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枝葉刈り

 人とは数である。

物は多くあることこそが正義であり、それは生産だけに止まらず経済流通。もちろん戦い全てにおいても正しく。それ以外の結論は存在しない。

 高い官位を預かるバルザスは常々そう考えている。

勿論、局所的な例外は存在する。連携が取れず横転する事もあるだろう。

だが、それもまた一時の話だ。ならばやはり数こそが正義なのは正しく。


 故にこそ世界の要と呼ばれる伝説の武器すら不要だとバルザスは唱えている。

愚昧な生贄にもいい加減わきまえてもらわなければならない。

ーーーー

 声に引き寄せられるように移動したエフィと、村人に引き寄せられる。

「さ、山賊が出たとは聞きましたが作物と家を焼き払えなどと、ここで生まれたものもいるんですよ。殺す気ですか!」

 焼き払う?

動揺を孕んだ大きな声に思わず振り向いた。

「違う!お前たちは聞けばいい。いいか。これはお前たちのためなんだ。あんなのじゃない。逆らえないんだよ」

人が集まってくる。

暫く考えても話している当人たちでさえ見えなくなり、やはり思い出せないということがわかった。

 隣の村人の袖を引っ張る。

「あいつは、何?」

「代官様だよ。普段は平地の方の街にいるんだけど徴税の時期になるとやってくるんだ。…なんで知らないんだ」

なんでだろう?

「それで税率で揉めてるの?」

「いや、今年はもっと先だったと思うけども」

山賊?

「いいから、田畑を焼き払え。いや、もういい。お前らさっさとやれ。俺は睨まれたくないんだ。ほら、率先してやったら平地の方で新しい場所やるから」


「山賊が出た。でしたか?」

いつのまにか小さな影が人山の真ん中に割り込んでいた。

「そうだ。あんたは、なんだ」

 ヴェールを被ったその小さなエフィの姿はどう見ても村の人間ではなかった。

代官の目が行ったり来たりして何度か服の刺繍の上で止まる。

「いや、貴族の御令嬢…」

「もしも、貴方がこの地域、王の直轄領の一つであるこの村の代官、守護者たる王家の代理人というならば痴れ者に対する対応は一つだけです。補足し撃滅する事でしょう?」

静かに少女は問いかける。何処か空恐ろしいような。ああ、そうだ。啖呵と存在感、普段の柔らかな気配からは想像もできなような聳える壁のような大きさを感じているのだ。

 せいぜい。転生後のリエントと同程度の年齢の娘に対してだ。もっと幼くても全くおかしくないのに

「し、しかし」

「それとも戦力がたりませんか?ならば、一旦防ぐ方に回りなさい。王族ならば例外を除き幾つかの常備軍をそれぞれ持っています」

「あ、アンタがどこの誰かは知らないが分かってねえ。突拍子もなくここに被害報告“すらなく”山賊の話が上がったんだ。しかも、あの手紙の派閥は…」

「被害報告がなく?」

「そうだよ。ないんだ。脅しだよ!おれぁ脅されてんだよ。邪魔したら殺すって、だからなるべく意にそうようにこの山を切り離さないとなんねぇんだ」

 半泣きで掴みかかる男に対してエフィは、少し考え込むと言った。

「でも、やはり問題はありませんね」

「は?アンタ、話を聞いてたか」

「存じております。ですが私はそのどちらかという山賊については詳しくありませんし」


 エフィは、そう、大人が嘆くような自体を矮小に考えてしまうくらいには幼い娘は言った。

「それに伝え聞くにはその手の悪漢は、英雄か騎士がやってきて倒すのでしょう?それを確かめに参りましたの」

 一瞬、誰もが静まり返る。ナニヲ言っている?

勿論、リエントも聞き間違いかと思った。聞き間違いというか理解できないというか

誰も言葉が出ないのだ。視線の先の彼女は、さっきの姿とはまるで別人。

いいや、リエントの知る限り妙に英雄の話を好む娘ではある。

エフィは剣とビー玉のような石を付けた杖ーーー装飾杖を手元に触れて微笑んだ。

「ああ、そうだ。この山には古い国境のための山城がありましたわね。折角ですし私も同行いたしましょう」

「し、失礼ですが娘さん。御父上の爵位の方は」

「え?そうですね。…困りました。ああ、でも山のお墓の人達と同程度でしょうか」

「や、山のお墓……コウシャク?!」

コウシャク、公爵、侯爵?いつも住んでるあそこかな。

ふと、気になってる隣の男に尋ねて見た。

「代官の人、貴族なんだよね」


「騎士爵だよ。1番下の一代貴族」

 ああ、なるほど

 言うならば、警官が潜入中、マフィアの跳梁跋扈する場所にその上司の子供が入り込んでいるようなものか。しかも、案件自体が政治ゲームで酷いことになっていると

「大変だな。あの人」

 ふらっと消えることにした。そりゃあそうだ。厄介そうなものは見つけ次第で先手を打って始末するに限るが、それは更なる平穏のためでしかない。

きっと終わるならまさしく他人事だ。


人集りから離れようと後ろを振り返ったところであった。

山だというのに、或いは険しい道にも慣れている良馬だったのか簡易的な甲冑すらまとった一団が入り込んで、見渡す。

退けと警告する村人を割る声を聞くまでもないさっと横にずれるとジッと出方を伺う。

 云うならばそう護衛と言った風体だった。

手勢がいたのか。ならば恐らくは

「姫様。我等一同、遅参いたしましたこと誠に申し訳ございません」

「許します。それより賊が涌きました。ここは陛下の治める地。早急に潰すように」

「その件について報告が御座います」

「述べなさい」

「はっ。機密につき場を用意して頂きたく」

エフィが一つうなづく。

すると、村長の老人が返す。

「承知しました」

 数人は家の中へと消えて行く。

ある種の集会場のような役割も持っているのが村長の家らしい。

人の流れにもんどり打って男、共に来たちゃらんぽらんな男が声を上げる。

「お、いたいた。お前はいかなくていいのか?」

「呼ばれてないし、理由もないし」

「でも客なんだろ?」

いや、聞いたら殺されそう。それとも聞いておいたほうが何かしやすいのか

しかしキラリと目を光らせると男はいう。

「ていうか気になるし聞いてきてくれよ。マジ面白そう」

エフィは知り合いだし、いつもの雰囲気なら大事には至らないか。

 それに…

布で巻いて運んでいた武器に手で触れる。コレはともかくリエントのチートは少なくとも人が集まるよりも早い方がいい。

「なあ、聞いてるか?」

「お前は、いつまでやってんだい。決まるまで仕事に戻りな」

「ちょっと待てよ。婆さん。おっおい。リエントはいいのかよぉ。あ、あれ?」

 家をさっと調べる。川の方に直接面したいやに大きい家。

ある程度大きな台所があるのだろう。村長宅に違いない。

 壁に触れる。リエントはうるさい人間をその場に残しスルリと“抜ける”。

ーーーー


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