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ルミナス魔法学園物語 ~『私はお姉さまとゆるゆる学園生活したいだけです!』~  作者: 月羽


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第50話 転寝…-2

 

「………」

 金色の髪が机に頭を乗せ、突っ伏しています。

 寝息は聞えません、だから眠てはいないと思う。

 それは、そうでしょう。

 これ以上眠るのは、彼女にとって屈辱的あるいは恥辱的。

 

 彼女…ライラは授業が終わってからずっとこの状態なのでありました。

 そうなるのもしょうがない。授業中にあんな醜態を晒してしまったのですから。

 ライラのお嬢様としての誇りが……

 彼女の謂う所の『ライオネル家の誇り』が許さないのでしょう。

 

 さて、どうしましょう?首を傾げ口に手を当て考えてみるけれど

 何も思い付きません。

 そもそも、ライラにとって最も近い友人である『ネオン』が

 細い鰭の様な耳をたるんと垂らし、私と同じに首を傾げているのだから

 私にどうの出来る訳がありませんよね。

 

 一応と、コロネの方を見てみるけど……

 顎を机に乗せ無言で頭を揺らしていました。少し可愛い。

 彼女の場合、何かあれば言う事は言うし

 無言と言う事は、私が帰るまでずっと待つと言う事なのでしょう。

 

 さて、本当に全くどうしたものでしょうか?

 午後の授業は終わり、寮の門限までを思い思いに過ごす時間

 教室には、もう私とコロネとネオン。

 そして、突っ伏したままのライラしか残っていない。

 普段なら私もコロネ達と街に繰り出したり、お姉さまと待ち合わせをしている。

 ライラが普段どんな事をしているか知らないけれど。

 このまま放置して行く訳には行きませんよね?

 

「ライラが人前でこんな風になるなんて……」

「ん?」

 場に居る者に聞こえるか聞こえないほどの小声の呟き。

 呟いたのはネオン。

 もし、今が雑談賑わう休み時間だったら聞き逃していかもしれません。

 ううん、今の私だったら賑わう中でも聞こえたかもしれない。

 なんとなくだけど、そんな気がする。

 自分にとって重要と思う声は、どんな状況でも聞こえてしまう。

 それが声の力。

 重要と感じたのなら意味を問うしかない。

 

「ネオン?それってどう言う事…?」

「あら…聞こえてしまった?」

 うっかりとも驚きとも取れるネオンの言葉に、私はこくりと頷き肯定する。

 するとネオンは、私の顔を見た後にライラへと視線を落とした。

 続きを話して良いのか、ライラに同意を求めている様だけど……

 突っ伏した姿勢のまま無言を保っています。

 

 もしかして、ライラ寝ている?そんな事は無いと思うけど

 顔を上げるタイミングを逃した可能性も高い。

 どちらにしても、全くの無反応なら聞いても構わないと言う事なのでしょう。

 だから、ネオンもライラが無反応な事を了承と受け取ったのか

 言葉を選ぶ様に、夜の漣の如く穏やかに語り始めた。

 

「…ライラってこの性格でしょう?人前ではこんな風になる事無かったの」

 言ってネオンはライラの髪に触れると、指先でそっと撫でた。

 コロネも私の髪に触るけれど、それとは何か違う。

 視線と指の交わる先に、煌めく何かがある。

『煌めき』その物が見える訳では無い、私がそう感じ幻視しているだけ。

 でも、確かにそこある。

 それはきっと、ネオンとライラの《《繋がり》》の煌めき。

 

 関わる事で少しづつだけど、ライラの事が分かって来た。

 でも、まだまだ知らない事の方が圧倒的に多い。

 ネオンはライラのルームメイトで、私の知る限りライラと最も親しく近い友人。

 彼女なら、私の知りたい事を教えてくれるかもしれない。そんな気がする。

 だから私は言葉の続きを促すべく小さく頷いた。

 

 ネオンもそれを待っていたのか、私の頷きを合図に言葉を続ける。

「…『らしく』ありたいって気持ちが強いのかしら?

 ライラ、どんな時でも…常に気を張っていると言うか……」

「あ?わかります……、なんとなくだけど」

 これまでのライラとの関わりを思い返せば、思い当たる事が多くある。

 凛とした青緑石の瞳の奥、炎の輝き。あれはライラの誇りの輝き。

 掲げた信念は瞳を強く優雅に輝かせる。

 でも、強すぎる炎は己自身を焼き灰にする。

 そうか、そう言う事なんだ…… 

 

「うん、そうだと思った」

 ネオンが呟き、納得する様に頷きました。

「え?」

「ふふっ、シルファさんってやっぱりおもしろい。

 でも、そこが私に足りない物なのかもしれないわね……」

 

 どういう意味なのでしょう?私の反応にネオンは微笑むけれど

 彼女は私の気付かない何かに気付いていると言う事なのでしょうか?

 

「それってどう言う…?」

「ライラの事は一番知ってるつもりだったけど……

 幼馴染なだけじゃダメ…ね?でも……」

「え?ネオンってライラの幼馴染だったの?……でも…?」

 一瞬だけど、ネオンの瞳に寂しさの影が見えた。

 ううん、寂しさと言う言葉では表しきれない、もっと複雑な感情。

 それに幼馴染って?もしかしてネオンは……

 私が黙ったのを見ると、ネオンは慌てて言葉を続ける。

 

「ああ?違うの!違わないかな?幼馴染と言ってもほんの一時《いっとき》を過ごしただけだし……

 でもね、わかるの、シルファさんだと、ライラは拗ねたり甘えや…もご!?」

「ほわぁ!?」

「のわっ!?」

 

 それは一瞬の出来事でした。

 金色の炎が渦巻いたかと思うと、次の瞬間ネオンさんの口が塞がれていました。

 あまりにも突発的な出来事。彼女と話をしていた私だけでは無く

 転がっていたコロネまでも起き上がり、素っ頓狂な驚き声を上げていました。

 

「それ以上言ったら沈めますわよ……」

 物騒な言葉でネオンの口を塞いだのはライラ。

 一瞬前まで机に突っ伏していたライラです。

 目にも止まらぬとは正にこの事。動きが全く見えませんでした。

 私に出来たのは口を開けたままで唖然とする事だけ。

 そもそも、沈めるってどこに?

 

 あ?ライラが私の方を睨みました。

 睨む瞳、青緑石の瞳の奥にメラメラと炎が燃え揺らめいています。

 これは怒りとは違う何か威圧する様な……

 

「わたくしなら大丈夫ですわ!ええ、少しばかり恥ずかしい所を見せてしまったけれど……

 これは…そう!これは反省の儀式の様な物」

「儀式?」

「そうですわ!儀式!己を省み同じ失敗を繰り返さないための儀式!」

 

 こう強く言われては頷くしかありません。

 何か言いたくとも、心の奥に留める事にしましょう。

 でも、これはもしかしてだけど、ライラは照れている?

 

 そう言えば……

 学園の果て(?)に行った時も、頭を壁に突けた後こんな風になっていました。

 つまり、これはライラの照れ隠しの行動パターンの一つと言う事?

 これはまた一つ、ライラについての理解が深まったのかもしれません。

 

「はふっ…うふふっ」

 笑い声が聞こえました。これはネオンの笑い声です。

 見れば、ライラの拘束から逃れたネオンが笑っていました。

 でも、彼女の楚々とした雰囲気からはかけ離れた笑い声。

 心底楽しい、自分の思う答えを得た…そんな笑い。

 

「その方が貴女らしいわ」 

「はぁ全く…貴女と言う人は…そう言うところが好きになれませんの」

 淑やかに微笑むネオンと指で自分の額を抑えるライラ。

 好きになれないと言いつつ、なんだか楽しそう。仲いいなぁ。

 

 二人の間にルキアとクロワとは違う仲の良さが見えます。

 やはり二人の間には特別な物がある。

 もし、私がライラとの仲を深めるのなら、別の方向が良いのかもしれない。

 だけど、別の方向ってなんでしょう?

 わからない、わかりません。

 わからないけど、やはりネオンには何かが見えている様です。

 

「シルファさん…ライラの事をお願いするわね…?」

「え?…う、うん?」

「ネオン急になんですの!?」

 思わず返事をしてしまったけど、私は何をお願いされたのでしょうか?

 ネオンはにこにこと微笑むばかりだし、ライラは手を空中に彷徨わせているし

 本当に訳がわかりません。わかっているのはネオンだけみたいです。

 ほら、こんな事まで言い出すのですから。

 

「婚礼祭はきっと楽しい事になる気がするわ」

「もう、ネオンったら本当になんなんですの!?」

 それは私も聞きたいです。

 わからないままネオンとライラは猫みたいにじゃれ合い始めた。

 とりあえずライラも顔を上げたし、私もう帰り支度を初めても大丈夫かな? 

 

「むぅ…なんだか、私おいてけぼりかもしれない……」

「コロネ?」

 不意にコロネが呟きました。聞き逃しそうなほどに小さな声だけど

 私には聞こえました。彼女は私の一番の友人だし……

 それになにより、いつもと違う拗ねた調子なのが私に聞き取らせました。

 でも、だけど……

 

「コロネどうしたの…?」

「なんでもない……」

 言ってコロネは再び机に顎を乗せ頭を揺らし始めた。

 こんな彼女を見たのは初めてです。

 

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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