学校生活は楽じゃない17
「なかなかに面白い子達だよ」
校門を出て歩く月見里剣士に波島波瑠を生徒会室の窓から見送る。
考えていた生徒会役員の人員補充、どうしようかと悩んでいるところ千条先生が2人つれてくると言った。それがまさかつれてきた2人の理由が中2病のためだとは驚いた、しかももう1人はおまけだという。千条先生は一体何を考えているんだか。
確かに、この生徒会に入ればおそらく剣士の中2病問題の解消になるだろう。だがおそらく、剣士はその事を理解できてない。千条先生がどうしてかを説明しなかったんだろう。あの人も人が悪い。
問題は剣士が、いつそれに気がつき理解するかということだろう。さすがにそこまで馬鹿ではないと思うがいささか心配でもある。剣士本人も治したいと思っているようだがいつになるか。私としては今の剣士も見てて面白いから問題はないんだけどね。
「明日からはけーくんにはーちゃんもいて、賑やかになりますわね♪」
「あぁ、それに剣士にちょっかいを出すのは楽しそうだしな」
どうやら桜華も剣士と波瑠のことが気に入っているようだ。うむうむ、この様子ならすぐに馴染めそうだ、が
「波島さんはいいですけど、月見里さんはどうかと思います」
ここに嫌がっているものが1人、美千留だ。全く何が気に入らないというのかね。
「あらあら、みーちゃんはお嫌いですか?」
「き、気に入りません!」
桜華に尋ねられるも気に入らないと…。全く、わがままなのは治ってないのか?
「美千留~?君はそんなこと言えるのかな~??」
「そ、それは……言えたことじゃ…ないです……けど…」
「そんなに嫌がらなくてもいい、すぐに美千留も仲良くなれるさ」
たぶん、同属嫌悪なんだろう。自分と似たところがあるから思うところがあるのじゃないだろうか。だからこそ私は仲良くしてほしいものなんだがね。
「そうですわみーちゃん、はじめから嫌っていてはだめですわ」
「うっ……わかりました…」
桜華にもお叱りを受け渋々納得はしたのかな?していることにしておこう。これ以上突き詰めたところで何にもならない。
「それなら私達も帰ろうか」
「そうですわね」
「はい!」
私のかけた言葉に2人は快く返事をして席を立つ。日常の何気ないやり取りではあるが私はこの感じが心地いい。
明日からは剣士と波瑠が加わって私達の非日常が始まることになるだろう。しかしそれは気が付けばいつしか日常へと変わっていく。当たり前じゃないことが当たり前になっていく。違和を感じていたものが感じなくなる。それは剣士と波瑠もおなじこと。
人は新しい環境に適応していく生き物だ。だが、私が言う適応というのは肉体的なものではない、内面的なもののことだ。肉体の変化など、80年程しかない人生では起きることはほとんどない。だが内面的なもの変化は今、この瞬間に起きるし起こせる。自分の意思によって。
私達3人と共に過ごし、関わっていくことで剣士が何を感じ、理解し、どう適応していくことができるのか。そのサポート役として連れてこられた波瑠にそれが理解できるのか。どちらかが理解しても、片方ができていないようなら変わることはできないことだろう。
それこそ私が教えればすぐに理解して実行できる。だがそれではだめだ。自分で理解することが大切なんだ。だって、見つかる答えは必ずしも1つではないからな。
「すーちゃん?帰るんじゃありませんの?」
廊下から聞こえる桜華の一言で思考が途切れる。考え事に集中しすぎたせいで、声をかけた窓際から動いていなかった。
「あぁ、すまない、今いくよ」
私はもう一度外を眺める、外には剣士と波瑠の影はもうない。
鞄をもち、桜華たちの待つ廊下へと向かう。
「さぁ、帰りましょう、すーちゃん、はーちゃん♪」
「はい!」
「あぁ」
私達3人は生徒会室を後にした。
さて、明日からはどんな日常が始まるかな。楽しみだよ剣士、波瑠。




