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ルミナス魔法学園物語 ~『私はお姉さまとゆるゆる学園生活したいだけです!』~  作者: 月羽


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第55話 仕立て屋さんが来た!-3

 

 ここはお馴染み私達の教室。

 教壇にはシロノさん、そして私…シルファとライラの姿。

 ただ立っているだけではありません、私達の元に声が飛んで来る

 

「もっとお花!」「胸もっと出そうよ!」 

   「肩!白い肩いいよね!」

「キラキラがいい!」「ふわふわな服~」

   「フリル!フリル!」

「髪!髪をもっと飾りましょう!」「だからお花~」

 

 興奮した少女達の声が次から次へ飛んで来ます。

 私とライラは唖然として立ち尽くす事しか出来ません。

 本当にみんな勢いと圧が凄いなぁ……

 この状況の始まりはシロノさんがクラスの皆に意見を求めた事。

 

「…婚礼祭装束のアイデアを求めます……、セルティス先生のクラスらしい案を……

 そして、素晴らしい案を皆のイメージから求めます……」

 

 シロノさんが皆に向かいこう告げると、一瞬の静けさの後

 皆が一斉に口を開き始まる声の嵐。

 そして、今に至ると言う訳です。

 

 声の嵐。昼の休み時間でもここまで声が溢れた事はありません。

 絶える事無く、順を問わずに声が飛んで来る

 そして全ての声は最終的に、教壇に立つ私達の元へ飛んでくる。

 

 断片的な言葉が多いけど、言いたい事はわかった

 一部は誰が言ったのかも大体わかる。

 でも、それも最初だけ。皆興奮しているのか声が加速し、言葉が増えていく。

 言葉と言葉が重なり別の言葉にさえ聞こえてくる。

 これではもう聞き分けるのは無理です。

 

 そもそも二十八人の少女の声が一斉に飛んで来るのです、全部聞き分けろと言うのが無茶な話。

 かろうじてわかるのは……。仲の良いコロネの声そしてルキアとクロワの声かな?

 

 声はまだまだ止まらない、むしろどんどん増えています。

 増えたと言っても人数が増えた訳ではない、皆の声が加速している。

 

 理由はわかる。皆、自分のアイデアを採用してほしいのです。

 見るだけになるかもしれない自分達が能動的にイベントに参加する事が出来る。

 花飾りを作ったり、魔法符《スペルカード》を作る作業はある。

 

 でも、それとこれは違う。彼女達の声と言葉が私とライラの装束を飾り彩る。

 つまり、婚礼祭と言う大きな場で大勢の生徒達の目に触れると言う事。

 そんなの嬉しすぎます。逆の立場だったら私だって大きな声で……

 …大きな声で言うのは無理かも

 とにかく、なんとかアイデアを採用されたいと頑張ると思う。

 だから、皆の声は止まらない。

 

 そんな中、横目でシロノさんを見れば、彼女は目を瞑り何度も小さく頷いている。

 黒を基調としたメイド服を纏い、口に手を当て佇む姿は本当に人形の様。

 喧騒の中にあって彼女の周囲だけ何か空気が澄んで見える。

 こんなにも騒がしい中、一つ一つの声を聞き取っているとでも言うのでしょうか?

 

 聴覚拡張の魔法?でも、聞き取るのと聞き分けるのは別物。

 一度に飛んできた言葉を整理し理解するには、特殊な思考能力が必要となる。

 そうなると、シロノさんはどんな魔法を使っているのでしょう?

 私がぼんやり考えていると、頷いているだけだったシロノさんが口を開きました。

 

「では……」

 

 言葉と共にシロノさんの右手の人差し指がくるりと動いた。

「胸元をもう少し大きく出しつつ……」

「…え?」

「まあ?」

 首元まであった白い布地が、波が引く様にススッと降りて行く

 谷のラインが見えた所で止まる。

 私が驚くのは当然だけど、ライラまで驚き固まっている。

 驚くのはここでは終わらない。

 

「…花の飾りは良いですね……」

 

 シロノさんが指を弾くと私の胸の中心に真白な大輪が開いた

「貴女の髪は白銀だから…艶やかな色が欲しいのですが……

 白の衣装には強すぎますね…悩ましい……」 

 悩みの声を呟きながら、シロノさんは指をクルクルと回し続ける。

 花の色が何度か変わった後、結局白へと戻った。

 

「白で安定でしょうか…?それと…そうですね……

 フリルも増やしてみましょう…か?多ければ減らせばよいのですから……」

 

 シロノさんの指の動きに合わせて、袖や襟、お腹やスカート

 そして、スカートの裾にふわふわとしたフリルが追加される。フリル祭……

 フリルは嫌いでない、むしろ好き。

 でも、ここまでフリル過多な衣装を着たのは生まれて初めてです。

 

「さて、金の髪の貴女は…こんなのはどうでしょうか…?」

「…はぁ、素敵ですわ……、……はい?私ですの?」

 今度はライラの方へと振り向いた。

 ライラは少しぼんやりとしていたのか、反応が少し遅れた。

 

「はい、貴女です。では……」

 言ってシロノさんが指を弾くと、今度はライラの衣装が変化する。

 まず、袖が大きくカットされ白い両肩が露わになる。

 そして、金の髪に赤や青の星色に輝く細かな飾り石が散り

 衣装の各部に縦に斜めにフリルが走る。こちらは連なる花の様なフリルです。

 変化はまだまだ続きます

 スカートは左から右へと回るようにカットされ。左の太腿が強調された。

 

 儀式用装束を作った時にも思ったけど、やはりライラには盛装が良く似合う

 凛とした瞳は当然の事だけど、それの収まる顔が良いし

 なにより纏う空気です。ライラが着ると制服すら他と違って見える

 その彼女が盛装を着るのだから、似合うのは当然の事です。

 

「…シルファさん、何かしら…?」

「え、ライラ?ああ…別になんでもない……」

「そう?おかしな方」

 首を傾げるライラ。問い掛けに思わず誤魔化してしまったけれど

 誤魔化す必要は無かったのかも?

 

 

「良い感じになってきましたね…?

 では、もう少し…手を加えて整えて行きましょう……」

 シロノさんはまだ納得がいかないのか

 指を振り、衣装の飾りや布を増やしたり減らしたりを繰り返し。

 頷きと共に指を止める。 


「では、ここまでの分を仮縫いで作って行きましょう」

「仮縫い…?今、私達が着てるこれは……」

「この衣装は魔法…幻影を乗せてるだけですよ……」

 シロノさんが指で私の胸元の花を突くと、突き抜け私の肌に指が触れた。

 幻の花だ!しかもです、私の動きに合わせ追随する幻影。

 

「シロノの幻影の魔法(イリュージョン)は固有魔法由来だからね

 一般的な幻影の魔法(イリュージョン)より出来る事が多いんだよ。凄いよね…シロノは可愛いよね」

 教えてくれたのはクロノさん。なんだか自分の事の様に自慢げです。

 でも、最後のはいらなかったような……。あ、シロノさんに小突かれました。

 ………

 ……

 …

 シロノさんの作業が終わると同時に、二つの溜め息が同時に零れた。

 私、そしてライラの溜め息です。

 さらに大勢の溜め息が続く。クラスの皆の溜め息です。

 最初は二つ同じだった衣装はそれぞれ別物へ変わり

 白い布同然だった衣装は、盛装へと変わった。

 なんだか、このまま踊れそうな気さえしてきます。

 

 ふとライラと視線があった、そして小さく息を吐きながら頷き合う。

 特に意味の無い頷き。驚き過ぎてお互いに何を言えば良いのかわからない。

 わからないけど。変身したお互いの姿が気になる。

 だから、お互いに頭を回したり、その場で回ったりして確認し合う

 

 そうするうちやがて、気持ちも落ち着き言葉が浮かんでくる訳で

 先に口を開いたのはライラ。

「…その…素敵ですわね……」

「え?ありがとう?ライラも素敵だよ?」

 ライラに釣られ言ってしまったが、妙に照れてしまう。

 顔は熱く、胸のあたりがくすぐったい。

 

 そんな私達にクラスメイト達は囃し立てる様に言う。

「二人で正解だったかもね」「こうしてみるとお似合いです」

「うう…否定できないのが悔しい……」「いいなー私も、いいなー」

 

「ありがとう…なのかな…?」

 なんて言ってみるけど、お似合いと言われ複雑な気持ち。

 だって、私にはセレーネお姉さまがいるから。でも……

「ふふっ、これはなかなかの気分ですわね?」

 言ったのはライラ。右足を前に出しスッと出しポーズを決める。

 注目されるのが楽しいのか、上機嫌に口元を笑みにしている。

 

 だけど私は知っている。この後ライラは、調子に乗り過ぎたと落ち込むのでしょう

 こんな事を思う事が出来たと考えると、この状況も悪くないかもしれない。

 

「ほら、シルファさんももっと胸を張りなさいませ」

「…あ?うん、そうだね……」

 ここは流れに任せてみようかな?だから私も胸を張り軽くポーズを決めて見せる。

 直後、どっと大きなざわめきの声が起きた。

「…え?そこまで驚く?」

 

「自覚が無いのは当人ばかりですね」

 ルキアの声だ。自覚?なんの自覚でしょうか?

 

「良いですわね、実に良いですわね……」

「そ、そうかな…?」

 ルキアと皆だけで無く、ライラまで言うのだから私は戸惑いが隠せません。

 少しポーズをしただけなのに……

 

「シルフぁもっと別のポーズも!」

「せっかくだから二人でこう…鏡合わせの対になるようにさー」

 

「ほら?皆の声に答えないといけませんわよ?」

「え?う、うんそうだね?」

 だから、また別のポーズをとってみる。

 今度は腰に手を当て振り向く様に。ライラは私と対象のポーズをとる。

 

 それを始まりとして、次から次へ止まる事無く注文が飛んでくる。

 なんだか人形遊びの人形にでもなった気分です

 皆さん、私とライラで遊んでいませんか?

 楽しいのはわかるけど!

 

 そんな中、私達の耳にシロノさんとクロノさんの声が聞こえて来ました。 

「…あの、あまり激しく動かない方がよろしいかと……」

「そうだね。それってまだ仮縫いで乗せてるだから。あまり派手に動くと危ない」

 シロノさんは相変わらず感情が薄いけれど、クロノさんは何か焦っている様にも聞こえる。

 動くと危ないってどう言う意味なのでしょう?

 仮縫い…?

 私がその意味を理解した時には、時遅しでした。

 

「いいですわね!やはりライオネル家の子女として注目を集めるのは当然の……」

「ライラ!止まってくださいまし!腰!」

 ネオンの声。ネオンの悲鳴の様な声が壁に反響する程の声で響きました。

 先に事が起きたのはライラの方。

 

 腰?

 

「え…?あ……」

 ライラの腰付近から白い布がハラリと床へと落ちました。

 さらにもう一枚、そしてもう一枚……

 落ちた布は彼女の纏う装束の下半身を形作っていた物

 

 装束はまだ仮縫い、派手な動きには耐えられない。

 それは私の装束も同じ事……

 

「シルファも動いちゃ駄目!」

「誰かシーツか毛布を!」

 コロネの声が聞こえ、続いてルキアの声が聞こえました。

 でもここは教室、シーツも毛布もある訳がありません……

 

「だ…闇の霧(ダークミスト)ぉ!」

 私が魔法を使ったとしても悪く無い。

 

 悪く無いですよね…?

 

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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