4話
「名前なんて、どうでもいいじゃないですかぁ! このままでは魔物、魔物が襲ってきます!」
私たちの睨み合いを断ち切るように、側近が悲鳴にも似た声を上げた。
「わかっておりますわ!」
「承知しております!」
そして彼女は、ふと思い出したようにこちらへ視線を向ける。
「それと、あなたの名前を教えて」
「僕は、タロと申します」
「タロさん、ですね。覚えたわ」
「タラ様、以後よろしくお願いいたします」
数分後、スカーロンの森には爆発音と剣戟の音が響き渡っていた。どうやら護衛として寄越された辺境伯の側近タロも相当な手練れらしく、後方でキャロルと並び剣を振るっている。
乗ってきた馬車の御者へ料金を支払い、持ってきた荷物を詰めたリュックを背負って徒歩で森へと入った。
このリュックの中には野営用の道具一式と、私とキャロルの衣類や日用品が入っている。
(私よりも重い荷物を平然と背負って、あれだけ剣を振るえるなんて……本当に頼りになるわキャロル)
本当なら、アイテムボックスを習得したかった。だが、この国は魔法の発展が遅れている。
そのため魔法に関する書物も少なく、隣国から買い付けたり取り寄せたりもしたが高価すぎて、結局は必要最低限の魔法しか習得できていない。
しかも、ミサロ殿下の婚約者だった頃は王城で王妃教育や執務に追われ、自由に使える時間すらほとんどなかった。
でも、今は王妃教育も必要ないし鉱山と慰謝料もある。これからは魔導者を集めて、たくさんの魔法を覚えるわ。
⭐︎
私の後ろで剣を振る側近のタロが、何匹目かの魔物を倒したあと、泣きながら私達に伝えた。
「ローリス様とメイドさんが強いことはわかりました。広い森での野営は危険ですので、さっきの場所へと戻りましょう。旦那様に知られたら怒られます!」
「大丈夫、野営地から離れているから。それに、この事は私からカエサル様に話すから、タロさんは心配しないで」
「私がお嬢様直伝の美味しい料理を作ります!」
魔物を見つけては魔石爆弾を投げつけた。スカーロン森に「ウギャア」「グオン」魔物達の悲鳴が響く。
でも……この魔物の量は前より増えている。もしかすると、スカーロン森のどこかで瘴気が発生しているのかも。なら奇跡の力が使えるはずの、妹に連絡すれば浄化してくれるかしら。
その力を、学園のときは見ることはなかったけど。小説の話だと妹のルルアには奇跡の力があったはずだ。
「お嬢様、考え事は後で!」
「ええ、わかってる!」
襲ってきた魔物に、魔石爆弾を投げつけた。この魔石爆弾は魔物の体に当たると、爆発して魔物に致命的な傷を負わす。爆弾で弱った魔物を剣士、魔法使いらが倒して終わり。
(この石に私の魔力をもっと込めれば、威力が上がるのだけど。それをしてしまうと、人を巻き込んでしまうから出来ないのよね)
でも、ひとつだけ案がある。魔石爆弾にありったけの魔力を注ぎ込み、そのまま地面へ叩きつける。




