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四章 二十一話 ミノリの怒り

ココちゃんが本音を語った後、

ココちゃんとカカさんが落ち着くのを待って、

今日の作業は終わり家で話し合いする事になった。


家に戻り、それぞれが椅子に座り、

ココちゃんの様子を見守り続けていた…

家に戻ってもしばらく沈黙が続いていた。


ソエル「ココちゃん…大丈夫?」

最初に声をかけたのはソエルだった。

ソエルは不安なのか心配そうな顔をして、

静かにココちゃんに話しかけた…


ココ「…うん、大丈夫。

ありがとう……」


カカ「無理することないのよ?

ココ…今まで我慢してたんだから…」


ココ「母。大丈夫。ありがとう。

ソエル…私、ココ。ありがとう…」


ソエル「ココ!私はソエルだよ。

こっちは私の弟のルカ。」


ルカ「ルカだよ。ココちゃん。」


ココ「ココでいい。ルカ…」


ルカ「わかったよ、ココ。

よろしくね。」


「コクン」無言でうなずくココちゃん。


ココ「母…私はもう武器は作りたくない…

人、傷つくもの、嫌。」


真剣な顔をして、自分の気持ちを伝えているココちゃんは、

何か不安そうな、それでも自分を必死で伝えようとする、

気持ちが伝わってきた。


カカ「そう……分かったわ。

私はココを応援する。

ココが好きな事をすれば良い。

今まで我慢させてごめんね……」


ココ「平気。ソエルのお陰……」


ソエル「違うよ。ココが勇気を出したからだよ。」

ルカもその言葉に頷いている。


ココ「うん……

私のやりたい事、父に言う。」


カカ「わかったわ……

今度、話をしておくわね。」


ココ「ダメ、早く言いたい。

私は好きな事をソエルと一緒に探す。

父には早く言いたい。」


カカ「本当に無理はしてない?」

その言葉にココちゃんは無言で頷いた。


カカ「わかったわ…

これからトトを探して呼んでくるわね。」


「それなら私が呼んできますよ。

カカさんはココちゃんの傍にいてあげてください。」


まだ不安そうなカカさんを離すのは良くない。

そう思って、私が呼びに行くことにした。


メリイ「それなら私も行こう。

石工場に居るか、村の外にいるか分からないだろう?

私が村の外を走りながらついでに探してくる。

お前は石工場を見てきてくれ。」


「ありがとう、メリイ。

という事で、私たちが呼んできます。

カカさんはココちゃんをお願いしますね。」


カカ「分かりました。ありがとうございます。」

頭を下げようとするカカさんに声をかける。


「頭を下げる必要はないです。

私がやりたいだけですので。

じゃあ、行こうかメリイ。」


そう言って家をでた私とメリイはその場で分かれて、

メリイはサウロ家にある村の出入り口へ凄い勢いで走って行った。

私は石工場へ向かう為に歩き出した。


冷え込んできているのに、

中央広場の方ではいつもの子供たちの賑やかな声が聞こえてくる。

私はその声に癒されながら石工場へ向かった。


石工場にはロクさんが一人で何やら作業をしていた。


「こんにちはロクさん。」


「おお、ミノリどうした?」

私の呼びかけに手を止めて、顔を向けてくれた。


「トトさんを探してまして…」


「トトなら居ないぞ。

今日は水路の位置を決めるとか言ってたぞ?」


「分かりました。すみません、少し急いでいるので、

私はトトさんを探しに向かいます。」


「ちょっと待て、ミノリ。

お前ため池を作っているんだろう?」


「はい。そうですね。」


「俺たちにも手伝えることがあれば何でも言ってくれ。

お前はこの村の家族だ。

お前が村のために動くなら俺も手伝えることがあれば、

手伝うからな。」


「分かりました。その時は遠慮なく頼らせて頂きます。」


「おお。じゃあ、気をつけてな。」


「ありがとうございます。」

そう言って石工場を後にした。


メリイとすれ違いはまずいと思い、

家に戻って北東の入り口から村の外に出て

トトさんを探そうと思った。

門を出るとすごい速さでこちらに向かってくる影が見えた。

メリイだ……


メリイ「おおい。ミノリ。

トトさん居たぞ。

線を引きながらため池に向かっている最中だった。

しばらくすればため池の方へ着くと思う。」


「そうか、ありがとう。」

私はトトさんと二人で話をしようと思い、

メリイを先に戻して、私はトトさんを待とうと思ったけど、

村の外は危険だと言って、先に戻るのを断った。


「それじゃあ、案内してくれ。

トトさんの作業を見ながら話をしてみようと思う。」

トトさんが線を引き終わるのを待ってから話すと、

カカさん達を待たせるかもと思ったからだ。


メリイ「わかった。じゃあ行こうか。」

そう言って案内してくれた。


十分ほど木々を避けながら平原を歩くとトトさんが、

棒で線を引きながら歩いていた。


「トトさん!」


トト「ミノリ。メリイから話は聞いた。

カカが話があるって?」


「ええまあ…カカさんがと言うより、

ココちゃんがですけどね。」


トト「なに!?ココが話だと?

ココは普通に話せるようになったのか?」


「落ち着いてください。

とりあえず歩きながら話をしましょう。」

そう言ってトトさんと一緒に歩きながら話しをする事にした。


「ココちゃんは今、自分で立ち直ろうとしています。」


トト「どういう意味かの?」

線を引きながら私の話しを聞いてくれる。


「自分で自分の殻を壊そうと頑張っています。

その為にトトさんに先に言っておくことがあります。」


トト「ワシに言っておくこと?」


「ええ。ココちゃんの言葉を、ちゃんと聞いて下さい。

今までの様に貴方が先に話すのではなく、

ココちゃんの言葉を待って、しっかり聞いてあげて下さい。」


トト「どういう意味じゃ?

ワシがココの話を聞いていなかったとでも、

言うつもりかのう?」


「そう言っているつもりです。」


トト「お前……」

線を引いていた足が止まり、

少し威圧する雰囲気を感じる。

私はその威圧で少し足が重くなる気がするのを、

何とか耐えながら話を続ける。


「良いですか、トトさん。

私は頭にきているんです。

子供があんな状況になるまで気が付かず、

放置していた貴方には……」

私はこの世界に来て、

初めて自分の怒りを他人へと向けたかもしれない。


トト「おぬし……」

トトさんのまとう雰囲気がさらに圧を増したのを感じた。


メリイからもただならぬ雰囲気を感じながらも、

それを手で制して話を続ける。


「それでは、お聞きします。

ココちゃんが鍛冶以外をやりたいと言ったことはありますか?

遊びたいと言ったことは?

これを作ったとか、直したと言うのを聞いたことは?

今日はこういう事をして楽しかったと言ったことは?」


その言葉を聞き圧が少し薄れ、言葉が詰まるトト。


トト「そんなもん……」


トトはその言葉を聞いて口が開けなくなった。

自分が鍛冶の事をほめるだけで、

ココ自身からもそれ以外の話を聞いた記憶がないからだ……


「ココちゃんが自分の殻に閉じこもったのは、

貴方たちがココちゃんとちゃんと向き合っていなかったからです。

自分の期待を押し付けて、子供の事を見ていなかったんですよ。」


トト「貴様!」

そういって手を振りかざしたトト。


メリイ「させないよ。」

その瞬間、メリイがトトさんの腕をつかんでいた。


トト「おぬし、離さぬか!」


メリイ「そうはいかない。

事実を突きつけられて癇癪を起すのは流石に黙認出来ない。」


トト「癇癪じゃと!?」


「メリイ。落ち着いて。

トトさんも本気じゃないよ。

そうじゃなきゃ私が普通にトトさんの圧に耐えられるわけない。」


メリイ「それはそうだが…」


「大丈夫。ありがとう、メリイ。」


私がそう言うと手を放すメリイ。

トトさんは少し落ち着いたのか私の無言で

にらみつけるだけだった。


「安心しました。

ココちゃんを本気で心配していたんですね。

だからこそ許せなかった。

トトさん。

今回のココちゃんの異変は、

親と子によくあるすれ違いだと思っています。」


トト「すれ違いじゃと?」


「そうです。ただのすれ違い。

それが原因でココちゃんは殻に閉じこもったんですよ。」


トト「そんなもんであんな風になるとでもいうのか?

ありえんじゃろう!

すれ違いなんぞ、どこの家でもありえるじゃろうが!

それがなぜ、ココにだけ起こった?」


「ココちゃんだけじゃないですよ。

私の居た世界ではよくある事だったんです。

子供が親の期待に応えようとして、心に傷を負うのは…

酷いとその傷が、取り返しのつかない事になった事例もあります。」


トト「なんじゃと!?」


「原因が分からないものを説明できないのは、

どこの世界でも同じだと思います。

ただ私が居た世界が。人の多さと事例の多さ、

そして長い時間の流れの中で、

その研究が進んで理解を深めていった。

ただそれだけです。

貴方が知らないのは仕方がないと思います。

でも…それでも、貴方がしっかりと、ココちゃんを見て、

話を聞いていれば、防げたかもしれない事だったんです。」


私は自分が言っている事が正しいのか分からない…

それでもトトさんを説得するためにあえて、

断定をして話を押し通す……


ミノリの言葉を聞いたトトは言葉を返せなかった。

トトはその言葉を聞いて毒気が抜けたのか暫く棒立ちになっていた。

ミノリはその様子を見ながら、話を続ける。


「ココちゃんは貴方が言う様に本当に優秀だったんでしょう。

だからこそ、そのすれ違いは大きくなったんです。

親の期待が大きいほど、その期待に応えられない時や、

自分では望んでいないことを期待され、

やりたくない事を続けるのは、

子供にとって大きな負担になるんです。」


トト「ココが望んでいない事じゃと?

ワシがそれを望んだというのか?」


「その通りです。

この事は私が説明するのは違うと思うので、

貴方がココちゃんから直接聞いて下さい。

ただし、しっかり向き合って下さい。

貴方の聞き方次第では、私は本気で貴方の敵になります。」


トトはミノリを睨みつけたまま黙っていた。

しかしミノリがココの事を真剣に考え、

それこそ自分よりココを理解し、

何とかしようとしている気持ちを感じ取っていた。


トト「……分かった…‥

お前の言うとおりにしよう…。

手を挙げてすまなんだ。

お前はココの事を思って言うてくれてたのに。」


「構いませんよ。

むしろ安心しました。

怒るほどココちゃんを思っていたのでしょう?

まだ納得できない所はあるとは思いますけど、

ココちゃんと話をすれば、きっとわかると思います。

ココちゃんが何を思っていたのか……」


トト「わかった…では急いで戻ろうかの…」

そういって線を引き始めた。


ミノリとメリイも後に続いた……

本作をお読みいただき、ありがとうございます。

同日12時に同じ話のトト視点を投稿します。


トトがどう思っていたか等を描いたつもりです。


外伝は読まなくても物語の流れに支障はないので、

ご安心下さい。


より深く読みたい方には、楽しんでほしいと思っています。

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