四章 二十話 子供達
ため池の予定場所に着いた私たちは、
カカさんとココちゃんが見守る中、
ルカとソエルは楽しそうに土を集めて台車に積んでいた。
サウロさんとマローネさんは少し離れた場所で
土をまとめて山にしていた。
私は段差の角の部分を、[クリエイト]スキルで圧縮し、
滑らかな傾斜にしていった。
三十分ほど経っただろうか……。
私が作業を続けていると、ルカとソエルがココちゃんに話しかけていた。
ルカ「寒くない?大丈夫?」
ソエル「寒かったら無理しなくても良いからね。
お外に出るのは気持ちいいけど、
寒いのはつらいからね。
そうだ!私の帽子貸してあげる。」
そう言って自分の帽子をココちゃんに被せてあげる。
ルカ「うわあ、可愛い。」
ソエル「うん!すっごく可愛い。
ねーねー、ミノリにい。ココちゃん見て!
すっごく可愛いよ!」
その言葉でココちゃんに視線を向けると、
ソエルのミミ帽子をかぶったココちゃんが
うつむきながらも帽子をいじっていた。
「本当だ。似合っているねココちゃん。
これはココちゃんの帽子も作らなきゃいけないな。」
そういうと不思議そうに私の顔を見て、
そしてまたうつむいた。
(ちゃんと反応してくれている。)
私は少し安心して、そのまま作業を続けた。
ミミ帽子をかぶったココちゃんを見て、
カカさんも「可愛い帽子ね。今度ココの帽子も手に入れようね。」
と話しかけていた。
ココは「……別に……」と表情を変えずに答えていた。
その様子を見たカカさんは少し寂しそうに、
ただ無言でココちゃんを見つめていた…
ソエル「大丈夫だよ!私たちの帽子はミノリにいが作ってくれた。
ココちゃんのも、ミノリにいが作るって言ってたし。
そうでしょ?ミノリにい!」
私は手を止め、「もちろん。ココちゃんが良いならね。」
ソエル「ココちゃん、良いでしょ?
私たちと同じ帽子かぶろうよ。」
ココ「……うん……」
と小声だけど確かにそう言った声を聞いたルカとソエルは、
嬉しそうに「「やったー!」」と一緒に飛び跳ねて喜んでいた。
子供たちはしばらく会話をしたあと、
ルカとソエルがまた作業に戻った。
それを見ていたココちゃんは、
ため池の穴の中に降りてきた。
その様子を黙って見守っていた私とカカさんは、
ココちゃんが角の部分を圧縮し始めたことに驚いた。
カカ「え……ココ?」
「圧縮……」
私はその様子を見てカカさんの元へ行き話しかけた。
「カカさん、ココちゃんのスキルは土魔法なのですか?
鍛冶スキルではなかったのでしょうか?」
カカ「私も初めて見ました。
いつもはトトの言うとおりに鉄だけを叩いていましたし、
土をいじることなどなかったので……
いえ…話は聞いたかもしれません。
病気になる前に農具が壊れていたものが
いつの間にか直っていたことがありました。
でも鍛冶スキルを持っているココが、
木材の修理や圧縮が出来るなんて…」
カカは思い出すように話してくれた。
私は疑問に思って尋ねた。
「ふつうはスキルを二つ持つことはないのですか?」
(私は複数持っているけど、ココちゃんも同じだとしたら…
木材の修理に、今の圧縮……。
もしかして、私と同じ[クリエイト]なのか?)
そう思って聞いてみた。
カカ「少ないですけど、居るにはいます。
ただ私の子供は皆、鍛冶スキルを持っていて、
姉は鍛冶を止めて料理の道へ行きましたけど、
ココも同じ鍛冶スキルを授かったものだとばっかり…」
私たちが話し込んでいたら、
ココちゃんが不安そうに私たちの方を見つめていた。
私は不安にさせてしまったココちゃんが気になって
声をかけることにした。
「ココちゃん。不安にさせちゃってごめんね。
どうしても言いたくなければ言わなくても良いんだけど、
少し質問しても良いかな?」
私はココちゃんの前に膝をつき目線を合わせて聞いてみた。
ココは無言のまま、小さくうなずいた。
「ありがとう。
ココちゃんは鍛冶スキルの他にも、
スキルを持っているの?」
ココ「……持ってる……」
小さい声だけど、確かに持っていると言ってくれた。
「そうか。ココちゃんは凄いんだね。」
純粋にそう思って笑顔でそう言った。
ココ「…すごくない。鍛冶には不要……」
そう淡々と答えたココちゃんは、
何か寂しそうに見えた…
ソエル「えー!そんなことないよ。
すごいよココちゃん。
二つも持ってるなんて。」
ルカ「すごーい。ココちゃん凄いんだね。」
いつの間にか私たちの会話を聞いていたソエルとルカが、
純粋に驚いたようにココちゃんに話しかけていた。
ココ「すごくない!」
急に大声になるココちゃん。
その剣幕に驚いたルカとソエルは黙り込んでしまった。
暫く沈黙が場を支配していたけど、
ソエルが声をかける。
ソエル「そんな事ないよ。
ココちゃんがそう言っても凄いんだから、
ココちゃんが否定しても私は凄いと言い続けるよ?
だって本当だもん。ねールカ。」
ルカ「うん、そうだよ。
ボクなんて獣人なのに身体強化とか持ってないし、
木こりのスキルが欲しいけどまだなんだー。
それなのにココちゃんは二個も持ってる。
それは凄い事なんだよ?」
ソエル「そうだよ。」
とルカとソエルは必死に凄いんだという事を、
伝えようとしていた。
メリイ「私も凄いと思うぞ。」
サウロ「俺もだ。」
マローネ「私も凄い事だと思うわよ。」
三人の言葉に、ココは戸惑ったように皆を見回した。
カカ「どうして黙っていたの、ココ?」
ココ「……父が求めているのは……鍛冶だけ…。
私……人を傷つける……作りたくない……。
でも……求められた……武具を作る……
私には……それ以外…必要ない……
母も……喜んだ……武器……だけ……」
カカ「そんな事無いわ!
ココが作るものに良いも悪いもないわよ!
ココ、なんでそんなふうに思うの?」
ココ「父…褒める……鍛冶の事だけ……」
カカ「そんな……」
カカはその言葉でとうとう我慢出来なかったのか
涙を流してしまった。
ココ「母……泣かないで……私……鍛冶……頑張る……」
私はその光景を黙ってみる事しか出来なかった。
私の想像が最悪の形で当たっていた。
ただのすれ違い……そう思っていた。
けれど、これはもう「すれ違い」なんて言葉だけでは片付けられない。
その溝は、あまりにも大きくなっていた。
ソエルは少し何かを考えて、暫くココを見た後、声をかけた。
ソエル「そんなふうに思ってたんだね……
でも、それは違うよココ。」
そう言いながらココに近づいていくソエル。
ソエル「ココ……私もね、ココと同じような感じだったんだ。
親の言う通りに木工ばかりして、怒られてばかりだった。
でもね、親に捨てられて……森で一人になったの。
そのときメリイねえが助けてくれた。
ミノリにいが優しくしてくれて、
マローネねえがおいしいご飯を作ってくれて、
サウロおじさんが笑ってくれて……ルカが手を握ってくれた。
それでね、みんなと一緒に物を作ってたら、気づいたの。
作るって、楽しいんだって。
誰かが喜んでくれるのって、すごく嬉しいんだよ。」
ココ「……ソエルも、そうだった?
私……作ってもいいの?
武器以外……私の手、悪くないの?」
ソエル「悪くないよ。むしろすごいよ。
ココの手は、誰かを喜ばせる手だよ。」
ルカ「そうだよ!
ココが嫌な物を作ることない。
もしそれでトトさんが怒るなら、
ボクとソエルでトトさんをしかるよ!」
ソエル「カカさんもそうでしょ?」
ソエルに急に話しを振られて驚いていたカカは
目元を拭いココへと向き直り声をかけた。
カカ「そうね。その時は私も一緒にトトを叱るわ。
ココが作りたい物に何か言うようなら、
私がトトを怒るわ。」
ココ「私……もう……人を傷つけるの……
作りたくない……」
小さな声だった。
それでも、ココが母親に初めて自分の気持ちを伝えたのだった。
ココ「うわああああああ……」
涙を流しながら大きな声で泣きながら、
カカさんに抱き着いていた。
カカさんも涙を流して「ごめんね…」と声をかけながら、
ココを抱きしめていた。
ココはクリエイトが鍛冶には必要ないと言っていますが、
正確には鍛冶にも使えるスキルです。
ただココの中で、鍛冶をする際に使うスキルは鍛冶スキル
という父親を見てきたため、固定的な思考を持っています。
その為必要がないものと認識しています。




