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ルミナス魔法学園物語 ~『私はお姉さまとゆるゆる学園生活したいだけです!』~  作者: 月羽


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第63話 祭の時間ー3

 

 屋台の時間はまだまだ続いている。

 今日は婚礼祭、お祭りだから。

 周囲を見回せば、生徒以外の学園の外からの来訪者の姿も増えてきました。

 日頃、街でお世話になっている方々の姿も見えるし。

 見慣れぬ民族衣装を纏った人達の姿もちらほらと見える。

 普段は生徒や関係者以外立ち入り禁止のルミナス魔法学園も

 今日、この日は特別に解放され、来訪者を歓迎している。

 

 でも、疚しい心で学園の奥や寮へと侵入しようとする不埒な輩には……

 罠《トラップ》があるので注意した方が良いでしょう。

 学園長が設置した罠《トラップ》なので、魔法的なかなりの高レベルらしいですよ?

 

 とにかく!今日は特別。

 この日のために皆、準備に準備を重ねてきた

 だから、楽しまないのは勿体ない。

 その気持ちが学園全てに満ちている事がわかる。

 声に音に熱気、そして生徒達の顔。

 学園を漂い舞う魔雫《マナ》すらも歓喜の力に満ちている。

 

 で、私はと言うと……

 確かに、私の中にはまだ代表としての不安はあります。

 不安はあるけど……

 

「…シルファどうしたの…?」

 

 隣を歩くセレーネお姉さまからの声。

「あ?いえ、お姉さまとこうやって歩いているのが楽しくて」

 お姉さまの声に自然と笑みが返る。

 お姉さまと二人で屋台村を歩いていれば、不安な気持ちは心の奥に隠れてしまう。

 そうです!私は今、お姉さまと一緒に歩いています!

 しかも!給仕服姿のお姉さまとですよ?

 こんな素敵で幸せな事はめったにありません。

 

 最初に見た時は本当に驚いて、じっくりと見る余裕は無かったけど。

 黒を基調とした給仕服はお姉さまの髪色にも合っているし

 お姉さまが身に着けると、胸元のタイと袖のフリル

 それらが演出する調和はドレスの様なたおやかな高貴ささえ醸し出す。

 そんな姿についつい、見惚れてしまいます!

 はぁ、お姉さま…本当にお美しいです。

 

「シルファ、今度はあれを食べてみる?」

「…え?は、はい!」

「ふふっ…ぼんやりさんはダメよ?」

 言うと、お姉さまはにこにことしながら私の鼻を突きました。

 え?これはどう言う意味なのでしょうか?

 ………

 ……

 …

「…辛い…辛いですお姉さま……」

「シルファの舌はまだまだお子様ね?」

 私の惨状にお姉さまはクスクスと笑みを浮かべると

 手に持った『包み』を一口齧りました。

 

 私達が食べているのは『カチソラト』

 薄く焼いた穀物の生地に肉や野菜を挟み包んだ地方料理。

 ミルクを発酵させたソースをかけて食べる事が多いらしいけど……

 これに使われているのは、辛目のソース!

 そして私は辛いのが苦手。

 涙目の私に、お姉さまはニコニコと楽しそうです。

 

「楽しい、昨年のお祭りより楽しいわ……」

「…昨年のですか?」

「ええ……」

 お姉さまは小さく頷くと目を閉じる。

 きっと、昨年の事を思い返しているのでしょう。

 

 昨年のお姉さま。私がまだこの学園に居ない一年前のお姉さま。

 気になります。気になって仕方が無い。

 お姉さまが私の知らない一年間をどの様に過ごされたのか……

 それは、事ある毎に私が思う事。 

 

「…気になる?」

 すっと目を開くと、お姉さまは私を見詰め問い掛ける。

「気になります!」

 勿論、即答です。

 顔にも出ていたと思うし、ここで遠慮するのはむしろ勿体ないです!

 としても、聞く事の出来る機会が来たと言うのなら、私は逃しはしません。

 

 この学園に入学し、お姉さまと再び過ごす様になり、それなりの時間が経った。

 でも、お姉さまはあまり自分の過去を語ってくれない。

 とは言っても、元々お姉さまは自分をあまり語らない方。

 だから、今に始まった事では無い。

 一緒に暮らし過ごしていた時には、語らずとも見る事で知る事が出来ました。

 でも、今のお姉様と私には一年の空白の時間がある。

 だからだから、気になってしまう。

 

「そうね…少しくらいなら……」

「はい!」

「いいですね!」

 私は期待の眼差しを向けます、瞳のキラキラをてんこ盛りにして。

 …あれ?ふっと気付く。今、別の声が混じった様な?

 

「…ニース何してるのかしら?」

「あ、ニース先輩?」

「はい!ニースさんですよ!お二人が一緒に歩いていると聞き及んだので

 急ぎ駆け付けた次第であります!

 ああ、私の事は気にせずにお二人だけの世界を作ってください。

 私はその様子を纏め、記事にしたいだけですから!」

 

 相変わらずの啄木鳥の様に言葉が飛んできます。

 ルミナス魔法学園新聞部の部長さんこと、ニース先輩です。

 言葉毎にポーズまで決めて、いつも以上に自己主張が激しい。

 こんなニース先輩がここに居る理由はただ一つ。

 お姉さまと私の取材をしたい、そう言う事なのですよね?

 

「…お姉さま、どうしますか…?」

「んー、そうね……ふっ…」

 お姉さまは悩む素振りを見せたが、それは一瞬だけ。

 直ぐに口元が笑みの形へと変わりました。

 あ、これは……

 わかります。これは、お姉さまが悪い事を考えている顔です。

 でも、一体何をしようと言うのでしょうか?

 

「今日は特別な日だから…ね?」

 お姉さまはウインク一つすると私の手を握り、もう一方の手を天に掲げる。

 すると、ヒュンっと言う鋭い風切り音が聞こえ。

 直後、私の両足は地面から離れた。

 

 飛んでる?私飛んでます!

 見下ろす風景が屋台村がニース先輩の姿が

 どんどん小さくなっていく。

 

 そして見上げればお姉さまが何かを握っている。

『魔女の箒』です。女魔法使いが空を飛ぶための道具。 

「ニース!そう言う事だから…ごきげんよう」

「セレーネ!ああ…もう!こうなったら貴女達に逃げられた事を記事にする!

 いいよね?このくらいしてもいいよね?」

「お好きにどうぞ!」

 小さなニース先輩が肩を落とすのが見える。

 ニース先輩も片手に『箒』を握り締めていたけど。

 追跡は諦めた様です。

 

 ううん、もしかしたら気を使ってくれたのかもしれませんね。 

 

 

ここまで読んでいただきありがとうございます

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