2話
殿下と妹のルルアと、どうか幸せになってください。
一つの恋が終わった。婚約を破棄をされて自由になった私は領地に戻り、魔法の研究に没頭できると思っていが。二ヶ月後、専属メイドを一人だけ伴い馬車に揺られていた。
まさか、こんなことになるなんて。
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婚約破棄からひと月後、両親の許しを得て公爵家の領地へ戻る荷造りの最中だった私を、お父様が書斎へと呼び出した。
「いったい、なんの話かしら?」
(二日前、慰謝料が銀行へ振り込まれたばかり。まさかお金の話? 妹のために半分寄こせなんて言わないでしょうね?)
二人の婚約式は、今から二ヶ月後に執り行われることが決まった。両親は「やはり殿下には、ルルアのほうがお似合いだ」と声をそろえ、浮き立つような様子で妹の嫁入り道具を準備している。
それも仕方のないこと。昔から両親にとって大切なのは私ではなく妹のルルア。
だとすると両親は、私に支払われる慰謝料をあてにして、ルルアに少しでも良いものを持たせようと考えているのかもしれない。だからといって、私が受け取る慰謝料を渡すつもりはなかった。
そう心に決め、私はお父様のいる書斎の扉をノックする。
「ローリスか。入りなさい」
「はい、失礼します。お父様、何かご用でしょうか?」
そう聞いた私に、お父様は静かに告げた。
「……おまえに縁談が来た」
あと一ヶ月もすれば領地へ向かう予定だった私に、突然持ち上がった結婚話。あまりに唐突で思わず「お断りします」と口にしかける。だが、それより早くお父様は一通の手紙をこちらへ差し出した。
「ローリス、これを読みなさい」
「この封蝋は……!」
渡された手紙に押されていたのは王家の紋章。
震える手で封を切ると、そこには国王陛下直々に、辺境伯カエサル・バルキッサとの結婚を望むと記されている。
(お相手がカエサル様? それに、陛下からのご命令同然の手紙だなんて、断れるわけないじゃない……)
こうして私は自分の意思とは関係なく、辺境伯のもとへ嫁ぐことになった。
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私の結婚相手はカエサル・バルキッサ辺境伯は、一月前にご両親を事故で亡くし、若くして爵位を継いだ人物。
そして彼は私と同じ学園の卒業生でもあり、小説では妹、ルルアを愛していたはず。実際は彼とは接点がなくて、あまり関わっていないのでわからない。
(小説も最後まで読んでいないから、おわりまでの話は知らない)
めんどうごとに巻き込まれたくなくて、遠目に見ていたときも、妹のルルアはミサロ殿下よりもカエサルと親しく見えたし。舞踏会では彼にエスコートされてファーストダンスまで踊っていた。
だから私は、ルルアが選ぶのはカエサルだと思っていた。けれど、妹が選んだのは第一王子ミサロ殿下だった。
そう、恋に敗れたのは私だけではない。辺境伯となったカエサルもまた、叶わなかった想いを抱えた一人だ。そんな彼がわざわざ国王陛下を通してまで、私「ローリス」と結婚したいと申し入れてきた理由。まさか国境に近い辺境地だから、私が作る魔法や魔道具の力を噂で知ったとか。
(うんうん、それならありうる。そうね、魔物討伐なら私に任せてほしいわ)
国王陛下から直々の手紙が届いている以上、断ることなど難しい。それも理由の一つだけれど、たとえ陛下からの命がなかったとしても。この結婚を選ばなければ両親はきっと、自分たちにとって都合のいい相手を勝手に選んでいたに違いない。




