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世界改稿日記 ~なろうによる世界破綻~  作者: 黒瀬 量衡


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第六十六話 『新しい女性たちと出会う。』

『新しい女性たちと出会う。』


「たち?」


 朝。


 開店前のパン屋で。


 俺は日記を二度見した。


「ルーク、そこ違う」


「え?」


「胡桃パンは三番」


 ミレアが義手で俺の持っていた籠を指した。


「あ、ごめん」


「朝からぼーっとしてるね」


「ちょっと嫌な文章を見た」


「何それ」


「こっちの話」


 日記を見る。


『新規成人女性キャラクター――複数名。』


「一人じゃないの?」


『既存主要人物との接触を予定。』


『皆とも意気投合する。』


「全員?」


「だから何の話してるの?」


「気にしないで」


「最近そればっかり」


 ミレアが笑った。


 日記。


『既存ヒロインとの競合――現段階では不要。』


『対立――不要。』


『敵対――不要。』


『友好的関係構築――優先。』


「……平和?」


 警戒する。


 絶対に。


 警戒する。


 前なら、ここで。


 今回は大丈夫そう。


 そう思っていた。


 もう思わない。


 最後。


『複数人で驚きが隠せない。』


「だから何に!?」


「ルーク!」


「ごめん!」


 女将に怒鳴られた。


     *


 一人目は。


 開店して一刻もしないうちに来た。


「すみません。ここ、朝食も食べられますか?」


「食べられるよ!」


 女将が即答した。


 旅装の女性。


 二十代後半くらい。


 背が高い。


 日に焼けた肌。


 肩まである茶髪を後ろで結んでいる。


 大きな荷袋を一つ。


「じゃあ、お願いします」


「座ってな」


「ありがとうございます」


 女性は腰を下ろした。


 すぐに。


「その剣」


 セリアが反応した。


「はい?」


「西方式だろ」


「あ、分かります?」


「昔使ってる奴がいた」


「珍しいですね」


 女性が笑う。


「私はマルタ。行商の護衛をしてます」


「セリア。冒険者だ」


「やっぱり」


「分かるか?」


「立ち方で」


「へえ」


 そのまま。


 二人で剣の話が始まった。


「……早い」


「何が?」


 ミレア。


「何でもない」


 意気投合。


 一人。


     *


 二人目は。


 昼前に来た。


「この近くに魔導技師の工房ってあります?」


 小柄な女性。


 二十代半ばくらい。


 灰色の髪。


 眼鏡。


 腕いっぱいに紙束を抱えていた。


「魔導技師?」


 ミレアが反応した。


「私の義肢作ったところなら知ってます」


「えっ」


 女性の目が。


 一瞬で。


 義手へ行った。


「見せてもらってもいいですか?」


「いいですけど」


「接続部だけ!」


「どうぞ」


「すごい……」


 近い。


「これ、三重術式ですよね?」


「私には分かりません」


「動かせます?」


「はい」


 握る。


 開く。


「うわ……!」


 女性が。


 ものすごく嬉しそうな顔をした。


「完成度高い!」


「そんなに?」


「高いです! 私、魔導具の設計補助してるんです」


「へえ!」


「名前はエリナです」


「ミレアです」


「義肢の使用感、聞いてもいいですか?」


「もちろん」


 二人。


 座る。


 すぐ話し込む。


「重さは?」


「最初は気になったけど今は全然」


「熱は?」


「長く使うと少し」


「そこ改善できますよ!」


「本当?」


「たぶん!」


 意気投合。


 二人。


「……」


 日記を見る。


 何も増えてない。


「怖い」


「何が?」


 リサ。


「順調すぎる」


「何の話よ」


     *


 三人目は。


 昼過ぎだった。


「薬草パンってないですか?」


「ありません」


 俺が即答した。


「残念」


「何で欲しいんですか」


「携帯食に薬草混ぜたら便利かなって」


「まずそう」


「そこが問題なんですよ」


 女性。


 三十歳前後。


 赤みがかった金髪。


 腰に小さな薬草袋をいくつも下げている。


「薬師?」


 リサが聞いた。


「半分」


「半分?」


「薬師兼採集屋」


「へえ」


「珍しい草ならありますよ」


「どんな?」


「見る?」


「見る」


 袋。


 開く。


「あっ」


 リサの顔が変わった。


「月白草」


「知ってる?」


「高いやつ!」


「乾燥前ならそこまででもない」


「どこで採ったの?」


「北西の森」


「この時期に?」


「採れる場所知ってるから」


「教えて」


「嫌」


「ケチ!」


「商売だから」


 でも。


 二人とも。


 笑ってる。


「名前は?」


「サラ」


「リサ」


「魔術師?」


「そう」


「じゃあ魔力回復系も欲しい?」


「ある?」


「あるよ」


「見せて」


「パン一個」


「奢る」


「交渉成立」


 意気投合。


 三人。


「……日記」


 開く。


『進行――順調。』


「その一言が怖いんだよ」


     *


 そして。


 四人目。


「……すみません」


 夕方。


 今度は。


 見るからに困っている女性だった。


 二十代後半。


 黒髪。


 服は上等だけど。


 汚れている。


「どうしたんですか?」


 俺が聞く。


「財布を……」


「なくした?」


「はい」


「盗まれた?」


「多分」


 女性が。


 ものすごく恥ずかしそうに俯いた。


「今日王都へ着いたばかりで……」


「最悪だね」


 ミレアが言った。


「泊まるところは?」


「ありません」


「知り合いは?」


「王都には……」


「女将!」


「何だい!」


「困ってる人!」


「見れば分かる!」


 女性が慌てる。


「あ、あの! 働きます!」


「何ができる?」


「料理と、掃除と、帳簿と……」


「帳簿?」


「はい」


 女将の目が。


 変わった。


「計算できるのかい?」


「できます」


「こっち来な」


「え?」


「これ」


 帳面。


「今日の分まとめてみな」


「今ですか?」


「今」


「はい」


 女性。


 座る。


 書く。


 早い。


「……」


 女将。


 見る。


「合ってる」


「ありがとうございます」


「速いね」


「以前、商会で働いていました」


「名前は?」


「クラリッサです」


「今日から一週間、二階使いな」


「え!?」


「働いた分は宿代から引く」


「あ、ありがとうございます!」


 四人目。


「……また二階増えた」


 俺が呟いた。


「何か言ったかい?」


「何も!」


     *


 夕食。


 おかしかった。


「それで西の剣は――」


「重心が違うんだ」


 セリアとマルタ。


「この義手、もしかしたら――」


「もっと軽くできる?」


「強度落とさずにいけると思う!」


 ミレアとエリナ。


「それ、毒草でしょ」


「量次第では薬」


「それ全部に言えるじゃない」


 リサとサラ。


「帳簿、明日も頼むよ」


「はい!」


 女将とクラリッサ。


 俺。


 一人。


 置いていかれている。


「……」


「ルーク」


 ミレアが呼ぶ。


「何?」


「顔」


「何」


「すごい顔してる」


「だって」


 見る。


 今日。


 一日。


 四人。


 新しい女性。


 全員成人。


 全員。


 誰かと。


 即座に仲良くなった。


「普通こんなことある?」


「何が?」


 マルタ。


「今日会った人が四人もここにいる」


「確かに」


 エリナが笑う。


「私も思ってた」


「私も」


 サラ。


「そもそも何で全員ここで夕飯食べてるの?」


「成り行き?」


 クラリッサ。


「私なんて泊まることになりましたし」


「それは女将が早すぎる」


「何か言ったかい?」


「何でもないです!」


 全員。


 笑った。


 妙に。


 自然。


 前から知り合いだったみたいに。


「……」


 俺だけ。


 怖い。


     *


「ところで」


 マルタが。


 ふと。


 言った。


「皆、今日初めて会ったんだよね?」


「そうだけど」


 セリア。


「だよな」


「何?」


「いや」


 マルタが周りを見る。


「変だなと思って」


「何が?」


 エリナ。


「全員」


 マルタが指をさす。


 自分。


 エリナ。


 サラ。


 クラリッサ。


「王都に来たの、今日なんだ」


「……」


 俺。


 止まる。


「私も今日」


 エリナ。


「私も」


 サラ。


「私もです」


 クラリッサ。


「……四人とも?」


 ミレア。


「うん」


「同じ日に?」


 リサ。


「そうみたい」


「しかも」


 セリアが眉を寄せる。


「全員このパン屋に来た?」


「……」


 全員。


 黙った。


 一秒。


 二秒。


「偶然?」


 エリナ。


「四人?」


 サラ。


「王都ってこんなに狭いんですか?」


 クラリッサ。


「いや」


 俺が言う。


「広いです」


「じゃあ」


 マルタが笑う。


「すごい偶然だな」


「……」


 俺だけは。


 笑えなかった。


 日記。


 開く。


『新しい女性たちと出会う。』


『皆とも意気投合する。』


『複数人で驚きが隠せない。』


「……」


 これ。


 か。


 今日来た。


 全員。


 同じ日。


 同じパン屋。


 しかも。


 最初から。


 妙に。


 馴染んでいる。


「すごいね」


 ミレアが笑った。


「こういうこともあるんだ」


「あるのかな」


「あるんじゃない?」


「四人だよ?」


「四人だね」


「一日に?」


「うん」


「全員?」


「うん」


 ミレアは。


 楽しそうだった。


「友達増えていいじゃん」


「……」


 そう。


 悪いことは。


 何もない。


 むしろ。


 いい。


 セリアは話の合う相手が増えた。


 リサも。


 ミレアも。


 女将も。


 皆。


 楽しそう。


「……平和」


 口にしかけて。


 止めた。


 言わない。


「ルーク?」


「何でもない」


「また?」


「今回は絶対言わない」


「何を?」


「大丈夫そう、とか」


「もう言ってるじゃん」


「しまった!」


 皆が笑った。


 俺は。


 日記を見る。


『新規女性キャラクター複数名――導入完了。』


「……」


 その下。


『既存主要人物との友好関係――成立。』


『主人公生活圏への配置――完了。』


「配置って言うな」


 次。


『現段階で絶望的展開――なし。』


「……」


 安心。


 するな。


 絶対。


 するな。


『当面、日常ストーリーを継続します。』


「本当?」


 日記は返事をしない。


 ただ。


 最後に。


 一行。


『新規女性キャラクター――四名。』


『今後の利用可能性――高。』


「……利用って言うなよ」


 四人は。


 まだ笑っていた。


 その夜。


 俺たちのパン屋には。


 一日で。


 新しい女性が四人増えた。


 誰も死ななかった。


 誰も怪我をしなかった。


 何も壊れなかった。


 だから。


 俺は。


 絶対に。


 安心しないことにした。


この作品の品質向上のため、ぜひ感想をお寄せください。今後の展開・キャラクター・構成・描写方針の参考として利用します。


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