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ルミナス魔法学園物語 ~『私はお姉さまとゆるゆる学園生活したいだけです!』~  作者: 月羽


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第64話 祭の時間ー4

 

 

 見下ろせば虹色の硝子玉を撒いた様な眺めが広がっている。

 高くから見る屋台村は彩り様々で、その間を行き交う人々は小人の様で。

 つい先程まで私達もあの色の一部で、あの中を歩いていたと思うと

 なんだか、不思議な気持ちになってきます。

 

「魔女の箒って素敵ですね…♪」

「ふふっ、喜んでもらえて嬉しいわ」

 私は今の気持ちと共に小さく呟けば、セレーネお姉さまの弾む声が返って来る。

 私とお姉さまは『魔女の箒』で宙を舞っている。

 ニース先輩から逃げ出すためだったが、今はニース先輩に感謝。

 こんな素敵な光景を見る事が出来たのだから。

 

 それに今日は空も賑やかです。私達以外にも多くの『箒』が飛び回っている。

 屋台で使う食材や飲み物、的当てやくじ引きの景品を運ぶための『箒』。

 近くの街や村から駆け付けた、元学生達の『箒』。

 そして、時折打ち上がる『光彩華』の閃き。

 見上げる事の多い『光彩華』だけど。この空においては横から見る物であると知りました。

 素敵な出来事はここで終わらない。

 

「シルファ、見て」

「え?あ…すごい……」

 セレーネお姉さまの言葉で視線を向け、私は大きく目を開いてしまった

 打ち上がった『光彩華』へ一直線に向かう黒き一群。

『光彩華』で描かれた輪の中を、魔女の箒に乗った生徒達が次々と潜り抜けて行く。

 一人、二人、三人、四人、五人!

 生徒達は潜り抜けると、星の角の方向へとそれぞれ散って行く。

 一瞬の沈黙の後、下の方からどっと拍手が沸き起こった。

 

『光彩華』は一瞬の彩り。だから描かれた瞬間に潜り抜けなくてはいけない

 それを成した彼女達、如何に箒を操る技量が高いかよくわかる。

「お姉さま、箒を乗りこなすとあんな事も出来る様になるのですね」

 感動覚めぬまま、うわ言の様に小さく言葉にする。

「ええ、箒は移動手段としても便利だけど……

 あんな風に操作の技量を高める子もいるし、極限の速度を目指す子もいるわ」

「速度を…?」

「五つの街をまたぐ箒のレースもあるのよ?」

 箒レース?しかも街を五つも巻き込んでの催しだなんて、凄すぎる。

 想像もつかず、吐息が零れる。魔女の箒って奥深い……

 

 

「空も落ち着いたみたいだし、どこかに降りましょうか?」

「はい!」

 空の散歩は素敵だけど、ずっとこのまま飛んでいる訳にはいかない

 お姉さまもお疲れになると思うし。

 だから、どこが良いかとぐるりと地上を見渡す。

 

「…あそこがいいわね…?」

「あそこ?…あ、屋上庭園ですか?」

 お姉さまが指と視線で示したのは地上では無く校舎の上。

 この学園校舎の最上階のさら上には、屋根では無く庭園がある。

 いわゆる空中庭園。私達は屋上庭園と呼んでいるが。

 賑やかで満ちる学園の中で、あそこだけは静寂を保っている。

 一ヶ所くらい、静かに休める場所があっても良いと言うことなのでしょう。

 そんな訳で、箒は屋上庭園へと降りて行く……

 ………

 ……

 …

 私は今、緊張に挟まれています。

 左右から流れてくる魔雫《マナ》がぶつかり合って渦を成す

 その中心で揉まれ揉まれ、ぐるぐると回る様な感覚。

 偶然の出会いから生まれた結果とは言え、なぜこんな事に?

 

 そんな事を思いながら横目で左を見る。

「んー……♪」

 セレーネお姉さまが青空を見上げ、鼻歌を口づさんでいました。

 楽しそうです、この状況を楽しんでいるみたいですね。

 そんなお姉さまも素敵です。

 微風に揺れる黒髪もお綺麗で、つい見惚れてしまいます。

 でも、こんな顔を見られてしまったら、また遊ばれてしまいそうなので

 視線をもう一方へと向ける事にする。

 

 静かに視線を動かし、右に座る『彼女』を見る。

『彼女』は視線を俯き加減に庭園の花を見詰めていました。

 こちらは金の髪を微風に揺らしている。

 普段の『彼女』も綺麗と思うけど、今日はどこか儚げな気がする。

 その理由はきっと私とお姉さま。

『彼女』は私とお姉さまに深い関わりのある人物……

 それはライラ、『彼女』とはライラ。

 

 屋上庭園へと降り立った私とお姉さまは、庭園に佇むライラと遭遇してしまった。

 朝以降、姿が見えないと思ったらこんな所にいたのですね。

 ライラにとって、私とお姉様は複雑な存在である事はわかっている。

 だからと、私とお姉さまの姿を確認するや、言葉も無しに逃げ出そうとするのはどうかと思います。

 そんなライラをお姉さまは『闇の触手』で捕縛してしまった。

 曰く「逃げたら捕まえたくならない?」…だ、そうです。

 お姉さまって、こう言う方なのです。

 

 

「…あ?」

「………」

 ライラと目が合いました。

 青緑石の瞳に宿る凜とした輝きが私を照らす。

 やはり、ライラの瞳は綺麗。

「…!」

 でも、それは一瞬だけ。唇を噛むとライラは花へと目を逸らしてしまった。

 金の縦ロールが頭の動き合わせ揺れて跳ね、私の鼻先を撫でて行く。

 くすぐったい、鼻がむずむずとします。

 あ、この気配は……

 

「くちゅん!」

 

 やはり、くしゃみが出てしまいました。

 手布を出す余裕も無かったから、庭園に私のくしゃみが盛大に響いてしまった。

 顔を上げるのも恥ずかしい。

 恥ずかしいけど、とりあえず鼻を拭かないと……

「え…?」

 

「シルファ…?」

「シルファさん?」

 声と共に私の左右から白のレースの手布と、薄い青の手布が同時に差し出される。

 それぞれライラとお姉さまの手布。

 

「あ、ありがとうございます…?」

 手布を見ながら礼の言葉を言ってみるも、顔を上げるのが少し怖いです。

 同時に差し出した二人がどんな顔をしているのか……

 それでも顔を上げ順に顔を見れば、お姉さまもライラもお互いの顔を見ながら驚いた様な不思議な顔をしている。

 この状況は一体なんでしょうか?

 お二人が何を考えているかわからない、わかりません。

 私は……

 

 どうしよう?と考えているうち、また鼻がむずむずとしてきました。

 これは。慌てて、二つの手布を手に取ると口と鼻を押える。

「くちんっ!」

 小さくくしゃみ。今度は二重となった手布が小さく抑えてくれた。

 でも結局、差し出された手布を二つ共使ってしまいました。

 

「えっと、後で洗ってお返ししますね…?」

「別によろしいですわ、ごきげんよう」

 ライラはそう言うと立ち上がり、振り向かずに歩き去ろうとする。

「え?」

 

 普段の私なら何も言えず「あ?」と小さく口から出るが。

 それよりも先に「え?」が出てしまった。

 理由は背を押されたから。お姉さまが私の背を押したから。

 

「お姉さま…?」

「行きなさい、今の貴女は彼女のパートナーなのでしょう…?」

「はい!」

 お姉さまとの時間は大切だけど、気持ちがすっきりしないまま

 儀式に挑む事は出来ない。

 それに、今日の儀式は『あの日』の全てを解決するためにも重要。

 

「お姉さま、終わったら全部話しますね…?」

「ええ……」

 頷き合うと、私はライラの背を追いかけた。

 

 

ここまで読んでいただきありがとうなのです

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