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ルミナス魔法学園物語 ~『私はお姉さまとゆるゆる学園生活したいだけです!』~  作者: 月羽


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第68話 婚礼の儀 -運命の扉-

 

 並ぶ篝火に照らされた岩肌の洞穴、複数の靴音がコツコツと木霊する。

 靴音の主は、清楚可憐な装束を纏った少女達の列。

 篝火に照らされた横顔には仄かな薄化粧が乗っている。

 彼女達は愛らしさの中に緊張を乗せた表情で

 無言のまま岩肌の洞穴を進んで行く…

     …

   …

 …岩肌剥き出しの壁は、篝火の灯で陰影が強く浮かび上がり

 不気味さと同時に神秘さえ感じさせます。

 二列になって進んでいるけど、幅は横に四人…五人程は広がって歩けるほど。

 天井までは竜《ドラゴン》が大きく伸びを出来そうな程に高い。

 

 この広さと高さなら竜《ドラゴン》が暴れる事だって出来ると思う。

 実際、この通路は御伽噺に出てくる竜《ドラゴン》の住まう洞窟の様な雰囲気があります。

 でも、もし今、突然竜《ドラゴン》が現れたりしたら……

 

 …いけないいけない、思考がどんどん変な方向へと進んでいます 

 少し落ち着きましょう、その方が良いです。

 すぅはぁ。小さく呼吸を繰り返し、気持ちと心を整える。

 

 呼吸を繰り返す

 

 呼吸を繰り返す

 

 うん、落ち着いた。落ち着いたけど……

 代わりに今度は緊張が膨れ上がる。

 先程までの妙な想像も、きっと緊張が生み出していた物。

 

 やはり落ち着かない…… 

 胸の鼓動が早い……

 隣を歩く『彼女』はどうなのだろう?

『彼女』の顔が思い浮かぶと、そっと瞳を動かし左隣を見る。

 

 私の視線より少し高い場所、凜と輝く青緑石の瞳がじっと前を見詰めている。

 頭の左右では、金の縦ロールの髪が前後に揺れ。

 楚々とした口元は緩く結ばれている。

 時折、強めに吐かれる息の音が私の耳へ届く。

 彼女もまた私と同じに緊張しているのでしょうか?

 

 聞きたい。でも今は無理、場に居る誰もが黙したままだから。

 ここでは黙さなくてはいけない、そんな気空気がここにはあるから。

 緊張感にも似た、厳かな空気。

 それに、この通路の先がどうなっているのか私達は知らない。

 でも間違いなく、ここは学園の敷地内…のはず。

 そして、この先に『儀式』の場があるはず。

『はず』と言うのは、生徒会会議室で見た『あの虚像』が記憶に焼き付いているから……

 ………

 ……

 …

 フィール会長の呼びかけで生徒会室へと集められた『私達』

 私ことシルファ…そして左隣を歩くライラ

 さらに、一年生各教室の代表ペアの子達。合わせて八人。

 集められた目的は『婚礼祭』のメインイベント『巡礼の儀』を行うため。

 

『巡礼の儀』とは『魔王《アルカナロード》』との契約を女神に報告し祝福を得るための、謂わば婚姻報告の様な物。

 以前にも説明したけれど、遠く古い時代では『魔王《アルカナロード》との契約は神聖な物で、『魔王《アルカナロード》』の婚姻を意味していました。

 それだけ『魔王《アルカナロード》』の契約するのは特別な事で、当時は誰でも彼でも出来る様な物ではありませんでした。

 

 それが私達の様に儀式一つで出来る様になったのは、先人達のおかげ。

『魔王《アルカナロード》』の存在を研究し、知り。そして『魔王《アルカナロード》』達の寛容さを知った先人達の存在が在ったからこそ。

 …とは言っても、やはり『魔王《アルカナロード》』は魔法を使う者の人生において特別な存在で。

 だから『魔王《アルカナロード》』の感謝を忘れてはいけないと。古の慣習を祭りと言う形にしたのが『婚礼祭』……

 

 …と、学園で学んだ事からイメージされるのは、厳かで神秘溢れる儀式。

 女神の元へ赴く巡礼の旅路の再現……

 私も白き衣装を纏って、厳かに巡礼の道を進んで行くのだと思っていました…

 

「ただ再現するだけではつまらない!伝統は大事だ!しかし!

 私は!そこに!私達の作る新たな伝統を加えたい!」

 

 これは生徒会会議室でのフィールさんの言葉。

 いつもの様に身振り手振りを交えるフィールさんの姿も焼き付いているが

 それよりも、彼女の後ろに浮かぶ巨大な構造物の虚像の方がより強く焼き付いている。

 

 投影の魔法で宙に浮かぶ『石造りの構造物』

 縦横斜めに入り組んだ形状はどう見ても厳かな巡礼の旅路とは無縁な物。

 無縁と理解出来たのは、私の知識が答えを導き出したから

 その中でも私の大好きな『絵物語』の知識が導き出した

 幼き日に絵物語がくれた、少女達の冒険譚の記憶……

 その記憶が示す答えの通りなら、宙に浮かぶあの構造物はきっと……

 ………

 ……

 …

「…ルファさん……」

「…え?」

 誰かが私を呼んでいます。

 どうやら、また考え事をしながらぼぉっとしていた様です。

 声に我に返れば私を見詰める青緑石の瞳。ライラの瞳。

 

「シルファさん?わたくしをじっと見ても何も出ませんわよ?」

「え?あ…少しぼんやりしていたみたい」

「ぼんやり?はぁ…まったく」

 私の言葉を聞けばライラははぁっと大きく溜め息をしてから

 前を見る様に顎で促す。

 やはり苛立っている様に見える。

 こんな状況でペアの相手がぼんやりしていたら呆れるのも仕方が無い。

 私は小声で「ごめん」と謝ると、視線を彼女の示す先へとやる。

 

「!?」

 巨大な扉です。見上げるしかない石造りの重厚で巨大な扉。

 多分一枚岩。そこに浮彫でうねる風の様な複雑な文様が彫り込まれ

 各所に赤や青、緑の飾り石が埋め込まれています。

 一目見ただけで特別な扉だとわかります。

 本当にそれこそ竜《ドラゴン》でも封じていそうな扉。

 

「皆さん…覚悟はよろしいですか?」

 

 私達を先導していた上級生のお姉様が私達を見渡しながらそう告げた。

 その瞬間、私達は理解しました。

 はじまるんだ。この扉を通り抜けた先にあるんだ。

 

 ごくり。

 

 誰の物かわからないが、唾を飲み込む音が聞こえた。

 もしかしたら私の出した音かもしれない。

 緊張しすぎて、訳がわからない。

 

「行きましょう」

 声と共に私の左手に何か触れる。

 手です。この手は左隣を歩いていた『彼女』の手。

 私は驚きながら『彼女』の顔を瞳を見た。

 

「恐れる物なんてありませんわ」

 視線を向ければ、彼女の…ライラの笑みがありました。

 凛とした中に強さ秘める笑顔。 

 

『やっぱりライラって凄いな』

 そんな事を思いながら、小さく頷くと

 私は絡まる指に指を任せライラの手を握りました。

 それと同時、ゴゴゴと重い音を響かせながら扉が開き始める

 

 中央から左右に割れ、ゆっくりとゆっくりと扉が開いていく。

 緊張で握り合う手と手に力が入る。

 痛い程だけど、今はそれがありがたい。

 

 緊張しているのは私だけで無いとわかるから……

 

 この先に行くのが私だけで無いとわかるから……

 

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

いよいよ婚礼の儀が始まります。

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