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婚約破棄されましたが、辺境伯様と魔石爆弾で幸せになります!  作者: にのまえ


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3/8

3話

 あれからひと月後、ついに辺境へ向かう日が訪れた。

 公爵家へ戻ってからというもの、朝食はずっと一人、自室で済ませていた。けれど今日が最後なのだから、せめて挨拶くらいはしておこう、そう思い私は食堂へ向かった。

 

 だが、両親から返ってきたのは冷たい言葉だけだった。


「ローリス。ここを出たら、公爵家におまえの居場所はない。ニ度とここへは戻ってくるな」


「そうよ。輿入れのお金も渡したのだから、ここに帰ってこなくていいわ」


 両親は婚約を破棄された私がいまだに、ミサロ殿下を想っているとでも思っているのか。殿下と結ばれた妹のルルアに嫉妬して何かしでかすのではないかと警戒しているみたいだけど、そんな感情はこれっぽっちも残っていない。


 すでに私は殿下から、多額の慰謝料を受け取っている。

 さらに両親からはこれまで「使い物にならない」と放置されていた鉱山の使用許可だけだったが。今回、正式に譲渡してもらえた。


「ローリス、本当にあの鉱山だけでいいのか?」


「はい、お父様。権利書まで譲ってくださって、ありがとうございました」


「あんな使えない鉱山で満足してくれるなら、こちらとしては助かるよ」


 けれど両親は知らない。あの鉱山には掘れば掘るほど、価値ある魔石の原石が眠っていることを。小説の中でその価値を最初に見抜いたのは、後に皇太子妃となる妹ルルアと隣国から訪れた魔法使いシシャだった。


 二人の研究が進むにつれ、魔物から得られる魔石だけでなく鉱山から採掘される原石にも莫大な価値があることが、次第に明らかになっていく。


(火の魔石、水の魔石、風の魔石、土の魔石。そして、無の魔石)


 それらの存在が世に広く知れ渡るのは、まだ数年先の未来。けれど小説の知識を持つ私は誰よりも早くその価値に気づき、両親から鉱山の使用許可をもらった。


(婚約破棄後、妹は殿下と結ばれる。両親から愛されたことがない、私が最後に受け取ったって罰は当たらないわよね)


 もちろん、念には念を入れた。

 両親には正式な譲渡書類を書かせ、妹からも承諾を得ている。こうして晴れて私のものとなった鉱山。私はそこで採れる魔石の原石を加工し、数多くの魔道具を作りたいと思っていた。


 もっとも、この国ではまだ魔石そのものの価値すら、十分には理解されていないのだけれど。


(研究も遊びだと言われたわね)


『そんな、ガラクタが売れるのか?』

『おもちゃ遊びもいい加減にしなさい』

『お姉様が作ったものなど、誰が買うのかしら?』


 ゆえに魔道具を作ってもガラクタと言われて、国内で売れる見込みは薄い。私はこっそり隣国で売れるか実験した。なかなかの値段で売れることと、魔石に魔力を込めれば……あれを作れるも知った。


(さあて、必要な荷物も馬車に積んだし、さっさと公爵家を出て行きましょう)


 ⭐︎


 馬車に揺られること数時間「さてさて、困りましたわね」と私達は足止めを食らっていた。


 それは、辺境地へ向かう途中には大森林スカーロン森がある。この森は旦那となる辺境伯カエサルの領地であり、魔物の出没地としても知られている。約束ではスカーロン森の入口で、辺境伯カエサルと辺境騎士団が出迎える手筈になっていた。


 だが、そうはならなかった。

 早朝からカエサルと騎士団は急遽発生した魔物討伐に出ており、こちらへは来られないと側近から告げられた。


 しかも、その魔物が相当な強敵らしく、討伐には二日から三日かかる見込みだという。そのため私達には近くの街スズルの宿屋で「カエサル様が戻るまで待機してほしい」との伝言があった。


「スズルの街の宿屋に、二、三日滞在しろと……?」


「はい。そのように申しつかっております」


 だが、私は首を横に振った。


「いいえ、スズルの街に泊まる必要はないわ。スカーロンの森に出る程度の魔物なら、私とキャロルがいれば討伐しながら進められるわ」


「はい、剣の達人であるこの私とローリスお嬢様がご一緒なら、森を抜けるなど造作もありません」


 専属メイドのキャロルは使者としてやってきた側近に向かい、誇らしげに胸を張った。


 私達の態度に側近は目を見開く。だが、私達にとっては事実。魔法と魔導具を扱う私と剣に長けたキャロルがいれば、スカーロンの森程度の突破は難しくない。


 何よりこの森は鉱山へ向かうために、幼い頃から何度も通ってきた場所だ。


 それでも側近は首を横に振る。


「どうかおやめください。ローリス様に万が一のことがあれば、私は旦那様に殺されます」


 なに? カエサルに殺されると、その一言で彼が頑として譲らない理由は理解できた。


「なら、私が無傷でいれば問題ないのね?」


 私はにこりと微笑むと、その笑みに彼の顔色はさらに青ざめた。


(うーん、仕方がない。ここは証拠を見せるしかないかしら)


 私は馬車から木箱を取り出し、両手で抱えて開け放った。


「……光る石? これは何ですか?」


「これはね、全部私が魔力を込めて作った爆弾よ」


 一拍置いて、私は宣言する。


「名付けて魔石爆弾よ!」


「ま、魔石爆弾……?」


 側近が絶句し、キャロルの瞳がきらりと光る。


「ローリスお嬢様。その名前、前々から申し上げていますがダサいです。魔弾、魔石弾、魔法弾の方がいいと思います」


「まあ、魔弾? 魔石弾? 魔法弾? どれも違うわ。魔石爆弾の方が圧倒的に格好いいでしょう!」


「いいえ」

「いいえ、かっこいいわ」


 互いに一歩も譲らず、キャロルと視線がぶつかった。

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