見送り見送れず
リエントの住む小屋と墓はある集落の外れにある。
「ふう、相変わらず足場が悪い。いっそ整地すべきかしら?」
山の中なんだけど難易度考えてるのだろうか。
エフィの手を取り段差から下ろしながらちょっと思う。
「あとちょっとで集落だよ」
「ええ、険しいものですね。ありがたく手をお借りします」
まあ、この人は毎度ことながら単独で上がってきてるのだが…なんでだろう。猫被り?
通るものはほとんどいない獣道だ。墓参りに来る客もエフィくらいのものか。
集落と単に呼んでいる民家の集中する土地に名前があるのかは知らないが、山間に切り出された田畑の並ぶ場所であった。
滅多と降りてこないが、多分家業だろう墓守の関係の金銭が手に入った時だけたまあにやって来る。だからなのか、客人、というより殆ど時間泥棒の敵のような扱いだ。
酷い話だ。機会があれば陥れてやろうと思う。きっと世界も清浄になってくれる。知らんけど
とはいえ、話す人間も多くないだけでいる事はいるのだ。
例えばそう、さぼる口実ができたと言わんばかりのそこの長男坊とか
「よお。お前が降りてくるなんて珍しいじゃないか。そっちのはたまに見るお嬢さんか」
いつの間にかヴェールと帽子で顔を隠したエフィは軽く会釈をする。
「ああ、客だな」
特にはもてなして無いし、お茶菓子も彼女持ちだが
「へえ、お前さん。何かしらの仕事はしてるんだな。普段、何やってるかわからないのに」
肩を竦める。
「おっと、そろそろ睨まれるな」
「サボりはほどほどにした方がいい」
閉鎖的なコミュニティから抜け出したオレのような勝ち組でない限りなとリエントは思う。
なにせよく分からないけど生活もできてるんだぜ。めちゃこわい
「いや、生存と貯蓄が目的なのにそんな厳密な事にはならねえ。というか、お前と話してると村のジッ様は話すなとか言い出すんだが」
「まあ」
「それは知らないが」
どこか困ったようにエフィが呟く。むしろ何か知っているんだろうか。
「父さん達は人にあるまじきゴミだとかなんとか」
「なんでまた。嫌われてるのやら」
「てなわけで、お前普段何やってるの?。暇なら手伝ってくれない。分けるぜ。それなら、いいっしょ」
「そりゃあ」
農耕作物か。確かにたまには食べたい。
ちょんちょんと、服の裾を引っ張られる。
「私、そろそろ参りますね」
「ええ、ああそうだね」
「え?紹介してくれねえの」
ふふふ、と娘は笑う。
どちらでも良いのだろう。
「あまり大っぴらに名乗れるほどのものではありませんので」
「マジで?警邏の兵士来てんだけど」
犯罪者扱いかよ失礼だな。
しかし、気にした様子もなく応じる。
「まあ?、こんなところにですか」
不思議そうにエフィは首を傾げる。
ここは、いや地形なんて知らない。
「国の内部も内部、なのに」
けたましくも音が響く。田畑の先で慌ただしく走り回るのは鎧を纏った人だ。
騎士だろうか。
「ありゃ、なんだ。長老の爺さんじゃないか」
手をあげて村人が伺う。騎士というか、おそらく非戦闘員だろう紋章入りの服を纏った男がいる。長老だという男を振り払っている。
すると、険悪にも兵士が立ちふさがり出した。
エフィはそれを伺うと振り返る。
「それではリエント卿。私は参りますね」
止める間も無くエフィは行く事を告げるが…
嫌だな。何かあったなら
関わる関わらずとも、いずれは呑み込まれるかもしれないのだから
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