ」
俺にしか聞こえない程度の小声で呟いてきた。
「あぁ、まったくだ…」
「私も…そうでしたから」
それだけ言うと桐崎美千留は星ノ宮桜華を探しに行った。
さて、俺も生徒会室入るか…。ここで帰るほど俺も腐ってはいない。それにここで帰ったら本気で西京鈴花に殺られかねない。しばらくは西京鈴花の前で大人しくしていよう。




