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ルミナス魔法学園物語 ~『私はお姉さまとゆるゆる学園生活したいだけです!』~  作者: 月羽


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第51話 二人の時間-よん

 

「むぅ……」

 机に突っ伏しながら唸り声をあげる。

 

 唸っても意味が無い事はわかっている。

 けれど、どうしてもこんな声が口から出てしまう。

 これはきっと行き場の無い感情が行き場所を求める声。

 学園から寮に戻ってずっとこの状態、私の中で感情がぐるぐるしている。

 ぐるぐるしすぎて目が回りそう……

 

 わからない、本当にわからない。

 唸っても嘆いても、わからない物はわからない。

 これからどうすれば良いのか、これからどうなって行くのか。

 わからない……

 

 数日の間に色々な事が起こり過ぎました。

 魔王《アルカナロード》との契約の時にも悩んだけど

 あの時は進むべき方向が決まっていました。

 …多少は焦ったけれど。いえ、本当はかなり焦っていました。

 それでも最終的に到達すべき場所は分かっていた。

 でも、今回は違う。

 最初はただライラとの関係を改善して、仲良くなれればそれでいいと思っていた。

 でも、それだけでは駄目な気がしてきました。

 ネオンの『ライラの事をお願いするわね…?』の意味が気になる。

 

 ライラと婚礼祭を成功させようと約束はしたし

『あの時』の事を話してくれると約束もした。

 それについてはお互いに変えるつもりは無いしそこへ進むしかない。

 じゃあ進んだその先は?

 私からはどうするの?何をすればいいの?

 

 確かに、私は訳もわからず一方的に睨まれ因縁を付けられた。

 でもライラの事を知っていく中で、あの時の『瞳』が特別な物の様に思えてきた。

 あの時の『瞳』の本当の意味を知りたい……

 でも、知ってどうするの?その先は?ネオンの言葉の意味は?

 それにコロネの様子も気になる……

 

 あ……

 

 思い出しました!悩み始めた発端はコロネの事でした

 あんなコロネを見るのは初めてで、それが気になって仕方無くて

 理由を考えるため記憶を手繰り始めたら、ライラの事に行きついて

 

 だめです、思い付かない

 また《《わからない》》がぐるぐるとし始めました

「ぬぁー……あ?」

 再び唸った私の背に、ふわりとした物が重なる様に乗りました。

 机に突っ伏す私に背中は見えない

 でも、それが誰かはわかります

 ふわふわと柔らかく、そして優しい香り。

 それは……

 

「…お姉さま?」

「ええ、私よ」

 セレーネお姉さまです。髪を撫でる香りだけでお姉さまとわかる

 夜風の様に耳を撫でる声を聞けば、そうであると確信する。

 

 そもそも、ここは私とお姉さまと私の部屋。

 お姉さま以外の誰かが私の背に乗ったとしたら、それはちょっとした怪奇現象です

 この寮にはそんな話もあると聞いたけど、この声と香りは間違い無くお姉さま。

 

「…どうしたの?」

「えっと……」

 私を心配するお姉さまの声。背中越しでもお姉さまの表情が見える。

 ううん、見えると言うより感じると言うのが正しいかもしれない。

 お姉さまは時々意地悪だけど、心を偽る事は無い。

 だから、私も心を隠す必要は無い。それになにより……

 お姉さまには話したい。ううん、話すべきだ。

 

「…頭の中がごちゃごちゃになっちゃって……」

 こんな言葉になってしまったけれど、今の頭の中を表す言葉をこれ以外には思い付きません。

 仮に『大海獣《クラーケン》の脚が絡まった様に頭が混乱して』…なんて言っても意味不明になってしまうだけ。

 だから、これが私にとって最良の言葉なのです。

 

「…そう……、聞いてもいいかしら…?」

 やはりお姉さまはわかってくれました。

 それに、お姉さまが会話の流れを作ってくれているとわかる。

 一瞬、言葉に迷いの色が出たのは、私が話し易くするため。

 

 だから私は話す事にします。今日あった出来事の全てを

 ライラの事を、ネオンの事を、そしてコロネの事を……

 全てを……

「はい、実は……」

 

 ………

 

 ……

 

 …

 

「そんな事があったの……」

「はい……」

 背中のままで頷くと、暫しの間を開けお姉さまが口を開きました。

「シルファは…少し難しく考えすぎているのかも…?」

「そうでしょうか?」

 

 無言の間の後、私は言葉を変える。

 

「…そうかも……」

 お姉さまの言う通りです。

 考えすぎた挙句、私は自分で自分を袋小路へと放り込んでいる

 だから私はこんなにも悩んでしまっている。

 

 一回袋悩みの小路に入ってしまうとそこから出る事は難しい。

 難しいから難しく考えすぎてしまう、出口が見つからないまま。

 でも、お姉さまの言葉で一歩戻る事が出来た。

 一歩戻ればまた違う道が見えてくる。

 

「シルファ、物事は案外シンプルなのよ…?」

「シンプル?」

 私が聞き返すとお姉さまの顎が首筋に当たった。多分頷いたのでしょう。

 垂れた黒髪もお姉さまの動きに合わせサラサラと私の耳を撫でるから

 くすぐったさで身体が震えてしまった。

 ううん、身体が震えたのはくすぐったさだけでは無い。

 お姉さまが答えをくれるとわかったから。

 

「そう、シンプル。だからもっと単純に考えてもいいと思うわ?」

「単純に…と言われても……」

 お姉さまが歩き方を教えてくれた。

 でも、踏み出す一歩の最初の先が見つからない。

 ここに来て、私はまだ惑ってしまう。

 

「シルファ…貴女の思うままに動けばいいの。答えは向こうからやって来てくれるはず……」

「思うままに?」

 お姉さまの顎がまた私の背に触れ、今度は後ろ髪に手が触れました。

 触れた手が私の髪を撫でる。

 撫でながらお姉さまは言葉を続ける。

 

「大きな流れはある…でも、その中をどう動くかは貴女の自由。

 ううん、もしかしたら貴女なら…流れすら変えるのかもしれないわね……」

「むぅ…結局わかった様な…わからない様な……」

 地図は渡すけど、後は自分で歩きなさいと言う事なのでしょう。

 お姉さまもそこまでは甘くない様です。わかってましたけど。

 

「ふふっ、だから言ったでしょう?物事は案外シンプルなのよって…でも……」

 微笑みの混じる声。お姉さまは私の背を指で撫でると新たな言葉を投げかける。

 だから私は問う。

「でも…?」

 

「コロネさんは大切にしてあげた方がいいわよ…?」

「え?コロネを…大切に?」

「そう…わ?」

 思わず起き上がってしまいました。

 いきなりだったから、お姉さまのお顔とぶつかりそうになったみたいだけど

 お姉さまは一瞬で飛び退いた様です。

 

 ぽかんとし驚いた顔で振り向けば

 お姉さまは一歩離れた位置でにこにことしていた。

「それってどう言う……」

「ここから先は……」

 

「シルファ自身で考えなさい…ね…?」

 言うとお姉さまは私の口に指を当てました。

 

 だから私はそれ以上何も言えなくなってしまうのでした。

 

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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