家に帰ると事件が起きる 3
「ただいま帰りました~」
母が帰って来たようだ。俺の母は専業主婦ではなく、パートで働きに出ている。父は単身赴任で家にいない。現状3人暮らしというわけだ。パートに家事にと忙しい母はいつもつかれている。疲れの大部分は俺ら兄妹だろう、中2病が2人だからな。ごめんね母さん。俺は今、脱中2病に頑張ってるけどピークの時は凄まじいことになっていた。中2病の発症理由の父はおらず、思春期のくそ面倒くさい時期の中2病が2人、しかも重度の。本来ブレーキになるであろう妹も中2病で母さんはいつもあたふたしていた。そして母さんはいつしか俺達の事を諦めてしまった。ほんとにごめんね母さん。しかし今考えるとあの父の嫁なら耐性があるはずなんだが。
「剣士、夜宵、ご飯もう少し待っててくださいね」
「「はーい」」
俺と夜宵は声を揃えて返事をした。母は基本的に口調が丁寧だ。全然怒らないし、怒ったところを見たことがない。だから逆に不満が溜まりまくってるんじゃないかと心配になる。たまには心労を取り除こうと決意し俺も下におりる
「か、母さん。な、な、なにか手伝うことある?」
あー、緊張した。すげぇ緊張した。親子の会話なのに何でこんな緊張すんの?中2病出さないようにしただけで全然しゃべれないし、かみかみになったし。すると
「…!!!!」
母さんがすげー驚いてる。なんか傷つく。でもそりゃそうか、ずっと中2病やって来た俺が普通の口調で、しかもお手伝いしたいと言ってきたのだから。やだ恥ずかしい俺。
「そ、そうね!じゃあ剣士はお洗濯ものたたんでくれる?」
「あぁ、了か……じゃなくて、わかったよ母さん」
危ない危ないナチュラルに中2病を出すところだった。もっと気を付けなければ。母さんの心労が増えてしまう。その母さんと言えば
「剣士が、…あの剣士が……」
といいながら少し泣いていた。俺はどんだけ親を心配させてんだ。本当に情けなくなってきた。俺、頑張るよ母さん。よし、母が泣いてることは忘れておこう。それが紳士というもの。
洗濯物を畳んでいると、慌ただしい足音が聞こえてきた
「おかあさんおかえりー!!!」
夜宵だ。もっと静かに階段をおりることできないのかな?
「はい、ただいまです」
掃除をしていた母も夜宵ににっこり返事を返す。しかし夜宵はなぜ降りてきたんだろうか?いつもはおりてこないが。
「お兄ちゃんがお母さんのお手伝いしてる!!」
少し恥ずかしくも、いいだろ別に、と反論しようとした時
「………クックック、遂に母上の眷属となったか我が半身よ」
返事をする前に中2病発動。なぜ今中2病を発動した、妹よ!母さんの顔が暗くなっちゃったじゃないか!!ここで俺が中2病を発動するわけにはいかない。ここは1つ冷静に
「なぁ、やよ…
「なら私もお手伝いするー!」
「「!!!」」
なん……だと……?
あの妹が…夜宵が…お手…伝い…だと?
「お母さん!なにすればいい!?」
「!!!」
母は驚きすぎて声もでない。俺も同じく。妹はかわいく首をかしげ返事を待っている。母はたっぷり3秒フリーズしてから、
「そ、それならね!夜宵はお風呂洗ってきてくれる!?」
ようやく言葉が出せたようだ。
「はーーい!!!」
妹は颯爽と風呂場に向かっていった。どうしたんだ妹よ、何があった。あいつがお手伝いするなんて…かなり珍しい、いや、俺も同じようなもんか。そう思いつつ母を見ると、
「あの剣士が…あの夜宵が…私の、私のお手伝いを……」
泣いていた。
とても泣いていた。ポロポロ泣いていた。どれだけ苦労を強いてきたのか…本当にごめんねお母さん。夜宵のぶんまで謝っちゃう。絶対に脱中2病するぞ、と心に誓うと
「よし、今日は夜ご飯頑張っちゃいます!!!」
母さんがとても元気に宣言してる。元気になって何よりです。するとこちらを振り返り
「剣士はなにかたべたいものある?」
まさか、夜ご飯のリクエストが来るとは。母は今までにないぐらい上機嫌だ。しかし夜ご飯か、悩ましいな。王道のハンバーグに唐揚げ…カレーにシチュー…うーーん、ここはやっぱり
「俺は肉じゃががいいな」
俺の好物ランキング第1位だ。昔から母の肉じゃがが好きだ。ちなみに2位はさばの味噌煮だ。3位からは特にない。さっきのハンバーグや唐揚げも好きだが肉じゃがとさばの味噌煮には遠く及ばない。
「なら、肉じゃがにしますね!」
母は嬉しそうに言うとキッチンに入っていった。俺も洗濯物をたたんでしまうか。
「「ごちそうさまでした!」」
「はい、おそまつさまです。」
肉じゃがを食べ終わり一息つく。
いつもより美味しく感じられた、母の愛だろうか。マザコンみたいだからやめよう。食器を片付け部屋に戻るとするか。しかし
「剣士~、お母さんね、夜ご飯気合い入りすぎちゃって肉じゃが作りすぎたんです。だから波島さん家にお裾分けするので持っていってくれますか?」
「なっ………」
なにぃぃぃぃ!?!?!?なぜ俺が波島の家に!?
「もう、お電話してあるからすぐ持っていってくださいね♪」
それだけ言うとタッパに詰められた肉じゃがをおいて皿洗いにいってしまった。
「えーー…」
これは断るに断れなくなったぞ。
なぜか俺と波島波瑠はそこまで仲良くないのに波島母と俺の母はとてもなかがいい。母の七不思議の1つだ。その2はない。
「行くしかないのか…」
渋々、嫌々了承して俺は家を出た。
あ、タッパ忘れた。




