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ルミナス魔法学園物語 ~『私はお姉さまとゆるゆる学園生活したいだけです!』~  作者: 月羽


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60/70

第60話 始まります!

 

 四角い蒼天に極彩色の輝弾が打ち上がる

 一個、

 二個、

 三個、

 次々と打ち上がる

 輝弾は頂点まで達すると

 地を揺るがす轟音と共に爆ぜた

 ドン、ドン、ドン

 

 爆ぜた輝弾は天を画布に巨大な形を描きます

 大輪の花、煌めく星、遊札の紋様

 飛翔する竜に、えっと…あれは猫?こっちは犬?

 

 とにかくです

 打ち上がった輝弾は様々に形を変える

 輝弾は学園の研究生と三年生が共同で打ち上げている魔法の華。

 

 光彩華。単純に華火と呼ぶ人もいます。

 原理的には魔法の矢(マジックアロー)の応用。

 魔雫《マナ》の籠った精霊石を使う方法もあるが、この方法だと

 術者のイメージ次第で複雑な形を描く事が出来るそうです。

 その気になれば、空に色彩溢れ壮大巨大な絵を描く事だって出来る。

 これを応用した競技もあるけど、それについてはまた別の機会に。

 

 

 ともあれ、光彩華は祭りの象徴。

 祭りと言えば何はともあれ光彩華なくらいに。

 打ちあがる度、遠くから人々の歓声と拍手が響き

 学園と街を大きく揺るがす。

 学園敷地内の奥まった場所にある、この寮の窓にまで振動と音が届く。

 だけど……

 

「はぅぅ……、はじまるはじまる……」

 

 そんな楽しそうな声を聞きながら、おろおろする者がここに一人。

 はい、私ことシルファです。

 おろおろしてる理由はついに当日が来てしまったから。

 ついに始まってしまうのです、そう婚礼祭が始まってしまうのです!

 

 

 光彩華がまた一つ打ち上がりました、今度は連なった輪の形。

 あれは確か、絆や繋がりを表わす紋様だった記憶。

 婚礼祭に相応しい形ですね。

「あぅぅぅ……、どうしようどうしよう」

 火彩華の音を聞くほど緊張が高まっていく。

 

 制服に着替え終えて学園へ向かう準備は整っている。

 でも、今日に限っては足が学園へと動かない。

 覚悟はもう決めたつもりだったはず……

 それがここに来て、緊張がやって来ました。

 

 婚礼祭に参加するのが面倒とか、そんな気持ちではありません。

 お祭りは好きだし、イベントごとに参加にするのは楽しい。

 きっと友人達と楽しく素敵な思い出を作る事が出来る事はず。

 でも、今回の私は特別な立場にいる。

 お祭りで舞台に立って歌い踊るのとは違う、もっと特別な立場。

 

 それにライラの事もあります。

 代表に選ばれた日から、共に過ごす事でだいぶ距離は縮まったと感じます。

 だからと、婚礼祭の儀式中に何が起こるか予想がつかない。

 頭がぐるぐるする、変な汗まで出てきました……

 緊張感を通り越して、変な状態になってきましたよ?

 

「ふふ、嫁入りの前の乙女の気分かしら…?」

 

「…お姉さま……」

 私の背後から声がしました、セレーネお姉さまの声です。

 楽しそうな声、顔を見ずとも表情がわかります。

 でも、嫁入り前って。

 きっと私の様子を楽しんでおられるのでしょう。

 だから、頬を膨らませ細やかに拗ねながら、振り向く。

 

「うん、シルファのそう言う顔も好きだけど、でもね…?」

 

 やはりそこには静かに微笑むお姉さまのお顔。

 制服に身を包み、淑やかに佇む姿はつい見惚れてしまいそうに。

 しかもこんな事を言うから、思わず頬が緩みそうになります。

 いえ!ここは拗ねるのです!

 

「貴女は今日の主役なのだから、誇り高く麗しくありなさい?」

 拗ねる私に、お姉さまは側に寄ると私の首元へ手を伸ばしました。

「…はい……」

 拗ねきれませんでした。

 

 私の返事に頷くと、お姉さまは私のタイを正し指で髪を梳き始める。

 心地よい一時、やはりお姉さまには勝てません。

 それに、いつの間にか緊張が消えています。

 

 

「出来たわ。ん…後はそうね……」

「…お姉さま、まだ何か?」

 得心の笑みを浮かべるも、お姉さまは直ぐに首を傾げる。

 

 どうしたのでしょうか?

 身支度してもらった事で私の緊張は完全に消えて気持ちも完璧に落ち着きました。

 顔も普段通りになっているはず。

 でも、お姉さまには何か思うところがある様です。

 そして首を数度傾げた後、お姉さまは机の引き出しに手を伸ばし、掌程の大きさの容器を取り出しました。

 

 白い容器。陶磁器製でしょうか?

 窓からの光に当たると蓋の部分に銀の蝶が浮き上がって見えます。

「それは…?」

「こうするのよ……」

 

 お姉さまは容器の蓋を開け、中の物に小指で撫でる様に触れ

 そして、その小指で私の唇に触れ、右左左右と数度撫でる。

 くすぐったいけれど、心地よい。

 

「ん、もしかして、紅《べに》ですか?」

「ええ、でも…もっと自然な色。紅《べに》だと貴女の髪には色が強すぎてしまうわ」

「自然な……んふ」

 私が問うよりも先にお姉さまの指が動く。

 

 口付けとはまた違う不思議な感覚。

 唇が渇くの防ぐ軟膏は使ってはいるが、こんな風にされたのは初めてかも……

 ううん、

 そうだ……、昔もこんな風に軟膏を塗ってもらっていた事を思い出す。

 

「こんな感じかしら?どう…?」

 指が離れ、お姉さまは手鏡に私の顔を映して見せる。

「あ……」

 花色の唇。

 手鏡に映る私の唇はいつもより艶やかで、春色の花の輝きを放っている。

 私の白銀の髪、そして花色の唇。

 まるで氷雪の中に咲く一輪の花の……。ごめんなさい言い過ぎました。

 

「うん、シルファにはこの色が合うと思ったわ」

「…はい、ありがとうございます」

「さぁ、行きましょう?皆も待っているわよ?」

「皆も…?」

 言ってお姉さまが部屋の入口である扉の扉のノブに手をかけ

 ゆっくりと押し開いた。すると……

 

「開いた?あ、シルファおはよう!」

「おはよ~、じゃあ捕獲~」

「…捕獲って。シルファおはよう。もうみんな教室に集まっているわよ?」

 

 扉の向こうには見慣れた顔が並んでいました。

 コロネ、そしてクロワにルキア。

 

「あ……」

 そして少し離れてライラの姿も……

 

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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