五章 一話 トトの想い
ココちゃんが勇気を出して、武器を作ることが嫌だと、
はっきりトトさんに伝えた日の翌日…
私は前日にトトさんに時間を作るように言われていたため、
石工場のある家へと向かった。
石工のロクさんのご厚意で、居間の囲炉裏のある場所で、
トトさんと話をすることになった。
「それでトトさん、お話しというのは?」
トト「まずはココの件、感謝する。」
と頭を下げてきた。
「何度も言っていますけど、私がやりたくてやって…
いえ、ココちゃんが凄いんですよ。
自分で勇気を出したんです。
私はトトさんを呼んできて、ココちゃんに会わせただけです。
それにココちゃんの心を開いたのはソエルとルカです。
お礼ならソエルとルカに言ってください。
きっと喜んでくれますよ。」
トト「ルカとソエルか…今度、子らに会ったら、
しっかり礼を言わんといかんのう。」
「そうしてください。」
ルカとソエルはどう思うだろう…
そう考えているとトトさんがうつむきながら、
本題を話し始めた。
トト「それでじゃ。話なんじゃが、
昨日、ココと話し、ココの自の考えを聞き、
ワシは間違えていたと思うて、考えておった。
でじゃ、ワシもようやっと気が付いたんじゃ。
ワシはな…ワシの気持ちを押し付けておったと……
そのワシが昨日の今日でココに会いに行くのも違う気がしとる。
それでのう…ワシは当分ココには会わんようにしようと思うとる。」
そう言うトトさんは、少し寂しそうな顔をしていた。
「え!?それはなぜですか?
やっと分かり合えたんです。
これからもっと会話が必要になると思いますよ?」
折角誤解が解けたのに、トトさんが距離を置くと言い出したので、
私は戸惑いながらも理由を尋ねた。
トト「ココは今までワシの期待に応え、
自がやりたいことを我慢しとった。
ようやっと、ワシにその気持ちを伝えたばかりなんじゃ。
ワシが傍におってはワシに遠慮してしまうかもしれんしのう。」
トトさんのその言葉を聞いて納得してしまった。
確かにトトさんの言う通りかもしれない。
「そういうことなら分かりました。
それでも、たまには顔を出してくださいね。
折角親子の溝が埋まったんです。
トトさんはココちゃんを大事にしているし、
ココちゃんもトトさんが好きだから期待に応えようと必死になって、
そして悩んだんだと思いますから…」
トト「そうじゃのう……そうじゃと嬉しいが……」
「そうだ!トトさんの水路作りの手伝いをお願いしてみては?」
スキルの事を私が言うのもおかしいと思い、
そのことには触れずに、一緒に作業をすることを薦めた。
トト「ココも一緒にか……
しかしワシと一緒では鍛冶場の事を思いだすかもしれんしのう…」
そう言ってくれたトトさんは少し不安そうな顔をしていた。
「不安はわかります。
でもトトさんが水路を掘って、ココちゃんがそれを手伝う。
鍛冶以外を一緒に作業する良い機会じゃないですか?
今までのすれ違いを直す良い機会にもなると思います。
もちろん、ココちゃんの気持ちが大事ですけど。」
トトさんはその言葉に少し戸惑ったような顔で言葉を返した。
「しかし、今まで押し付けておったワシと、
一緒に作業をするとは思えんが……」
「それは勘違いだと思います。
ココちゃんが言っていたのは、
人を傷つけるものを作りたくないと言ってたんです。
貴方との作業を嫌だとは一言も言っていないと思いますよ?」
トトさんがココちゃんと距離を取ることが、
何か違うような気がして、トトさんの言葉を否定していた。
その言葉を聞いても納得がいかない様子のトトさん。
それでもその言葉を確かめようと思ったのか、
「わかった。じゃがワシからは誘わん。
ココが言うてきた時だけじゃ。」
「それで良いと思いますよ。
無理に一緒に作業をするのが正しいとも思えませんし、
今はココちゃんの好きなようにさせてあげるべきです。
もちろん駄目なことは駄目と教えますので、安心してください。」
「よろしく頼む。」
「ではいつでも様子を見に来てください。」
「わかった。」
トトさんはココちゃんが心配で、
自分から距離を取ろうと思っていたのか……
ただのすれ違い。
そのすれ違いが時に怖いものとなる。
私はそれを改めて実感したのだった。
※ドワーフの言葉について
ドワーフは洞窟内での生活から、短い言葉を使うことがあります。
「自」=自分、「他」=他人として表現しています。
なお、カカは人との交流が多かったため、人の言葉遣いが染みついており、
こうしたドワーフ特有の言葉をあまり使いません。




