14話
いくら二人に断りの手紙を送っても、彼らは一向に諦める気配がない。それどころか、一通送れば倍になって返ってくる始末。
そして届く手紙の内容は、どれも似たり寄ったり。
「僕を助けてくれ」
「君だけが頼りなんだ」
「どうして助けてくれない?」
「カエサルはお姉様より、私の方が大切でしょう?」
「かわいそうな私を見捨てるの?」
「ねぇ、お願い、助けて!」
二人は自分のことばかりで、こちらの事情など一切考えていない。
「忙しいのに……」
私は思わずため息をついた。
今、お義母様とともに魔石爆弾の精密化、魔石回復の研究を進めている最中。カエサル様もお義父様の助力はあるとはいえ、執務に領地経営、さらには魔物討伐と多忙を極めている。
そして今日も、彼は魔物討伐へと向かうところだった。
「カエサル様、どうか無理はなさらないでください」
「大丈夫。僕にはローリスがいるから頑張れる。ローリスこそ無理をするなよ」
「はい……。お気をつけて、帰りをお待ちしています」
私はカエサル様を見送った。
⭐︎
時が経ち、私たちが結婚して一年が過ぎた。
カエサル様と辺境騎士団は魔石爆弾や魔石回復の運用を本格化させ、魔物討伐や負傷者の治療の効率は向上していた。
一方で私は、火属性・水属性など、状況に応じた魔石爆弾の開発に没頭している。
「カエサル様、ただいま戻りました」
「おかえりなさいませ、ローリス。疲れているところ悪いが、少しよろしいか」
帰還したばかりの私は、メイドのキャロルを伴って鉱山から戻った足で、そのままカエサル様の執務室へと呼ばれた。
そこでは、渋い表情のカエサル様が王家の封蝋が押された、一通の手紙を差し出した。私はそれを見てため息をつく。
「はぁ……また、妹からの手紙ですね」
「ああ。ローリスのところにも、あのバカ王太子から来ているだろう」
「はい」
ひと月前、ミサロ殿下は王太子となり。妹もその婚約者として、王宮での務めに追われているはず。それでもなお、お二人からの手紙は毎月のように、私達たちの元へ届き続けている。
「内容も、いつも同じですね」
「ああ。すでに夫婦になったと伝えているのに、王都へ来いと繰り返す……いったい僕たちに何をさせたいんだ?」
「本当に。何をさせたいのでしょうね」
そう言いながらも、答えは出ない。
手紙の最後には決まって「話がある、一度王都へ来てほしい」と書かれている。
とはいえ、辺境から王都までは馬車を飛ばしても三日はかかる距離だ。今は魔石爆弾と回復の運用で魔物討伐の負担は軽減されているが、騎士団に任せきりにもできない。
(それにお義父様とお義母様は、隣国の“美肌の湯”が出るという温泉へ旅行中……)
私はしばし考え込んだ末、口を開いた。
「カエサル様一層のこと王城へ向かい、お二人に手紙をやめてもらうよう、直談判しませんか?」
「なに? 直談判か。そうだな、ここで考えていても埒があかない。それに」
カエサル様はふっと笑みを浮かべる。
「あの二人に、僕たちの関係を見せつけてやるのも悪くない」
そう言うと、彼は私を引き寄せそっと口づけた。




