5話
やってみたい気持ちはある。けれど、どれほどの威力になるのか予想がつかない。一応、修復魔法を使えば元どおりには戻せるだろう。だが、だからといって軽く試していい話ではない。
(やるなら、鉱山の奥がいい)
周囲に被害が出ない場所を選び、しっかり結界を張ってから実験するべきね。
「くらえ! 魔石爆弾」
現れた魔物にぶつけた魔石爆弾に傷付き、声をあげる。
「爆弾で魔物達が弱った! キャロル、タロさん、後はよろしく」
弱らせた魔物は二人に任せて、私は新たに現れた魔物と睨みあった。
⭐︎
魔石爆弾を思いついて以来、私はスカーロンの森で、魔力石にどれほど魔力を込めれば魔物に致命傷を与えられるのか、その研究を続けさせてもらっていた。
『キャロル、どう?』
『もう少し、爆弾の威力が強くてもいいかと思います』
『わかった、次行くわよ!』
ある程度、集計が取れて実験が終わり、魔石爆弾で吹っ飛ばしてしまった地形、木々などは魔法で元通りに戻した。
だから、私がここの森で研究したなんて、メイドのキャロル以外誰も知らない。
「キャロル、タロさん、今日はここで野営しましょう」
「かしこまりました。ここにテントを張りますので、ローリスお嬢様は周りに結界をお願いします」
「ええ、わかった」
私とキャロルはお互いの作業を始める。その姿をまだオロオロしながらタロさんは見ていた。
数分後、テントの周りに結界が張られ、二つのテントと、石で組んだかまど後出来上がった。
「動いたから、お腹すいたわね」
「ローリスお嬢様。ここにさっき倒したばかりの魔物の肉があります」
「魔物の肉? いいわね、それを焼いて食べましょう」
「ひぇー! ま魔物の肉を焼いて食べる⁉︎」
私達の言葉に、タロさんは腰を抜かす。
タロさんが驚くのも無理ない、魔物の肉には多少なりとも、瘴気が含まれているが。
その瘴気を私は鑑定魔法で見抜く。
見抜いた箇所をキャロルに教えれば、彼女が素早くナイフで肉を切りとってくれる。
食べられない魔物の肉は、全て火魔法で燃やす。
まあ燃やしても、魔物の体に染み込んだ瘴気は消えないが。そのままにしておくと瘴気を含んだ肉を他の動物、魔物達が食べてしまい二次災害を起こしてしまう。
「おやめください、ローリス様。魔物の肉を食べるなんていけません! あれは毒です!」
「平気よ。魔法で鑑定して、食べられる肉の部位だけ切り取ってもらうから」
「この、私のナイフ捌きを見てください。私のナイフ捌きは、この国一優れています」
国一? キャロルがそう言うのなら、そうなのだろう。彼女に剣を握らせたら、そこらの騎士よりも強い。
なぜ、キャロルは強いのか。
ある殺し屋は、孤児院のある教会から偽造書類で彼女を引き取り、暗殺の技を叩き込み、殺し屋へと育て上げた。しかし一度の失敗を理由に、あっけなく見捨てた。
それから十年前、私が八歳の頃のことだ。キャロルは金も食料も尽き、空腹のまま王城へ向かう途中の私の馬車を襲った。
しかし、私の防御魔法によって跳ね返され、その襲撃は失敗に終わった。
『クソッ、なにこれ?』
『私の魔法よ』
『魔法?』
(この子……走る馬車に平然と飛び乗り、ナイフをかざしたわ。私と同じくらいの歳だけど、相当な腕の持ち主ね)
ちょうどその頃、相棒が欲しかった私は「お腹いっぱい食べさせてあげるわ。私のところへ来なさい」と彼女をスカウトした。
キャロルは殺し屋のときの経験なのか、荷物持ち、野営は慣れているし。私も前世、おひとりキャンプの経験がある。
タロがいまにも失神しそうな、魔物の肉を食べようと思ったのは。ある日、好奇心で「魔物って食べられるのかな?」と、キャロルの前で呟いたのが始まり。




