四章 二十二話 ココの勇気
水路までの道筋を引いた後、
村へと戻った私たち……
村の中に入る前に私は、最後の注意を伝えることにした。
トトさんはココちゃんの鍛冶の腕をほめていた。
もしもの事があってはまずいと思ったからだ……
「トトさん。
ココちゃんが何を言っても、
落ち着いて聞いて、その上で貴方が判断してください。」
トト「なんじゃ?ココの言うことを聞けと言うかと思うたが…」
私の言葉が意外だったのか、不思議そうにそう答えた。
「それでは意味がないでしょう?
私が言ったところで本人にその意思がなければ、
言葉なんて無駄なんですから……」
言って伝わるなら苦労はしない。
結局聞く人次第なんだから……
トト「わかったわい……
お前さんを怒らせるわけには、いかんしのう。」
「勘違いしないでください。
私は言いましたよ?
ココちゃんの言葉を聞いて判断してくださいと……
その結果、貴方がどんな答えを出しても、
怒るという事は無いですよ。
ただ残念に思うだけです。」
私はトトさんがココちゃんの鍛冶の技術だけを見て、
ココちゃんを大事にしているとは思っていない。
ココちゃんの為に自らこの村へ来て、
ココちゃんを任せられるのかを自分で見て回ってたんだから…
だからこそ、ココちゃんの言葉を肯定するのではなく、
トトさん本人に、ココちゃんの言葉を聞いたうえで、
判断をしてほしいと思った……
私はトトさんに私の考えを伝えるだけ伝えて、
扉を開いた。
「ただいま帰りました。」
メリイ「ただいま。」
メリイもそう言って中に入った。
トトさんは暫く無言で立っていたけど、
何かを決意したかのように一度小さくうなずき、
家の中へと足を踏み入れた。
テーブルにはみんなが座っていて、
無言で私とメリイとトトさんを見ていた。
私はココちゃんが気になりココちゃんを見ると、
驚いたような顔をしてすぐにうつむいてしまった……
トト「ココ……」
ココを見たトトさんは何かを期待していたのか、
少しがっかりするような顔をしていた…
サウロ「いらっしゃい。トトさん。
さあ、どうぞ、この椅子に座って…」
そう言って、朝にはなかった椅子に座るように、
促していた。
予備の椅子を出して、準備してくれてたんだろう。
トト「うむ…すまんのう……」
少し気落ちしたような顔で椅子に座った。
ソエルとルカの間に座るココちゃんは、
何かを言いたそうにしながらも、声が出せずにいた……
その様子を心配そうに見ていたソエルが声をかけた。
ソエル「大丈夫だよ、ココ。
私たちがついてる。
ココの思っている事をちゃんとトトじいに話すの。」
ルカ「うん。ボク達がついているよ。」
ルカとソエルはココちゃんを見つめながら、
一生懸命に励ましていた。
ココはルカとソエルの言葉を聞いて、
しばらく無言でうつむいていた…
それでも勇気を振り絞って顔を上げて、
トトさんに向き合った。
そして、ゆっくりだけど、しっかりと、
自分の気持ちを伝えた……
ココ「父……
私、武器を作りたくない…
人を傷つける、作るの嫌。
鍛冶の時だけ…
父は私を褒めた。
でも私は嫌……
人を傷つけるもの、作るのは嫌。
クワやオノを作る方が良い。
作るだけじゃない。
他の子と遊びたかった。
空飛ぶもので一緒に…
皆楽しそう。
でも私は違う。
父、褒めてくれるのは鍛冶の時だけ。
遊ぶ話しようとしても聞いてくれない……
父……私は好きな事できない?
遊ぶ話するの駄目?
父、私に望むの鍛冶だけ?」
一生懸命、自分の言葉を伝えようと頑張って…
最後は涙を流しながら、それでも必死に伝えていた。
トトさんは、何も言わずにココちゃんを見つめていた。
すぐに言葉を返すことが出来ないようだった。
ソエル「ココ…」
ココちゃんの手を握ってあげるソエルも、
少し涙目になっている。
ルカは何かをこらえるように、うつむいていた。
カカ「トト…ココは苦しんでいたの。
私たちの期待に応えようとして、
自分のやりたい事を我慢して、今までずっと……
ねえ…もう良いんじゃない?
折角ココが心を開いてくれたの。
好きにさせてあげない?
私はココには笑顔でいてほしい。」
カカさん…涙を浮かべてトトさんに話しかけている。
トトさんは暫く黙っていたけど、
何かを決心したのか顔を上げて、口を開いた。
トト「のう、ココ。
ワシは本気でお前に期待しとった。
でもな、それはワシの希望であって、
お前が無理をする事ではないんじゃ…
すまなんだな、ココ……
ワシはお前に無理を強いとったようじゃな……
お前の気持ちは良く分かった。
これからはココのやりたい事をすればええ。
遊びだろうと、なんだろうとのう。
ワシが期待しとるのは、鍛冶だけじゃないぞ?
お前が元気に大きく育ってくれればそれでいいんじゃ。
すまなかったのう、ココ……」
トトさんはそう言ってココへ頭を下げた。
ココ「私こそ、ごめん。
どうしても嫌だった…」
と、曇った顔で、それでもがんばって話していた。
トトさんは申し訳なさそうに、
「良いんじゃ…
ワシの方こそすまなんだ…
もっと早く気が付いておれば……」
目を閉じながらそう話した。
カカさんはトトさんの言葉を聞いて、
同じように少し暗い顔をしながら、
「トトだけじゃないわ。
私の方が側にいる時間が長かったのに、
気づけなくてごめんね、ココ…」
とトトさんと同じようにココちゃんに謝っていた。
自分の言葉を聞いてくれたトトさんとカカさんを見て、
安心したのか、ココちゃんは涙を浮かべながら
「父、母、私、もう平気。
もっと早く言っておけば良かったと思う…
ありがとう、父、母。」
とトトさんとカカさんに感謝を伝えていた。
カカ「これからはココがやりたい事をやっていこうね。
私もできるだけ一緒に居てあげるからね。」
ココ「母、ありがとう。」
トト「ワシもじゃ。」
ココ「ありがとう、父。」
トトさん一家の様子を見ていたソエルとルカは
安心した様子で、
ソエル「よかったね、ココ。」
ルカ「よかったー。」
と、ソエルとルカは嬉しそうにココに笑顔を見せていた。
そして、今まで沈んだ顔をしていたココも、
初めて私たちの前で笑顔を見せてくれた。
涙を浮かべながら……
本作をお読みいただきありがとうございます。
この話で四章は終わりとなります。
同日12時に外伝を予約投稿しておりますので、
興味のある方は読んでみてください。
読まなくても本編には関係ないと思います。




