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婚約破棄されましたが、辺境伯様と魔石爆弾で幸せになります!  作者: にのまえ


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22/25

22話

 二人は目の前で能天気に笑っている。


 けれど、「ただほど安いものはない」という言葉があるように、この魔導具の開発には、何か裏がありそうだ。


(チャハ国はいったい何が目的なのかしら?)


「カエサル卿、話に聞いたところ、魔石というものは魔物から採れるそうではないか。……実はな、チャハ国の王太子からもらった魔石を使い切ってしまった」


「魔石を使い切った? それで?」


(ああ、もう……嫌な予感しかしないわ)


 ミサロ王太子殿下は、カエサル様に向かって満面の笑みを浮かべた。


「辺境伯領には魔物が出る。そこで採れる魔石を、少しばかり俺にも譲ってくれないか? それと、ローリス嬢も貸してくれ」


「ねぇ、お願いカエサル。魔石を頂戴。それから、私の騎士になって側にいなさい」


 妹はミサロ王太子殿下だけでは物足りないのか、カエサル様を「カエサル卿」と呼ぶことすらやめていた。


 まるで、カエサル様が自分のものだと言わんばかりに、彼へ向かって手を差し出している。


「無理です。僕はローリスのものだ! いい加減にしてくれ!」


 その瞬間。ピシッと音がしたように、ミサロ王太子殿下とルルアの動きが止まった。どうやら、カエサル様が停止魔法を使ったらしい。


 よほど二人の物言いに腹を立てたのか、カエサル様は乱暴に前髪をかき上げた。


「こいつらは、そんなくだらない理由で僕たちを呼んだのか! 何が『ローリスを貸してくれ』だ! 何が『私の騎士になれ』だ! 自分たちの仕事もろくにやっていないくせに、口だけは達者だな!」


 カエサル様が怒りのままに声を荒らげる横で、私は妹が頑なに手放さなかったノートを取り戻した。


(これは私の大切な思い出だから。返してもらうわね)


 けれど、そんな私の横では、まだカエサル様の怒りが収まらない。


「許さない……」


「カエサル、少し落ち着いて」


 私は彼を宥めながら、ふとミサロ王太子殿下の言葉を思い出した。


「それにしても、チャハ国の王太子殿下からもらったという魔石。気にならない?」


「気にはなっている」


 カエサル様は腕を組み、険しい表情を浮かべる。


「もしかすると、魔素を浄化していない魔石の可能性が高い。……ローリスには伝えていなかったが、最近、王都周辺で魔物が増えているという報告を受けている」


「それ、本当なの?」


 私が尋ねると、カエサル様は静かに頷いた。


「こちらから派遣した魔女と騎士が、今は魔物を討伐している。だが、僕が一声かければ、辺境伯領に戻ってきてもらうこともできる」


 もしカエサル様が討伐隊を辺境伯領へ戻したら。王都はたちまち魔物に襲われる可能性がある。


(その魔物を、キャロルと私の魔石爆弾――グレネードで討伐する? それはそれで楽しそうだわ)


「……その顔。ローリス、ダメだからね」


「え?」


 カエサル様の真剣な瞳が、私を射抜いた。

 どうやら、私の考えていることが読まれてしまったらしい。


 辺境伯領では「危ないから」という理由で、私は討伐に連れて行ってもらえることが少ない。


(前に駄々をこねて、一度だけカエサル様と本気で勝負したけれど。見事に負けたのよね)


 カエサル様は私よりも魔力量が多い。


 しかも、その膨大な魔力を器用に使いこなしている。魔力の量なら私だって負けていないけれど、今の私ではまだ彼には勝てない。


「僕に内緒で動いたら、僕の部屋に監禁するからね」


 カエサル様の目は、本気だった。


「だ、大丈夫。勝手に行かないから。それより、そろそろ二人の魔法を解い。きゃっ!?」


 突然、大地が大きく揺れた。

 王都全体を揺さぶるような、激しい揺れだった。

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