23話
「ローリス、大丈夫か?」
「ええ、カエサル様が支えてくれたから平気よ。いまの揺れ、いったい何が起きたのかしら?」
「なにか、非常にまずいことが起きたのかな?」
まずい事だと言いながら、落ち着いた様子のカエサル様。何か知っているようなので聞こうとしたとき、応接間の扉が開き彼の側近タロさんと、メイドのキャロルが入ってくる。
「ローリス様!」
「カエサル様!」
このときの、二人の温度の違いに私は驚いた。
だって、キャロルはニコニコと磨かれた愛刀を構えているし、タロさんは冷や汗をかきアワアワしていた。
「ローリス様! 何が起きました!」
「た、大変です」
「二人とも慌てるな。タロはまず落ち着け、さきに報告!」
「王都の東門の外に、古のドラゴンが現れました。発見されたのは、東方の国境近くにあるテーオの森です。すでに、こちらの魔女と騎士が討伐に向かい、周囲の魔物は討伐しました。しかし……古のドラゴンには攻撃が一切通じず、現在は守りに徹するしかない、とのことです」
(え? 何々、王都の東門に古のドラゴンが現れた⁉︎)
「まあ、キャロル! 東門にドラゴンですって!」
「はい、ローリス様。ぜひ見に行きましょう!」
目をキラキラ光らせ、キャロルに頷いた私の手をカエサル様が掴んだ。……あ、この鋭い目は、ぜったいに離してくれない奴だと瞬時に気付く。
「……カエサル様?」
「行こう! ローリスがドラゴンを見に行くなら、僕も一緒に行く。他の魔物はあるが、ドラゴンとは戦ったことがない!」
「ええ、カエサル様! 私もドラゴンは初めてですわ」
私たちは顔を見合わせ、そろって笑う。
ドラゴンと聞いてワクワクしてしまうなんて、私たちはやっぱり似たもの夫婦なのかもしれない。
その私達と、キャロルをタロさんは止めた。
「ま、待ってください!」
そんな私たちを、タロさんが慌てて止めた。
「ミサロ王太子殿下と、婚約者様はどうするのですか?」
「二人か……。ここにいてもらったほうがいいだろう」
「そうね。もし怪我をされたら危ないわ。それに、私たちが王城を出たら、すぐに城全体へ結界魔法を張るわ。ここが一番安全よ」
ドラゴンの出現に呆然としているミサロ殿下たちを置いて、私とカエサル様は淡々と状況を整理していく。
「タロ、陛下と王妃にこの状況を報告してくれ」
「承知しました!」
タロさんが慌ただしく応接間を出ていく。
「行こう、ローリス」
「ええ、行きましょう! キャロルもついてきて」
「はい、ローリス様!」
私たち三人が応接間を出ようとした、そのときだった。
「……嘘だろう」
背後から、ミサロ殿下の呟きが聞こえた。
私は一瞬だけ足を止める。
(殿下がチャハ国の王太子から受け取った魔石……あれも、魔物から採れる魔石なのかしら)
そんな考えが頭をよぎった。
けれど、今はそれを考えている場合ではない。
城の外へ出ると、私はカエサル様とキャロルを振り返った。
「カエサル様、キャロル。私から離れてください」
私は杖を取り出すと、すぐさま魔法を発動する。淡い光が広がり、王城全体を包み込むように結界が張られていく。
「これで大丈夫」
その言葉にカエサル様も頷き、私たちは馬小屋で馬を借りると、古のドラゴンが待つ東門へ向かって一気に駆け出した。




