15話
お義父様とお義母様へ「王都へ行ってまいります」と手紙を送り、翌朝早く、私とカエサル様は王都へ向かう馬車に乗り込んだ。
馬車の後ろには護衛騎士たちが続き、その中にはメイドのキャロルの姿もある。
「乗馬なんて久しぶりです!」
弾んだ声を上げながら、キャロルは軽やかに馬を走らせていた。
(ふふっ。久しぶりに馬に乗れて、とても嬉しそう)
私は馬車の窓から、その楽しそうな後ろ姿を眺めて微笑む。
一方、向かいの席では、カエサル様が何枚もの書類に目を通していた。王都へ向かう道中でも仕事を片づけているあたり、本当に忙しいのだろう。
「カエサル、何か手伝えることはある?」
そう声をかけると、彼は書類から顔を上げ、ふっと柔らかく笑った。
「いや、大丈夫。それより、ローリスはぼくの隣に来てくれないか?」
「え、は、はい」
私は素直に隣へ移動する。するとカエサル様は、そっと私の肩に頭を預けた。
「えっ……」
思わず目を丸くすると、彼は安心したように小さく息をつく。
(学園では、いつも凛として頼れる人なのに……)
こうして二人きりになると、甘えるように身を寄せてくる。そんなギャップが愛おしくて、私は思わず頬を緩めた。
もちろん魔物と戦う姿は素敵。
執務を行う姿、真剣な表情。
私に笑いかける笑顔は素敵だ。
(妹ばかり愛した私の両親とは違い。辺境地で優しい人達ばかりに囲まれている、彼のお嫁さんになれて毎日が幸せだわ)
「楽しそうだね、何か良いことでもあった?」
「ええ、毎日が幸せだなって……あなたのお嫁さんになれてよかったって、思っていたの」
「ぼくもローリスの旦那になれて幸せだ。今晩、可愛い僕の嫁を、抱き潰してもいいのかな?」
「え?」
その一言で、昨晩の激しい夜を思い出してしまう。彼に求めてもらえるのは嬉しいが。いまはあの二人に会うため、王都に向かう途中で、王都に着く手前の街で一泊するのだけど。
「求められるのは嬉しいですけど。今朝のように寝坊して、起きられなくなります」
「ハハ、そうだね。今日は優しくローリスを抱きしめて眠って、激しくするのは終わってからにしよう」
「もう、カエサル」
求められるのは嫌じゃない。
でも、頬が熱い。
「こんなに可愛い僕の嫁を、奴に見せたくないな。今頃になって優秀だと気付き、力を借りたいなど許せない」
「私も同じ意見です」
ミサロ王太子殿下は私の魔法に関しては、まだ知らないと思うし。辺境伯の力を侮っている。カエサルは私よりも魔力、魔法に長けている。
ご両親の力を受け継いだ、カエサルはこの国一番の剣と魔法の使い手。これに私の魔石爆弾が加わり最強となっている。
「二人との話し合いで面倒になったら、魔石爆弾投げてしまうか」
魔石爆弾を投げる?
「ええ、そうしましょう。少量の魔力を込めた魔石爆弾なら、怪我もしないと思います。元になる魔力石を持ってきました」
「ローリスも? 僕も持ってきた。ハハハッ、僕達は最高に相性のいい夫婦だね」
「フフ、そうね」
私たち辺境に暮らす者は、どこの土地へ行っても生きていける。だから、お義父様もお義母様も昔から口癖のように言っていた。
「この国が嫌になったら、国を捨ててもいい。生きる場所はいくらでもある」と。




