表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄されましたが、辺境伯様と魔石爆弾で幸せになります!  作者: にのまえ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/16

10話

 翌日。私たちは無事にスカーロンの森を抜けたものの、一息つく間もなく屋敷へ到着し、私はそのまま身体を清められ、ウェディングドレスへ着替えていた。


(小柄な妹とはサイズが違うのに……どうしてぴったりなの?)


 ドレスもヒールも、まるで最初から私のために用意されていたかのように身体へ馴染む。身長だって私の方が高いのに、不思議だった。


「ローリス様、ドレスのサイズはいかがでしょう?」


「ちょうどいいわ。ありがとう」


 そもそも、屋敷へ着いてすぐ結婚式だなんて聞かされていない。


 けれど、ここは辺境の地。何が起きてもおかしくない場所だ。私自身、何度も訪れているからこそ、この土地の厳しさも理解している。


 ……それにしても、準備が早すぎる気がした。


 カエサル様との婚約が決まったばかりなのに、到着したその日に結婚式だなんて。


(別に、嫁ぐために来たのだから構わないけれど……)


 それでも、私好みの部屋まで用意されていることには驚いた。


 鏡に映る、困惑した表情のウェディングドレス姿の自分を見つめる。


(おかしいわ……これは愛されない“白い結婚”のはずなのに)


「ローリス様、お時間です」


「は、はい。向かいましょう」


 領地の教会は建て直し中のため、式は屋敷内で執り行われた。


 けれど会場には色鮮やかな花々が飾られ、美味しそうな料理が並び、辺境騎士や使用人たちの祝福の声と笑顔に満ちていた。


 その中で、一番驚いたのは――隣に立つカエサル様の表情だった。普段の彼からは想像できないほど穏やかで、幸せそうに笑っている。


(もしかして。私、愛されているの?)


 ⭐︎


「……ローリス?」


 気づけば結婚式も披露宴も終わり、外はすっかり夜になっていた。お風呂上がりなのか、ガウン姿のカエサル様が私のそばにいる。


 私もまた、披露宴のあとキャロルや辺境伯家のメイドたちにお風呂へ入れられ、丁寧に髪や肌を整えられたあと、淡いブルーのナイトドレスへ着替えていた。


(私が用意したものじゃないから。この色はもしかして、カエサル様の好みなのかしら)


「綺麗だ、ローリス」


「カエサル様……」


 先ほど、結婚したのだ。

 つまり、これから初夜を迎える。


 私はてっきり、式だけの形だけの夫婦で、「君を愛することはできない」と告げられるものだと思っていた。


 けれど今、彼が向けてくる視線はあまりにも熱を帯びている。


(白い結婚では、ないのね)


 胸がどくどくと音を立てる。


 殿下の婚約者だった頃、私は魔法研究ばかりしていた。けれど前世の記憶もあるし、本でそれなりの知識は持っている。


「ローリス」


 甘く囁く声とともに、長い指先がそっと私の頬へ触れた。


(あ……)


「ローリス……ぼくのローリス」


「カエサル、様……」


 耳元で優しく名前を呼ばれるたび、胸の奥がじんわりと熱くなる。


 信じられなかった。知識だけしかなかったはずなのに、彼に触れられるたび身体が甘く痺れていく。


「……っ」


 初めてへの不安に身体が震える。

 本では痛みがあると読んでいたから、少し怖かった。そんな私を察したのか、カエサル様は安心させるように穏やかな声を落とした。


「大丈夫だ、ローリス。力を抜いて」


「あ……っ、ん……カエサル様……」


 彼の指先も、抱き寄せる腕も、まるで壊れ物を扱うように優しい。


 その優しさに包まれるたび、張り詰めていた身体から少しずつ力が抜けていった。


(ああ……カエサル様)


 ⭐︎


 すべてが終わったあとも、カエサル様はずっと私を優しく抱き寄せてくれていた。そのぬくもりが心地よくて、幸せで、自然と瞼が重くなっていく。


「眠そうだな、ローリス。……ゆっくりおやすみ」


 低く穏やかな声と、髪を梳く優しい指先。


「……はい。おやすみなさい、カエサル様」


 額へそっと落とされた口づけに目を細めながら、私は彼の胸へ身を寄せた。規則正しく響く鼓動が安心をくれて、そのままゆっくり眠りへ落ちていく。


 翌朝。


 目を覚ますと、いつの間にか身体もシーツも綺麗になっていた。隣では、カエサル様が穏やかな寝息を立てている。


(この人が私の)


「旦那様……」


「なに? ローリス」


 眠っていると思っていた彼が、ゆっくりと瞳を開いた。


「カエサル様……起きていたのですか?」


「どうだろうね」


 くすりと笑った彼は、私へ素早く口づけを落とす。


「体は平気?」


「……はい」


「それならよかった」


 そう言ってベッドを抜け出した彼は、ガウンを羽織りながら振り返る。


「着替えたら朝食にしよう」


 部屋を出ていく背中を見送ったあと、入れ替わるようにキャロルが入室してきた。私はお風呂を済ませ、ドレスへ着替える。護衛としても優秀な彼女だが、メイドとしての仕事も完璧だった。


「ローリスお嬢様。じゃなかった、ローリス様。よかったですね」


「……よかった?」


「もし旦那様に愛されなかったら、私がローリス様を攫おうかと思ってました」


「え?」


「でも、その必要はなさそうです」


 意味深に笑ったキャロルは、支度を終えるとそのまま部屋を出ていく。すると入れ替わるように、再びカエサル様が部屋へ入ってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ