五章 二話 遊具の提案
トトさんと話を終えた私は、
家の前を通り過ぎ、北東の門を開け、
ため池の場所へ足が向いていた。
今日は休みにしていたのに……
ため池の底は少し湿っていた。
昨日の夜、雪でも降ったのだろうか…
そして穴の縁を見つめた。
ココちゃんが圧縮を使った場所だ。
私はココちゃんが固めてくれた箇所に触れてみる。
私が圧縮して固めた場所と、
ほとんど違いがない。
「凄いな…隠していたスキルを使っているはずなのに、
私が圧縮した場所と違いが分からない……」
何気ない呟きがもれていた。
ココちゃんは家族にスキルを隠していた様子だった。
それで私と同じくらいだという事は、
私自身もあまり使っていないという事なのか…
私自身の貰った力とはいえ、祝福の【クリエイト】は、
素材がいらない。ポイント次第で魔法の効果も付与できる。
あきらかにチートに近い性能だ。
でもスキルの[クリエイト]なら他にも使える人は居る。
それならもっと多用して、村のために使うべきだったんじゃないか?
私はそう思い始めていた……
ココちゃんはあの状態でも、
自分が出来る事を一生懸命に手伝ってくれた。
それこそ親に見せたことのないスキルを使ってまで…
体を使うのは大事だけど、
その力をみんなのために活かすのも大事なのかもしれない。
スキルを使わず、体一つで作業を続けるという行為は、
恵まれた私がやっていたことは、手抜きの様に思えてきた。
ほとんど心を閉ざしていたココちゃんが、
小さい体を使って自分から手伝い始めた。
あの可愛らしくも儚い子が……
私の考えは、この世界で生きる上で間違えていたのかもしれない。
私は空を見上げ、目をつぶり、決意を伝えた。
(今まで体が健康になり、思い通りに動けるのが楽しくて、
つい体を動かす事を優先にして、
頂いたスキルを使う事があまりなかった。
でも今後は頂いたスキルを活かすために、
どんどん使って階位を上げていこうと思います。
ただ祝福だけは本当に必要な時だけにとどめます。
私のわがままですけど……
それでもこの村のため、ルカとソエルとココのために、
がんばります。
素敵な力を授けてくださって改めて感謝します。
そして素敵な世界に導いてくれた事、
本当にありがとうございました。)
私のスキルに対する考えを改め、
今度はスキルを活かせる場面では、
積極的に使おうと決めた。
その力を授けてくれた三神へと感謝を伝え、家へと戻った。
家に戻ると、サウロさんとマローネさんとカカさんが、
小声でお帰りと言ってくれた。
そして無言で指を指すと、その先に子供たちが座っていた。
ルカとソエルとココちゃんが、三人で暖炉の前に集まっていた。
床には竹とんぼが置かれていた。
ソエル「でね、この羽の部分の角度が難しいの。」
ルカ「そうなんだよ。
まっすぐきれいすぎると逆に飛ばないんだー。
それをね、ソエルが気が付いてね。
ミノリおにいちゃんも驚いてたんだ。」
ココ「そう…角度…」
ルカとソエルの話を聞いて、
感心したように小さくうなずきながら会話をしていた。
ルカ「あ、おかえりおにいちゃん。」
ソエル「おかえり、みのりにい。」
ルカとソエルはおかえりと言ってくれたけど、
ココちゃんはまだ無言だった。
まだ無理なのかな……そう思っていると、
ココ「…おかえり…」
と小さな声だけど、はっきりと言ってくれた。
私はその言葉が嬉しくて、ただ笑顔で、
「ただいま、ココちゃん。」と答えた。
ルカ「ココがね、竹とんぼがほしいんだって。
それでね、今ソエルと一緒に作り方をおしえてたの。」
と笑顔で言ってきた。
ソエルも横で笑顔でうんうんと頷いている。
ココちゃんは少し申し訳なさそうな顔をしていたけど、
私が笑顔で、「そうか。それじゃあ温かくなってきたら、作ろうね。」
と言うと、花が咲いたように、ぱっと笑顔を見せて、
「うん」と言ってくれた。
なぜすぐじゃなく、温かくなってからかというと、
冬はどんなに温かい部屋でも座っていると、
手が冷えてきて、刃物を扱うのが難しいとの事で、
冬の間は子供たちは刃物を使うのを禁止したからだ。
私は子供たちの言葉を聞いて、
温かくなってきたら、また何かを作ってみようかと思った。
「ココちゃんも来てくれたことだし、
また新しい玩具を考えても良いかもしれないね。」
ルカ、ソエル「「新しいおもちゃ!?」」
と弾んだ声が同時に出て、嬉しいという気持ちが伝わってきた。
ココちゃんも目を輝かせていた。
私はその子供たちの様子を見て、
一緒に考えてみようと声をかけた。
「皆、楽しそうだね。
それじゃあ一緒に考えようか。」
ルカ、ソエル「「うん!!」」
ココちゃんも無言でうなずいている。
ルカ「でも、何を作るの?」
と頭を傾けて聞いてくる。
ルカは覚えているかな。
木吊り台を嬉しそうに見つめ、触りたそうにしていたけど、
危ないからと少し我慢させた時のことを…
私はずっと覚えていた。
良い機会なので、その時のイメージを伝えようと思った。
「木吊り台があるよね?ルカとソエルは知っていると思うけど、
ココちゃんは知っているかな?」
とココちゃんに聞いてみる。
ココ「知ってる。滑車で重い物、つり上げる。」
「そうだね。その滑車を無くしてね、
少し高い位置からヒモを垂らしてね、
板をくくりつけて地面から少し浮かせるんだ。
その板にルカやソエル、ココちゃんが座ると、
前後に揺れて少しだけ体が浮くような遊具になるんだよ。」
ルカ「何それ面白そう!」
ソエル「何それ!そんなのあるの!?」
とルカとソエルは嬉しそうに期待のまなざしを向けてくる。
ココちゃんもまた、無言だけど、楽しそう。
という気持ちが良くわかる可愛い笑顔を浮かべていた。
「それでね、最初は私がスキルを使って、
作ろうかと思っているんだ。
ただね、少し高い位置まで動くことになるから、
ちょっと危ないかもしれない。
だから最初は安全面を、
サウロさん、マローネさん、カカさんにも、
一度見てもらって、判断が欲しいですね。
それで大丈夫と判断出来たら、
ルカとソエルとココちゃんには、
その使い心地を確認してほしいんだ。
皆さんどうですか?」
私は子供だけではなく、
サウロさん、マローネさん、カカさんにも、声をかけた。
急に話を振られた保護者側は最初は戸惑っていたけど、
すぐに会話に参加することになった。
サウロ「話を聞く限り面白そうではあるが、
実際見てみないと、何とも言えないな。」
と面白そうだけど、安全面を気にしている雰囲気だ。
マローネ「そうね。
高い位置に子供たちが上がるとなると、少し不安かもしれないわね。」
マローネさんもサウロさんに同意している。
カカ「私は構いません。
ココも期待している様子ですし、
ミノリさんが言う遊具を見てみたいですね。」
カカさんはココちゃんが嬉しそうな様子を見て、
少し嬉しそうにしている。
「ええ、サウロさんやマローネさんが言う様に、
確かに高い位置と言うのは不安になりますね。
でもですね、しっかりとした環境を整え、
管理をしっかりとすれば、
安全に遊べるものだと思います。
実際、私は過去にそれで遊んでいましたので。
危険だと言って無くなった事実もありますけど、
子供は高い所に上ったりする好奇心を持っています。
その好奇心を大人がしっかりとした環境で、
満足させるのも大事だと思います。
たまに居ませんか?家の屋根に上ったりする子供。
危ないと言えば止めるとは思いますけど、
それでもそういう好奇心を満足させてあげるのも、
大人の務めだと思うのですが…」
私は自分の価値観を押し付けてる感じをしつつも、
子供の好奇心を止めるのはほぼ不可能だと理解している。
だからあえて、強気に説得をすることにした。
「どうしても大人の目の届かない場所で、
危険な事をしてしまう場合があります。
それでは本末転倒です。
大人の見える場所、例えば広場。
周りが開いて見守れる場所に設置すれば、
危険も減らせると思うんです。」
サウロ「ああ、確かに居るな。
屋根に上って怒られてる子が…」
マローネ「いたわねー。」
カカ「居ますね。町ではあっちこっちでありました。
それこそ注意をされても止めない子も居ます。」
ルカ「ボクはやってないよ!?」
と慌てた様子で言ったルカが何となく可愛く見えた。
慌てている様子を見ると、
やってみたいとは思ったんだろうな。
ソエルも「私はやった事ないなー。
ココちゃんはどう?」
ココ「高いの、危ない。私はやらない。
でも遊具は興味ある。
家に上るのは危ないからしない。
でも遊具という物ならやってみたい。」
とシエに来て初めてかもしれない。
ココちゃんが長い言葉を話してくれた。
その事を理解したサウロさんとマローネさんは、
その気持ちを感じたのか、「そういう事ならやってみるか。」
と理解をしてくれた。
マローネさんも「そうね、一度見せてほしいわ、ミノリさん。」
と頷いてくれた。
カカさんは最初から賛成の様子だったからか、
笑顔で見つめるだけだった。
その言葉と様子を見た子供たちは、
ルカ、ソエル「「やったー!」」
と大はしゃぎで喜んでいる。
ココちゃんは無言だけど、
嬉しそうに目を輝かせていた。
子供三人の様子を見て、
私は「ブランコ」を作ることを決めた。




