廃城地下
肩からの突進で半端に解かれたバリケードを押しのける。
構えたままの武器を振るう。すると、伸び上がった剣身が周囲を打ち据えた。
ざっくりと何もない。
踏み込める。
そもそもの話、遭遇戦だった。
互いに何かしらの準備もまた半端なものと考えられるのだ。
扉の一つを蹴破る。
布の塊が一着、ほかは誰もいない。
いいや、違う。
金属のヤイバが空気を裂いた。
黒い装束の二人組が抜剣し振り返っている。
リエントは一も二もなく片方に斬りかかり、膝を踏みつける。
くぐもった声
反応できていないのだ。顎を掴み剣を差し込む。すぐさま蹴り飛ばす。
もがいたものの人ならば致命傷だろうか。
違ったところで、一方の反応を牽制するのはそうなったのだ。
躱した男の武器が微かに松明を反射し迫ってくる。
黒塗りなのか?
身を躱す。暗いせいだ間合いが読めない。
防御に意識が割かれ振るわれた追撃を部屋の奥へと移動する事で回避する。
布の塊が動き出した。
真後ろ、白く或いは明るい色、そうだ。だからだ。何かがおいてある。そこまでしか判別できなかったのだ。“中身が入っている”
身動きをリエントの目が見咎める。
ふと、剣先を振るい。奥の何かに剣を向けてーーーそして当然止まった。
薄暗いが、小さな顔についさっきも見ていた服装。
顔見知りの少女だ。
眼球が見開かれる。じいっと、焦げ付く様に互いの視線が交わった。
吐息がふうとかかる。
「まあ、英雄様みたい」
エフィ?なんでここに
脳裏によぎる疑問もそこそこに少女の手を取ろうとして後ろ手に、そして腹の辺りで縄が回っていることに気付く。縛られているのだ。
解くか?
ダメだ。敵対者は一人残っている。
回転するように武器を振り回して確認もそこそこに相手を追い立てる。
だが、近づかれた。そりゃそうだ。
分かっていることだ。
剣を立てて、受けた。
敵手の手元には短い武器だ。おそらくローブの下にすぐに入っているだろう武器、見られちゃまずいと言わんばかりのリーチは短い。
足を上げようとすると圧がかかる。
少しよろめき狭い室内を火花が照らす。
離して距離を押し付けるつもりなのは分かっていると、ならばこそ無意味だろう。室内が狭すぎる。リエントは剣に力を込め直す。
ちりん
場違いなほどに金属の落ちる音が響いた。
どこから?
「あら、欠けてしまいました」
質問に答えるように何処か鈍感な言葉が聞こえる。
今この場においては鋭い刃に鈍器を叩きつけるように決定的で破壊的な声だ。
リエントは意識が逸れた。だが、敵対者は驚愕した。
エフィだ。エフィがやけに鋭い短剣で縄を裂いていたのだから
「やっぱり、見覚えのありますね。こちらを借りましょう」
かちり
妙に慣れた動きで少女は死体から武器を取る。
恐らくは短剣だ。二人してそう思った。だからこそリエントは前目乗りに追撃の姿勢をとる。
弾かれたように敵対者は距離を取ろうとする。
二人になるのだからそりゃそうなる。
「折りたたみ式の弓矢ですね」
その言葉を聞いた事を最後に空気を切る音が届く。
そうだ。例えば、訓練を受けていない者なら弓を引いてもどこに行くかわからないだから勘案の外なわけで
何を分かり切ったことを、そう言わんばかりの動作で短い取り回しの弓矢を揃えて引き抜き番えて見せるのは全くどちらにとっても予想だにしないことであった。
首を貫いて、人ひとりが倒れるまで
「こぷっ」
意外なほどに滑らかに構えられた弓矢で目を剥いた盗賊の仲間であろう男があっさりと倒れ伏した。
「私もそれなりにはできるんですよ」
どこか得意げな声が確かに聞こえた




